朝鮮語のラテン文字表記 「Han cuc o」 Ver. α

はじめに

現在朝鮮語のラテン文字表記には、韓国では文化観光部2000式(2000式/RR式)、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)ではマッキューン=ライシャワー式(MR式)がある。(正確には共和国で使用されているMR式は変種であるが。)
しかしながら、2000式は語頭平音子音を有声子音で表記するし(例: 부산→Busan)、基本母音字に二重母音が含まれている(例: ㅓ→eo、ㅡ→eu)ため、綴りが少し長くなる。
MR式はダイアクリティカルマークを使用するため、入力環境が限られる(例: 조선→Josŏn)など、双方ともにデメリットがある。
特に、ブレーヴェの使用言語自体が少なく、わざわざ辞書登録をして無理やり変換して入力するか、コピペしてくるという方法を取る他ないことが大きな壁を作ってしまっている。(ルーマニア語ではブレーヴェが使われるが、OとUにブレーヴェ付きの文字が存在しない。)
(そもそもなんでブレーヴェ使おうと思ったんだ。アクサンシルコンフレックスとかにしとけばよかったのに。しかもMR式では母音が連続した場合にウムラウトを使ったりもするため、到底やってられない。)

それぞれの表記比較

注: 2000式→MR式(共和国での変種) の順に表記する。
대한민국→Daehanminguk, Taehanmin'guk(Taehanmin-guk)
조선민주주의인민공화국→Joseon minjujuui inmin gonghwaguk, Chosŏn minjujuŭi inmin konghwaguk(Josŏn minjujuŭi inmin konghwaguk)
금강산→Geumgangsan, Kŭmgangsan
부산→Busan, Pusan
김포→Gimpo, Kimp’o(Kimpho)
맞춤법→Matchumbeop, Match'umpŏp(Matchumpŏp)


まとめると、

  1. 子音の有声・無声を区別せずに表記してしまう

  2. 変換をしなければ入力できない・専用の入力方式のない文字を使用している

  3. 基本母音字に二重母音が使用されている

この問題を解決するには、

  1. 子音・母音ともに使用する文字が多い(ダイアクリティカルマークや加画で拡張されているとなお良い)

  2. 1言語のキーボードですべて入力可能にする

1・2をともに満たす体系がないかとサークルで話した結果、タイ文字やデーヴァナーガリーなどが候補に挙がったが、ラテン文字表記の点ではベトナム語の「クオック・グー」を使用するのはどうか、という案が出た。

Han cuc o (Ver.α)

このラテン文字表記を「Han cuc o」と名付ける。(この表記での「한국어」にあたる。)

子音
ㅂ: p ㅍ: ph ㅃ: b
ㄷ: t ㅌ: th ㄸ: đ
ㅅ: s   ㅆ: x
ㅈ: tr ㅊ: ch ㅉ: d
ㄱ: c ㅋ: kh ㄲ: g
ㅁ: m
ㄴ: n
ㄹ: l
ㅇ: ø/ng
ㅎ: h
二重パッチムはそのまま表記する。
例: ㄳ→cs ㄺ→lc ㄶ→nh etc.

母音
ㅏ: a ㅑ: ia
ㅓ: o ㅕ: io
ㅗ: ô ㅛ: iô
ㅜ: u ㅠ: iu
ㅡ: ư 
ㅣ: i
ㅐ: eㅒ: ie
ㅔ: ê ㅖ: iê
これ以外の合成母音はそのまま組み合わせる。
例: ㅘ→ôa, ㅢ→ưi, ㅞ→uê etc.

これらのラテン文字表記は、ベトナム語キーボードで過不足なく入力できる。

2000式・MR式(+共和国での変種)との比較

注: 2000式→MR式(共和国での変種)→Han cuc o の順に表記する。
대한민국→Daehanminguk, Taehanmin'guk(Taehanmin-guk), Te han min cuc
조선민주주의인민공화국→Joseon minjujuui inmin gonghwaguk, Chosŏn minjujuŭi inmin konghwaguk(Josŏn minjujuŭi inmin konghwaguk), Trô son min tru tru ưi in min công hôa cuc
금강산→Geumgangsan, Kŭmgangsan, Cưm cang san
부산→Busan, Pusan, Pu san
김포→Gimpo, Kimp’o(Kimpho), Cim pho
맞춤법→Matchumbeop, Match'umpŏp(Matchumpŏp), Matr chum pop

メリット

  • ハングルとローマ字転写が一対一で対応する。

  • 子音結合による綴りの変化がない。

  • 母音を独自に最低限に絞っているため覚える母音字が少ない。

MR式における子音結合による綴りの変化(Wikipediaより)

注意点

-sや-xなどはベトナム語TELEX入力において、声調記号を表す役割を果たしているため、そのまま入力すると綴りによっては声調記号に変化してしまう。(例えば、"os"と入力すると、-sは鋭く上がる声調符号の "◌́" を表すため、"ó"になってしまう。)
入力している途中で声調記号に変化してしまった場合は、"-ss", "-xx"のように2つ重ねて入力すると現れてくれる。

例) 없다→ops ta (入力: opss ta)

課題点

  • 分かち書きが音節ごとであるため、どこからどこまでが1単語かがわかりにくい。→ハイフンを入れる or 朝鮮語原文表記と同じ分かち書きをし、子音が連続する場合の読み方の表を作成する。(以下のページのように)

cf. 韓国語のローマ字表記法 ʻAdkuwkaw についてhttps://note.com/j9a/n/nc9f3037f128e#A99A793B-1B7A-441D-8635-F4FC4DAB6459

cf. 韓国語をローマ字表記するための新しい方法『ʻEdkŭka』https://note.com/j9a/n/n994d1097c79f

  • 一部の環境で"iô"が"ioo"の入力で出すことができない。→母音関係の綴りを変える必要性があるかもしれない。

2022/12/09 追記

Ver. αにおける課題点解決のため、一部の子音・母音の綴りの変更を行ったVer. βの記事を執筆中です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?