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在宅翻訳だけで生きるとどうなるか

 筆者は社会人を2年もやらないうちにリタイアし、それからはずっと家に引きこもり中国語の翻訳だけで生きています。こんな生活を初めてもう7年以上になります。

 そもそも、誰でもこんな生活ができるわけではありません。人の輪の中にいると喜びを感じる、社会で自分の価値を創出し認められたい、という人にはまったく向いていません。誰からも注目されず、自分勝手に生きていても寂しくないという人の方が向いているでしょう。

 本題に入ります。まずは極端な体力の衰えです。都会で働くならば早足で道路を歩き、階段を登ることが多いと思いますが、これだけでもけっこうな運動量になります。在宅翻訳は外に出る必要がないので、通勤・退勤という貴重な運動の機会もありません。ですからある程度のスタイルを維持したければ、自発的に外を走るなりジムに通うなりし、汗を流さなければなりません。

 次に、人の顔と名前を覚えるという、当たり前の能力を失います。一般的な社会人であれば、これを「能力」とは思わないでしょう。在宅翻訳=社会からのセミリタイアであり、長く続けるとこの能力が失われていきます。必要ないのですから。

 それから、他人からの干渉を嫌う人間になっていきます。在宅翻訳は究極の個人プレーです。誰からも邪魔されることなく自分の作業に没頭することで、最も効率よくお金を稼ぎます。作業中は、周りに対して寛容になれません。愛する家族であっても邪魔に感じるようになります。

 他人の目を気にしなくていいので、服装がだらしなくなったり、社会人としてのマナーを忘れたりもするでしょう。しっかりした、いかにもまともな人のフリをするのが苦手になり、面倒になります。

 もちろんいいこともたくさんあります。職場への移動時間、職場での無駄な時間などがなくなり、自分の生活を自分で律することができます。パンツ一丁でお菓子を食べながら、好きな音楽をセットし作業しても、誰からも怒られません。自分の好きなやり方で集中し、仕事をさっさと片付け、後は趣味の時間を楽しめます。社会で生きるストレスもなく、心が落ち着きます。

 食費はかなり抑えられます。筆者の場合は、昼食は200円前後の冷凍食品とお茶漬けを食べるスタイルです。冷凍食品ではなく100円のカップ焼きそばにすれば、ワンコインで済みます。人付き合いがないので晩酌は家飲みで安上がりです。

 私にはこの生活が向いているようなので、AIに職を奪われるまで続けるつもりです。ちなみに、個人的にはAIが翻訳家の職を奪う可能性は低いと思います。それよりも新聞記事なり報告書なり、AIが最初から日本語・英語・中国語などで書くようになり、翻訳の必要がなくなると考えています。

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