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How to マジカル広告 ~ヒラメキはロジックの上に~

根岸です。旅とサッカーでできている生き物です。

いつもは、旅やサッカーから学んで仕事に活きていることや、働き方や組織の作り方で実験していることを書いています。よかったらそちらもご覧ください。↓

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今回はめずらしく少しマジメな話をしてみます。広告づくりです。

広告のキャッチコピーって、「アイデア」「発想」「ヒラメキ」でつくってると何故か思われることがあるのですが、ほとんどそんなことはありません。もちろんそういう要素はゼロではないのですが5%程度。95%はロジカルに組み立てています。じゃ、どうやってるのさ? そんなお話です。過去自分でつくった広告を用いて説明してみます。

あくまで僕のやり方です。正解というわけではありません。いろんなやり方があり、そのどれもいいのです。ただ、ただの思い付きで広告をつくっているんじゃない、というのは共通かなぁと思います。眞木準さん以外。(うそ、眞木準さんのダジャレはオシャレだから、思い付きじゃないと思う)

まずは説明に使う事例をご紹介

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中堅都市にある会社の人材募集広告です。旅行サイトを運営しているだけあって、旅行好きが集まっている会社でした。業績好調につき、エンジニアを募集しました。

1. だれに:ペルソナの罠

とにもかくにもまず最初に考えるのはターゲットです。ターゲットがぼんやりしていると全てが破綻するので、「ペルソナを設定しよう」なんて言われます。僕もそうします。ただ、「ペルソナ設定 = ターゲット設定」で思考を終えると、それもまた破綻します。広告ではなく狭告になってしまうからです。ひいては、あとあと、「もっと広くていいんだけど…」「こういう要素も入れたいんだけど…」となりがち。広告に限らず商品開発等も同じですが、引き算がいいのに、足し算をし始める。熟考しているふうで、不のスパイラルのはじまりはじまり。

だからこそ、ペルソナを設定したあとに、必ず一度思考したほうがいいのが、最大公約数化です。ターゲット設定の思考ステップ順に書いてみます。

STEP1.ターゲットのMust&Better要件を書き出す
STEP2.イメージをつかむためにペルソナを書き出す
STEP3.Mustではない要件を排除する(最大公約数化する)
STEP4.要件を満たしているか確認する

例えば、今回の広告を例にすると・・・

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特に、3をご覧ください。線を引いている部分は、ペルソナ設定では要素に入っていますが、Must要件ではありません。

新横浜に通勤できればいいだけで横浜に住んでいる必要はないですし、20代は21歳も29歳も含まれます。プログラミング経験が必要だけど、新卒でWeb制作会社に入ったことは条件ではありません。旅行好きは必須ですが、誰が海外と決めつけた?学生時代からと決めつけた?

ペルソナ設定は、ともすると、不要な条件を勝手に付与してしまいます。具体的にしているから「ちゃんとターゲット設定したぜ!」と、なんとなくその気になりがちですが、自己満足。広告主にとっても、その先のターゲットにとっても、ただ単に機会を狭めています。

POINT!
・広告は狭告じゃない。無駄なセグメントは排除しよう
・ペルソナ設定で思考をとめず、最大公約数化しよう

2. なにを:ベネフィットはユニークで

ターゲットを適切にセグメントしたら、次はベネフィットです。良いところ探しが始まります。「あれもこれも盛り込むな!」とは定説ですし、実際そうだと思いますが、盲点をなくすために、まずは洗い出してみるプロセスは大切です。

その上で、その「良いところ」は相対的にどうかを見極めます。この際のポイントは、ターゲット視点ということです。たとえば、週休2日と聞くと「フツーじゃん」って思いますが、ターゲットが現在、月6日休みの仕事だったらどうでしょうか? 良し悪しは一般相場で決めるのではなく、あくまでターゲットにとって、です。

さらに最後に、その要素は、ユニークな価値があるか?を見極めます。同じターゲットに対して週休3日の企業が同時期に募集を出していたら勝てません。

STEP1.良いところを洗い出す
STEP2.ターゲット視点で、相対的に良いか判断する
STEP3.ユニークで最も価値があるものを、一点突破で

今回の事例だと以下ですね。会社員で長期旅行がしやすいというのはとてもユニークです。(最近は増えていると思いますが、この広告は2000年代前半のものです)

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なお、ユニークで価値がある要素が複数あった場合、「あれも入れたい。これも入れたい」となりがちですが、そこは死守です。ただ、ひとつしか言いません!という意味ではなく、一点訴求する、ということ。

広告主:あれも入れたい。これも入れたい。
作り手:いやダメです。
これは、どっちも間違いだから滑稽ですw  何が滑稽かって、この時点でターゲットを置き去りにしているから。広告はつまるところ、ターゲットのものです。

POINT!
・良いところを洗い出そう
・良いところを、ターゲット視点で見極めよう
・ユニークな要素か見極めて、一点訴求しよう

3. どのように:飛ばす→着地させる&寝かせる

だれに、なにを、が定まって初めて「どのように」です。ついつい表現から入りがちになることがありますがご法度。出戻りのはじまりです。出戻ればまだいいのですが、そのまま進むと成果に繋がらないし、1万歩譲って成果が出たとしても再現性は絶対にありません。来月の最初の日曜日は晴れる!と予測して当たったのと同じで、正真正銘の偶然です。

で、「どのように」について、僕がやる思考ステップが以下です。

STEP1.かっこよくないコンセプトワードをつくる
STEP2.飛ばす
STEP3.着地させる(&寝かせる)

STEP1のポイントは「かっこよくない」です。あまりにキャッチーなフレーズに最初からすると、ズレたり、意味不明だったりします。作り手ではなくターゲットにとってね。なので、今回の事例でいうと、「長期旅行がしやすい会社」です。超フツーに書いただけです。

そのコンセプトワードを中心に書き出して、以下のように「飛ばす」作業をします。ここからは少し発想のフェーズに入りますね。

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で、発想やアイデアを出していくと、ときどきとんでもないワードが浮かびます。アイデアってそういうものだから仕方ないのですが、一番怖いのが「あっ、閃いた!!!!」です。これまで一生懸命頭をひねってきたので、たどり着いた感、発見した感が生まれます。人間だもの。

でも、少し冷静になりましょう。ターゲットはそんなに一生懸命考えて広告を見ません。そもそも、見てもらえないのが広告。さらにいうと、ヒラメキが本当に事実なのか?というのもあります。

だからこそ次にやるのが「着地させる」です。

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”飛ばして” たどり着いたワードの途中経過を黒塗りにします。要は「たどり着いたワードで、コンセプトワードを表現できているか」を見極めるためです。

上記例でいうと・・・
◆「休んでも上司に怒られない」はそうかもしれませんが、長期旅行がしやすいことを示していません。
◆「サボり放題!」は長期旅行がしやすいことを示していませんし、たぶんウソですw(そんな会社あったら大人気だね)
◆「気持ちいい!!!!!」は、超が付けば北島康介です。

飛ばしていて、コンセプトワードを示しているのは「ときどき、旅に行ける!」です。

・・・とここまでがロジカルに思考し、体系的に進めてきたプロセスです。ここまでで95%を費やしています。やっと、やっと、マジック5%のフェーズに入ります。やっとですし、最後のほんの少しだけです。

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残り5%のマジックフェーズにきたら、はじめて、少し、言葉遊びをします。類語を探したり、トンマナを変えたり、いたずらしてみたり、手垢のついた表現を避けたり。最後の最後でやっと、キャッチーにしてみるんです。

そしてたどり着いたのが「たびたび、たび。

このあと、時間があれば一晩寝かせることもあります。一生懸命考えてきたので、できた!という感覚があるから危ないかもしれない。一晩寝た後にみてもよかったら完成です。ふ~

POINT!
・コンセプトワードはカッコ悪く。キャッチーにしない
・飛ばして、着地させて、できたら寝かせる

そして出来上がったのが以下。改めて。
(このnoteの一番最後に、もうひとつ。同じ思考でつくった広告を。よかったら考えてみて~)

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おまけ:ロジカルに合理的で、新しい発想のマジックを。これからの時代の経営スタイルなら

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