【黒の夢の正体?】語られなかったパラレルワールド設定|クロノトリガー考察
クロノトリガーの物語はタイムパラドックスを主題としていて、それに並行して発生するはずのパラレルワールドについては触れない、シンプルで分かりやすいストーリー構成をしています。
でも作中で触れなかっただけで、裏にはちゃんと存在していたと思うんです。というわけで、今回はクロノトリガーに隠されたパラレルワールド設定をテーマに語ります。
タイムパラドックスとは?
まず前提知識として必要なので、簡単に触れておきましょう。
タイムパラドックスについては、ゲーム中でも序盤に解説された『中世リーネ王妃の誘拐事件~マール消失』の一連の流れがチュートリアルとなっています。
現代ガルディア国の王女であるマールですが、歴史に介入してしまったことをキッカケに齟齬が発生。先祖であるリーネ王妃に命の危機が迫ります。
リーネ王妃が過去で殺されてしまえば、子孫のマールが生まれる事実がなくなってしまうので、間接的にマールの存在も消えてしまう。
これがタイムパラドックスによる影響です。
パラレルワールドとの関係性
次にパラレルワールドですが、これはタイムパラドックスによって生じる矛盾を解消するために生まれた理論だとされています。
同イベントではクロノの目の前でマールの存在は消えてしまったわけですが、もしも世界が1本軸しかなかった場合、中世で消滅したマールのことを現代のクロノが覚えているのはおかしくないですか?
少なくともリーネ王妃を救出するまでの期間、この中世から続く未来はリーネ王妃が殺され、マールも生まれなくなる現代へ続くはずです。世界がひとつしかなく上書きされていくものだとすれば、そもそもマールをキッカケに中世のやってきたクロノが、この場に立っていること自体に矛盾が生まれてしまいます。
だけど作中のクロノやルッカは、マールのことをしっかり覚えていました。この理屈を説明するのがパラレルワールドです。
図で表すとこうなります↓
つまりマールがゲートを通って中世にきた時点で世界が二つに分岐しているんです。
主人公クロノは世界Aで消えたマールを追って、分岐した世界Bへやってきたので、歴史が改変されてもマールのことを覚えていたということ。
パラレル要素カットの理由
ただし、このパラレル要素が毎回絡んでくると話がややこしくなります。
DS版アルティマニアにあるシナリオを担当した加藤正人氏のインタビューによれば、クロノトリガーが小学校高学年を対象に分かりやすいストーリーにまとめたとのこと。
もとからタイムトラベルものが好きだったという加藤氏が、これらの要素を知らなかったはずはありませんが、タイムパラドックスに加えてパラレルワールドの設定まで加えると、物語がとてつもなく難解になってしまうでしょう。
そこでクロノトリガーにおいては、パラレル要素に作中で触れないという大胆な方針が決められたのだと思います。
実際このシンプルな設定のおかげで、クロノトリガーは非常に万人受けする名作になりました。
一方続編のクロノクロスでは前作の反動からか、このパラレルワールドを前面に押し出した結果、アルティマニアが無いと全容が理解できないほど難解なストーリーになってしまい、ガルディア滅亡など前作を否定する分かりやすいマイナス部分が目についてしまったことで酷評されています。
ちゃんと物語を理解できれば面白いし、自分はクロスも大好きなんですけどね。
それでもパラレルは存在する
とはいえ作中で触れられていないだけでクロノトリガーも、しっかりパラレルしていると思います。
実際これほどの歴史改変をすれば、いろいろなところに歪みが生じて本来クロノ達が住んでいた現代にも想定外の変化が起こってもおかしくないと思いますが、クロノ達の歴史介入は変えたいと思った事象に対して思ったとおりピンポイントな改変が起こせています。
これはゲートホルダーやシルバードが、元の世界に限りなく近くて都合のいい改変を起こせた世界(パラレルワールド)の時空座標を見つけてくれているのかも。
作中でプレイヤーが観測できるのは、都合よく改変された一つの世界だけなので1本の歴史が上書きされているように感じる。だけど実際は、並行世界を選んで移動しているだけだったのかもしれません。
歴史改変のツケ
とはいえ、やりたい放題のツケはやっぱり溜まっていたようです。クロノ達は本来の歴史では存在しなかった存在を出現させてしまいました。
それこそがストーリー終盤で登場するラストダンジョン『黒の夢』
自分が思うに、『黒の夢』はストーリーに落とし込むには難解すぎた内容の、つじつま合わせの代償を精算するものとして表現されたんじゃないかなと思っています。
現代のジナ母さんが、昔からある当たり前のモノのように言ってるシーンは不気味でしたよね。
だけど、自分たちはそれが異質なものであることを知っている。
歴史改変の罪深さを思い知らされるイベントだと思いました。
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