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書道を独学する人におすすめの本たち

「書道を学びたい」という人へ。「書道は独りで学ぶことができる」と私は思っています。

もちろん、誰か教えてくれる人がそばにいた方が「早い」かもしれない。でも、「ゆっくり」「自分で」学ぶからこそ、気づけることもたくさんあります。

「古典臨書」なら正しい「型」を学べる

「独学」で怖いのは、誤った「型」を身につけることです。これは手本を選び間違えた時、もしくは手本なしに好き勝手に書き続けた時に起こり得ます。

書道には、「古典臨書」という方法があります。過去に生きた人の残した数多ある書作品の中で、特にたくさんの人が「手本とするに良い」と考えてきた古典作品を手本として、ひたすら真似るという練習方法です。

きちんと「古典臨書」をするとき、正しく、美しい手本に、誠実に、謙虚に教わるとき、人は正しい「型」を身につけることができます。大切なのは、自分の目を信じて、徹底的に「観察」することです。

独学の頼りになるテキスト・辞書

では、独学するのにおすすめの本をいくつか紹介します。どれも私が日々、書道を学ぶのにとても役立っている本ばかりです。

1、高校教科書「書道1」

高校では、書道は芸術科目の一つとして、音楽、美術の仲間に入っています。そして、高校の教科書「書道1」「書道2」「書道3」は、「古典臨書」を練習の基本に据え、自由な創作への道筋も見渡すことができる、書道の初学者にとって大変すぐれたテキストになっています。

何よりありがたいのは、豊富なカラー写真。と、にも拘らずの、ありがたい価格。正直なところ、これだけのカラー写真手本が入ってこの価格は、一般の出版社の本では実現し得ません。教科書だから、のありがたさ。

楷書、行書、草書、隷書、篆書、かな、漢字かな交じり。その全ての基本的な筆遣いを図解でわかりやすく書き示してくれています。「書道1」の1冊だけでも、真剣に取り組めば5年は学べる充実した内容です。

私の書道教室では光村図書の教科書を使っていますが、最近、高校の生徒さんが学校からもらったという教育図書の教科書がとてもシンプルなデザインで、文字の歴史もわかりやすくとても心惹かれました。他の出版社でも良いと思いますので、ぜひ各社のWEBサイトを見てみてください。

教科書はAmazonなどでは買えないのが難点ではあります。お近くの教科書販売センターに問い合わせてみてください。1冊から購入可能だと思います。

2、字体辞典と筆順辞典

「古典臨書」の独学において、壁にぶち当たりやすいのが「書き順」です。「この字、どう書いてんの?」という必ず発生する疑問です。

そんなとき、自分なりの答えに導いてくれるのが、字体辞典と筆順辞典です。「自分なり」と書いたのは、その古典作品が書かれた時のことは誰にもわからないので、完璧な正解は誰にもわからないということです。

字体辞典 二玄社「新書源」/角川書店「書道字典」
字体辞典とは、一つの漢字がこれまでにどう書かれてきたのか、過去の用例を示してくれる辞典です。手本の画像では判別がつかない筆順も、これを見て他の用例を参照することで理解できることが多いです。漢字五体が示されているので、自分で作品を創作する時の文字選びにも使うことができます。
おすすめは書道専門出版社である二玄社の「新書源」なのですが、こちらが最近手に入りにくくなっているようです。角川書店の「書道字典」も充実しています。

筆順辞典 三省堂「楷行草筆順・字体字典」
筆順がわからない時に大変重宝するのがこちらの辞典です。学校での筆順と、「古典臨書」における筆順を併記してくれているところが、本当にありがたい!江守賢治先生の手書きの文字が美しく、この辞書を完成してくださったことに心から感謝しています。

3、二玄社「中国法書選」「日本名筆選」・天来書院「テキストシリーズ」

高校教科書でいくつかの古典作品を書いてみて、気に入った作品があったら、全臨(作品の全ての文字を臨書する)に挑んでみましょう。その時に必要なのが、作品の全ての文字が載っている各テキストです。

二玄社「中国法書選」「日本名筆選」
「古典臨書」ならこれ、というくらいの定番テキスト。オールカラーで文字が鮮明なのが特徴です。「曹全碑」「蘭亭序」などから、明代、清代など新しいものまで豊富。「日本名筆選」には、かな学習に必須の「高野切」、三色紙など揃っています。

天来書院「テキストシリーズ」
初心者におすすめなのがこちらのシリーズ。文字の骨書き(線で書き方を示したもの)が付いていて、辞書を引かなくてもある程度学習が可能です。

他者に学び、自分と向き合う

書道は、書くことを通して他者に学び、自分と向き合う鍛錬です。ひたすら書いた先に出会える世界があります。

平安時代、人びとはわずかな書物を丁寧に何度も書き写し、それぞれの書の道を極めました。私たちも、自分で「ひたすら書く」ことを通して、書を学ぶことができるはずです。

最後に、二玄社、天来書院はじめ書道の専門書店、字体字典などを作ってきてくださった書き手、編集者の皆様のこれまでのご尽力に心から感謝いたします。本があって、学ぶことができます。どうか書道を学ぶ人が増え、日本に書道を学ぶための本が残っていきますように。





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