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子どもを尊重する! 不登校を食い止める初期対応の秘訣とは?

教師をしていて、多くの先生が悩むのが、不登校の子への対応だと思います。私が小学校の教師をしていた時も、毎年のように、クラスに一人は不登校の児童がいました。

実感として、一度不登校になると、学校に来るようになるのは、なかなか難しいと感じています。しかし、不登校になり始めの頃であれば、比較的再び学校に来られるように支援がしやすいです。

今日は、実際に私が不登校をし始めた児童に対して、どのような対応をして再び学校に来られるようになったのかという実体験を紹介したいと思います。


不登校の理由

数年前に小学校3年生の担任になりました。
新年度でクラス替えがあり、1週間程経ったある日、私が担任をしている女子のAが学校を休みました。理由は、体調不良ということでしたが、数日たっても登校する様子がありませんでした。

そこで、Aの母親に連絡したところ、学校に行きたくないとのことでした。理由としては、クラス替えで仲のいい友達と別々のクラスになってしまったからというものでした。新年度の不安に加え、親友との別れが加わり、学校に行くことに対して抵抗感が出てきたのでしょう。

最近の調査では、不登校の原因の多くを教師が占めていると言われていますが、実際にはいろいろな要因が重なっていると私は考えています。このAも友人との別れが原因と述べていますが、実際のところは、いろいろな不安などがあるのだと思います。

保護者への対応

では、学校へ来なくなったAにどのように対応したかということをお話していきます。

まずは、Aは学校に来ていないので、Aの母親と話をしました。Aの状況や保護者の考えを聞きました。そして、私の学校に来るかどうかということに対する考えも正直にお話しました。

その考えというのは、「選択はAがすべき」というものです。

私は、現在の学校を窮屈に感じる子も多いと思いますので、無理して嫌な学校に行く必要はないと思っています。もし、本当は学校に期待という思いがあるのであれば、来られるような手だてを教師は積極的にすべきだと思います。

しかし、今はあえて公立の学校に通わず、自宅で学習をしたり、自分に合う学校で学ぶというのもありだと思っています。したがって、保護者や教師が無理に嫌がる学校に通わせる必要はないのではないかと思っています。

そんなようなことを、Aの母親に伝えました。すると、Aの母親は肩の力が抜けたようでした。

子どもへの対応

私が意識したのは、Aが安心してこられるような環境づくりです。というのは、無理にAに登校させたとしても、不安感が払拭されないと意味がないと考えたからです。今回は、仲のよい友だちがまだいないということが原因となっていたので、とにかく居場所を作るようにしました。

居場所とは、物理的なものと、心理的なもののどちらもです。
まず、物理的な居場所として、Aはピアノが好きだったので、教室にキーボードを持ち込んで自由に遊べるようにしました。また、ピアノが好きな他の児童にさりげなくAの話題を振り、Aが来た際に関わるきっかけを作っておきました。

Aの保護者を通じて、午前中だけA登校するように促しまたところ、翌日久々にAが学校に来ました。休み時間にAにピアノを弾いてもらったり、他の児童をまきこんだりしながら、自然と関われるような雰囲気を作っていきました。

学校に来てみると、意外とAは楽しそうにしていましたが、午前中の授業が終わると、Aを下校させました。おそらく、そのまま午後もいることも可能ですが、午前中だけと約束をしたら、午前中になったら、必ず帰さないと、教師や大人への信頼を失ってしまいます。

短距離走と同じで、頑張って走れるのは、ゴールがどこかが分かっているからです。一度ゴールしたと思ったら、大丈夫そうだからと再びゴールを伸ばされたら、誰でも嫌になってしまうでしょう。

不登校の子が学校に来た際も、必ずゴールを守るというのが鉄則です。

その後

その後、Aはピアノを通して友だちができたようで、毎日学校に登校するようになりました。最終的には、ピアノを教室においておく必要もなくなり、音楽室に片づけてしまいましたが、3年生の終わりまで、不登校になることはありませんでした。

何がよかったのか

不登校に対する対応として、一人ひとり違うので、こうすればいい、というような正解はないと思いますが、今回の事例では、何がよかったのかを考えてみたいと思います。

①教師と保護者の心構えの共通認識

初めに、教師と保護者で、どのように対応していくのかということを話し合ったことが大きかったと思います。不登校は、教師の責任でも保護者の責任でもありません。

よくクラスから不登校が出たら、自分の責任だと必要以上に落ち込む教師や、逆に保護者を責める教師がいますが、こういった関係だと、事態は悪くなる一方です。

不登校、つまり学校に行くか行かないかは、最終的にはその子の問題です。この「問題」というのは、本人が悪い、という意味ではなく、最終決定は、本人が決められるという権利であり、それによって起こった結果は、本人が受け止める必要があるということです。

こういった、認識を教師、保護者、児童の三者が共通してもつことで、本人が幸せに生きていくためには、どうすべきかという視点で物事を考えられるようになります。

②環境づくり

二つ目は、環境づくりをしたことだと思います。私は、犬を飼っていますが、犬に無理やり水を飲ませようとしても絶対に飲みません。できることは、のどが渇いた時にいつでも飲めるように、水飲み場を設置しておくことです。

人間と犬を一緒にするわけではありませんが、自分以外の他の人に対して何かを無理強いすることはできないと考えているといろいろなことがうまくいくと思います。人間は、話すことができるので、無理やりいう通りにすることは一時的にはできますが、長くは続かないし、無理強いされれば反発心は出てくるものです。

特に、大人は子どもに対して、その子のためだからと、つい大人がこれをさせるべきだという通りにさせようとする傾向が強くなります。

不登校の場合も、子どもに無理やり学校に来させるのではなく、来たいと思ってもらえるような学級の雰囲気づくりであったり、授業づくりをするのが結局は一番いいのではないかと思っています。

まとめ

今回は、不登校の初期対応で、うまくいった事例を紹介しました。
不登校に対する考え方には、いろいろありますので、「絶対に学校に行くべきだ」と考えている方もいると思います。
それを全て、否定するつもりはありませんが、その姿勢が逆効果になっている場合もあると思います。
今回の私の考えや対応が、今不登校で悩まれている先生方や保護者の方の参考になれば幸いです。

AIを使った、授業づくりや、先生の仕事術に関する本も出版してますので、興味がある方は、ぜひご覧ください。



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