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「ばいばい」

次に会う約束を交わして、優しく抱きしめた後に言った彼女の「ばいばい」はとても近くて、柔らかな温もりが耳を包んだ。

あれから僕たちは何度も会った。

物凄い速さで親密になって、知らない間にピークを迎えていて、なだらかに僕たちの関係は冷めていった。

最後の日、お互い言葉にしなくともそれが最後だと分かり合った上でキスを交わした。

そんなところで分かり合えても仕方がないのに。

帰り際、強く抱きしめながら彼女が言った「ばいばい」はとても遠くて、固まった冷たさが耳を通り抜けた。


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