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古典臨書のさんぽ道〜大人の手紙編〜

書の道は人それぞれ。
人それぞれにおすすめの古典臨書作品をご紹介するシリーズです。

今回は、「大人の手紙」がテーマです。

唐突ながら、私はかわいい文字が書けません。
丸っこくて、やわらかで、見るからにかわいい文字が、書けない。
「書は人なり」です😅

かわいいお手紙が書きたい方は、
やはり現代のかわいい方の文字を真似するのがいい、と思います。

私がご紹介するのは、スラスラと縦書きに書かれた、
ちょっと古風な日本人女性らしいお手紙を書きたい!
という方におすすめの練習方法となります。

行書と“かな”を基本に

小筆でお手紙を書けることを目標に古典臨書する場合、
必須なのは、行書と”かな”。

楷書というのは公式文書を書く書体なので、
賞状などを書く場合には必要ですが、
日常のお手紙、お香典袋などは、
行書の方が書きやすく、趣もあるものです。

また、日本語の文章の7割はひらがなと言われますが、
お手紙を書く場合にはひらがなが必須。
小学校の「ひらがな」と平安の「かな」は字の形がだいぶ違うので、
少しでも古典で“かな”を学ぶと、
グンと大人っぽい文字が書けるようになります。

行書と“かな”を中心に学び、
ところどころに連綿体(つなげ文字)の入った、
洒落たお手紙が書けるようになるととても楽しいものです。

行書:王羲之 蘭亭序

何度も登場しますが、行書の基本といえば「蘭亭序」。

筆先のよく見える「神龍半印本」の原寸手本を左に置いて、
”いつか原寸大で真似できるように”と思いながら、
小筆に慣れていくといいと思います。

筆の流れ、書き順がわからない場合は、
大判の手本を大筆で書いてみるのもよいと思います。

とは言え、小筆と大筆は全く違うもの。
お手紙を目標とする方は、
どんどん小筆を使って慣れるのがよいと思います。

「習うより慣れろ」。とにかく書きまくることです😊
(小筆は持ち方も大切。いつか解説しましょうね。)

かな:高野切第三種

さて、蘭亭で行書の筆遣いが“何となく”わかったら、
“かな”にチャレンジしてみましょう。

“かな”にもいろいろな手本がありますが、
現代のひらがなの形に近く、はっきりと書かれている、
「高野切第三種」が、初心者にはまずおすすめ。

ところがところが、
平安作品(平安のみならず江戸までの作品は皆そうですが)、
書き出してみると、読めない“かな”が混じっている!!
これが、数多の“かなlearner”をして
「かなは難しいから嫌い」と言わしめてしまう、
言わば「諸悪の根源」である「変体仮名」というものです。

ゆっくりと学べる方は、高校書道の教科書などを入手して、
「高野切」に入る前に、
「いろは歌」と「変体仮名」のページを練習してみるとよいです。

ざっくりと学びたい方は、「高野切」のどこかのページを決めて、
わからない文字は調べながら、反復練習をしてみましょう。
わからないながらに、筆の動きを追って言えば、
徐々に書けるようになります。

とにかく、「習うより慣れろ」です。
(“かな”はある程度の「習う」かもしれません。
助けの必要な方は書塾でいつでもご相談に乗ります😊)

行草書:空海 風信帖

さぁ、行書と“かな”をとりあえず一通り描く練習ができたら、
ぜひ、「風信帖」を書いてみましょう!

何と言っても、「風信帖」そのものが「大人のお手紙」✨
日本史上、最も有名な二人の僧、
空海から最澄に向けて書かれたお手紙が「風信帖」だからです。

「風信帖」は主に行書ですが、ところどころに「草書」が混じり、
連綿体(つなげ文字)も混ざり、墨の濃淡があり、
サラサラ〜〜っと書かれた感じが伝わってくる。

紙の最後の方になると、細ーく筆先で書かれているところがあったりして、
「ああ、文字を書くスペースがなくなった時は、
こうやって、文字を小さくして無理矢理入れちゃえばいいんだな」
ということがわかったりする。

空海からお手紙の書き方を学ぶような感じです。

誰かと文通してみよう

行書と“かな”の基本がわかったら、実際にお手紙を書いてみるのが一番です!
古典の文字は所詮、昔の日本語なので、
古典臨書だけでは、現代のお手紙を書く技術は習得できません。

おすすめの方法No.1は、誰かと文通すること。
書塾では、通信指導で私と文通をしている生徒さんが何人かいらっしゃいます。
宛名書きから反復練習できるので、とてもよい方法です。

文通がむずかしい方は、日記を小筆や筆ペンで書いてみるのがおすすめです。
頭に浮かんだ言葉をそのまま縦書きで書いてみる。
やってみると、「この漢字はどうやってくずせばいいのかな?」といった、
素朴かつ大切な疑問が浮かんでくるので、
書道事典などで調べながら書くうちに、何となく書けるようになります。

自分の文字で、気楽に書こう

美しい文字でなければ、筆で手紙を書いてはいけないなんてことはありません。
試しに、明治の文豪のお手紙とかをみてみると良いと思います。
お世辞にも美しいとは言えないお手紙がたくさんあります😊

大切なのは、書き慣れること。
自分らしい字を知ること。

私も、かわいい文字や教科書的な美しい文字を書くことは諦めました。
私は、私の文字で、書いていきたいと思っています。

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