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映画館の幸福:デッド・ドント・ダイ/ジム・ジャームッシュ
6/1から約2ヶ月ぶりに多くの映画館が営業を再開した。席はひとつ空けて、チケットもぎりは自分で、入場時には体温を測られ、上映中はマスクをする。色々と今までと違うルールが付け加えられているが、これが今の我々が映画館に行くための最低条件なのである。
ということで、最後に映画館へ行ったのは3月頭の「架空OL日記」以来。実に3ヶ月ぶりの映画館です。すぐそこにあるものと思ってたものが不意に無くなり、その儚さを思い知ってから行く映画館は、幸せ以外の何者でもなかった。
デッド・ドント・ダイ
ジム・ジャームッシュ監督
公開が延期されていたジム・ジャームッシュ最新作、早速始まったので見に行きました。
舞台はアメリカの田舎町。ジム・ジャームッシュが撮る、ゾンビ映画です。
感想
めちゃくちゃ楽しかった…これに尽きる。
今回の作品、「え、ジム・ジャームッシュがゾンビ映画やんの?アダムドライバーとビルマーレーが出るの?なにあのテンションでゾンビ映画やんの?最高じゃん・・」てみんな思ったと思うんですが、それでした。
今回はゾンビ映画、例えば前回の「パターソン」なんかと比べれば非日常だし、ちょっとぶっ飛んでる設定。そんな飛躍があってこそなのか、かなりコメディ要素が強かった。なんか妙に落ち着いているアダム・ドライバーも、それを見てイライラするビル・マーレーも、顔は無表情だけど本当に楽しそう。小ネタがたくさん散りばめられていて終始笑える。
もちろんテンションはずっとオフビート、チル?って感じで。
ゾンビたちは生前の仕事や趣味を覚えていてそこに固執する。例えば現場工事してた人たちは工具屋へ行って工具を求め、子供たちはおもちゃ、お菓子などを求めて雑貨屋へ。スポーツをやってた人はグラウンドへ、若者がこぞってWi-FiやBluetoothを求めて彷徨ってるのは笑える、というか苦笑い。
一方で、欲望のままに彷徨うゾンビたち、このままでは世界は終わってしまうぞ、という消費社会を斬るようなジム・ジャームッシュとしては珍しい直接的なメッセージもあったりする。
ちょっとメタ的になりますが、あらゆる面でこんなにオフビートでチルな映画を、でかいスクリーンで見ることの奇妙さ、可笑しさそのものがとても贅沢で幸福を感じざるを得なかった。それはこの3ヶ月でうっかり忘れそうになってた幸福だ。
配信をテレビ画面で観るのも一つの映画の体験だが、やはり映画はスクリーンで見るために作られていて、わざわざ足を運んでチケットを買って知らないたちとこんなに笑える映画を見る時間を共有する、それはあまりにも奇妙で文化的、人間的な行為だと気付かされる。
ジム・ジャームッシュ、ジャンル映画のときとても生き生きしてますよね、なんだかすごく楽しそうだし、自分の趣味や好み、そしてメッセージ性が如実に現れている。「オンリーラバーズレフトアライブ」もヴァンパイアものだったけど、あれもかなりガツンとこちらに訴えてくるものがあった。ちなみにあの映画では欲にまみれて文化や芸術などを全く見ようとしない面白味のない人間を「ゾンビ」と呼んでた。今回とさほど意味に変わりない。
久々に映画館へ行くという時に、この映画は本当にちょうど良いと思います。(filmarksの評価が結構悪くてびっくりしましたが)
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