エモーショナル・フィットネスのすすめ、nickwignall.comのThe Case for Emotional Fitnessの翻訳


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この記事の著者であるNick Wignallは臨床心理士、ライター、講師、ポッドキャスター。ダラスにあるテキサス南西メディカルセンター大学で臨床心理の博士課程、シカゴ大の社会科学で修士号取得、ダラス大の英文学で学士号を取得。American Board of Professional Psychology(ABPP、アメリカ専門心理士認定機関)の認定を受けている。the Academy of Cognitive Therapy(認知療法・行動認知療法家国際認定組織)の認定取得。Association for Behavioral and Cognitive Therapies(アメリカ行動療法認知療法学会)とニューメキシコ心理学会の会員。

北カリフォルニア出身、現在は妻と3人の娘とジャーマンシェパードと一緒にアルバカーキで暮らしている。
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エモーショナル・フィットネスのすすめ

あなたは、嫌な気分を振り払えずに苦労することがよくある?ストレスの多い、もしくは、苛立たしい経験から、もう少し早く、立ち直れれば、と願っている?

もしかすると、あなたは、恥や不安といった難しい感情によって、自分の目標や誓いを遵守することが難しい時がある?

もしそうなら、それはあなただけじゃない。

我々のほとんどが、自分の感情に苦しんでいる、なぜなら、我々は、感情とその仕組みについて、あまり多くのことを教わっていない。

その代わりに、我々のほとんどが、幼少期より、難しい感情について考えることは、避けるべき、もしくは、難しい感情は可能な限り速やかに除去すべき、だと学んだ。

考えてみてほしい、

子供のあなたは、「元気出して、そんなに悪くないよ(it's not so bad、大丈夫だよ)」と言われるたび、あなたは、暗喩的に、悲しみや心配や怒りを感じることは、良くないことだと学んでいた。

残念なことに、このような幼い時期に、嫌な気持ち(気分の悪さ)を「感じる」ことは良くないことだ、と学んだ場合、我々は、自分の気分と感情との、生涯に渡る対立と混沌の準備を整えてしまう。

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感情忌避の危険

嫌な気持ちを感じることは、良くないことだ、と信じている場合、あなたは、自分が経験したすべてのつらい感情から逃げる、もしくは、つらい感情を除去しようとする習慣に陥る。

そして、この忌避するという対処法は、一時的な安堵の提供になり、短期的には「うまく行く」、だが、長期的には、酷い結果となりうる。

まず、我々が自分のつらい感情から逃れるために用いる「コーピング・ストラテジー(対処法)」の多くが、相当に酷い副作用を持っている、

 ・ストレス軽減のための過食は、体重の増加と恥に結び付く可能性がある

 ・失敗の恐怖を避けるための怠慢は、仕事の出来を悪くする可能性がある

 ・アルコールや麻薬で悲痛さを麻痺させることは、人間関係の破綻や不健康(など)に結び付く可能性がある

だが、これらの酷い副作用でさえ、副作用の中で最悪のものではない…、

つらい感情から逃げることの本当の危険とは、それがあなたの脳に刷り込むレッスン(教訓)にある。

難しい感情を根絶しようとしたり、難しい感情から逃げようとする時、あなたは、自分の脳に、それらを危険なものと見做すように刷り込んでいる。

例えば、

 ・もし、あなたが、常に、不安から逃げている場合、あなたは、自分の脳に、不安でいることを恐れるように、訓練している

 ・もし、あなたが、常に、自分の悲しみを除去しようとしている場合、あなたは、自分の脳に、悲しみを敵と見做すように、訓練している

 ・もし、あなたが、喪失の悲しみを感じた時、常に、自分の気を逸らそうとしていると、あなたは自分の脳に、将来起こりうる悲痛さを「警戒」するように、自分の脳を訓練している。

自分の脳に、自分の感情を恐れるように刷り込むことの問題は、最終的に、感情の苦しみが悪化してしまうことにある:

 ・悲しみを感じた時に、自分自身に腹を立てることは、長期的には、その悲しみをより激しいものにする

 ・怒りを感じた自分を自己批判することは、その怒りを長引かせることになるだけ

 ・不安になることを心配することは、あなたをより不安にさせるだけ

嫌な気分になることを嫌がると、あなたは自分の体験に、もう一枚、ネガティブさのレイヤー(層)を重ねることになる。

そしてこれが、予想よりも、自分の感情が大きかったり、長く持続するように見えることがよくある理由である。

自問してほしい:自分の「嫌な」感情から、人生を通して、逃げ続けたり、取り除こうとすることが、自分の脳に刷り込んできたのは何か?

簡潔な答え:あなたは、自分の脳に、それ自身と戦争状態でいるように訓練している、つらい感情の生じる可能性に合わせて、警戒し防御と反論ができるように。

つらい気持ちから逃げることは、この上なく自然なことのように見えるが、あなたの精神保健にとっては、これ以上に破滅的なことはない。

自分の感情との敵対的な関係、これこそが、つらい感情を管理することを難しくしている原因である。

さて、ここまでで、あなたは、少し挫けそうかもしれない。解決策を提示させてもらおう。

自分の難しい感情を避ける代わりに、あなたは、それらと共に生きる方法を学ぶことができるとしたらどうだろうか?

あなたが、体験した感情がどんなものであれ、(もしくは、どんなに激しいものであれ)、あなたがそれに直面し、受容し、そして自分の人生を続けることができるだけのスキルと自信を持っていたとしたら、どうだろうか?

すごいと思わない?

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自分の感情と、より良い関係を築く

心理士として、また療法家として、私は、毎日、自分のクライアントが、自分の感情生活(emotional lives)のコントロールを握れるように手助けしている。

だが、自分の最も難しい気分と感情をうまく管理するための驚くべき秘訣とは、

自分の感情をマスターする(扱いに習熟する)には、あなたは、感情と共に生きることを望まなければならない

これが意味するのは、

 ・もうこれ以上、自分の感情から逃げること、もしくは、自分の感情と戦うことをやめる

 ・もうこれ以上、不安や悲しみといった難しい感情を「修正」しようとするのをやめる

 ・もうこれ以上、不快な感情を、「悪い」、「ネガティブ」、「無理・耐えられない」と、そしったり、悪口を言ったりしない

つらい感情と、戦い、そして、逃げることは、それらの感情を激化させる原因そのものである。あなたは、その逆を行く必要がある、自分の感情を受容し、理解し、共に生きることを望む必要がある。

もちろん、これは、言うは易し、行うは難し、である。

もし、難しい感情が本当に危険なものではないことを、単に「理解」することが、あなたがすべき唯一のことであったなら、この記事を読むだけですべてを変えられただろう。

事実として、単なる理解だけでは、何かしらの変化を起こすにも不十分である、

 ・マラソンの走り方を知ることは、あなたをマラソンランナーにしない

 ・音楽理論を理解することは、あなたをミュージシャンにしない

 ・ダイエットの仕組みを理解することは、あなたを減量させない

理解は必須である、だが、継続的な変化には全く不十分である。

そしてこれは、あなたとあなたの感情との関係にも当てはまる。

自分の難しい気分と感情を真にマスターするには、あなたは実践と訓練を積み、自分の感情に対し、根本的に新しい姿勢と関係を育む必要がある。

言うなれば、エモーショナル・インテリジェンス(感情知能、心の知能指数)では、不十分。あなたに必要なのは、エモーショナル・フィットネス(感情の健康・鍛錬)。

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エモーショナル・フィットネスに関して

もし、あなたが、自分の感情と、より健康的な関係を築こうとしているなら、自分の難しい感情と気分から逃げるのではなく、正面から対峙するために必要な強さと自信をあなたに与えてくれる、新しい習慣と精神の筋肉が必要である。

そして、どのような新しいスキルを学ぶ場合でもそうだが、従うべきプログラム(最適な、もしくは効率的なやり方で実践をするためのガイドラインと推奨事項を纏めたもの)を持つことは、有用だ。

私はこのプロセスを「エモーショナル・フィットネス」と呼んでいる。

より強く、より健康的な肉体を作るために、運動とフィジカル・フィットネス(身体的健康・鍛錬)が必要なように、精神的なタフネス(強靭さ)と感情のレジリエンス(回復力)を作るためには、より良い精神の習慣が必要である。

「エモーショナル・フィットネス」とは、あなたの精神と感情の健康を強くする継続性のある習慣とエクササイズ(鍛錬)を、誓う(コミットする)こと。

これは簡単ではない、だが、恩恵は大きい:

 ・より良い人間関係。パートナーとの口論の後で、短気に負けたり、サイレント・トリートメント(無視)をするのではなく、自信をもって、自分の苛立ちと動揺に耐え、敬意をもって、意見の相違を解消できたなら?あなたが他人の難しい感情と気分に対し、自己防衛的な反応をする代わりに、耐えることを学ぶことができたなら?

 ・より良い仕事。怠けたい衝動を感じた時、それから逃げるのではなく、乗り切れたなら?(チープな気晴らしと自己批判に、ぬた打つ(浸る)のではなく、仕事に戻れたなら?)

 ・より良い気分。難しい気分を、何時間、もしくは何日も、ずっとさ迷うことなく、すぐに、気分を切り替えることができたなら?つらい感情からすぐに逃げ出して、やけ食いやアルコールのような不健康なコーピング・ストラテジー(対処法)に耽溺するのではなく、自分のつらい感情を興味とバランスをもって観察できたなら?

 ・より良いセルフ・トーク(独り言)。我々は皆、失敗したり、盛大にやらかすこともある。だが、自分の失敗に対し、セルフ・ジャッジメント(自己判断、*自分で自分を裁く、断罪する?)する代わりに、セルフ・コンパッション(自分自身への思いやり)と優しさをもって反応できたなら?厳しい状況に置かれた時、自分自身を不必要に不公平に責める代わりに、親友に話しかけるように、自分自身に対しても話しかけられたなら?

 ・より良い健康。新たに始めたダイエットで、失敗して数日間暴飲してしまった後で、あらゆるセルフ・サボタージュ(自己破壊)や敗北主義的思考を回避して、静かに立ち上がって、ダイエットに戻れたなら?やる気のあるなしに関わらず、毎朝、ジムへ行けたなら?

言うなれば、

自分の感情と戦うのではなく、協力することを学べたなら?

その時、あなたの人生はどんな感じだろうか?

 ・想像してほしい、効率的に自分の反論(言い分、自己擁護)を管理する方法を学んだ場合、あなたの人間関係はどのように改善するだろう…

 ・想像してほしい、セルフ・ジャッジメント(自己判断)と内なる批判家によって、いつも自分を(人前で)批判することがなくなれば、あなたの気分はどれだけ改善するだろう…

 ・想像してほしい、慢性的な怠慢と散漫・気晴らしと戦っていなければ、あなたはどれだけ、より生産的になれるだろうか…

想像してほしい、自分自身と戦争をしていなければ、あなたの人生はどんな感じだろうか。


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