『前進する社会主義』解説
注意: この記事は編集時間の調整のために複製されたものです。
2016年10月10日付の『労働新聞』にて発表された歌『前進する社会主義(전진하는 사회주의)』を紹介する。
作詞はチャ・ホグン(차호근)、作編曲はアン・ジョンホ(안정호)。
この曲は『攻撃戦だ』に次いで日本での知名度が高いだろう。
「コンギョ以外で知ってる曲は?」と聞くと大体この曲か『我らはあなたしか知らない(우리는 당신밖에 모른다)』と返答されると思う。
この曲が『攻撃戦だ』程ではないがそれなりの知名度がある理由は恐らく、人気ゲーム実況者グループ「〇〇の主役は我々だ」が投稿した「【北朝鮮音楽】みんなで選ぶ北朝鮮プロパガンダ音楽ベスト5!【NK-POP】」の影響が無いとは言えないだろう。
動画内でこの曲はランキング第2位にノミネートされている。
発表されるまでの背景
この曲が発表される1ヶ月ほど前、8月29日~9月2日にかけて台風10号による大洪水が咸鏡北道地域、及び付近の羅先特別市を襲った。9月11日発の朝鮮中央通信によれば、"朝鮮で解放後、気象観測以来初めての豪雨"だったそうだ。
この未曾有の大水害に対し朝鮮労働党中央委員会は、2016年5月6日~9日の「朝鮮労働党第7次大会」、及び同月26日~28日に開かれた「朝鮮労働党第7次大会の課題貫徹のための党、国家、経済、武力機関幹部連席会議」で宣言した「国家経済発展5カ年戦略遂行の突破口を開いていくための衷情の200日戦闘(국가경제발전 5개년전략수행의 돌파구를 열어나가기 위한 충정의 200일전투)」の主要目標を水害被害復旧作業に転換させるという異例の決断を下したほどである。(これにより、2016年内完成を目指して進めていた「黎明通り」(平壌)の建設やその他200日戦闘の主要作業場の主力部隊が水害復旧部門へ急派された。)
また、同委員会は9月10日に「すべての党員と人民軍将兵、人民に送るアピール(전체 당원들과 인민군장병들, 인민들에게 보내는 호소문)」を発表。200日戦闘の主要目標の転換を伝え、"一心団結の巨大な威力で咸北道北部被害復旧戦線で禍を転じて福となす奇跡的勝利を収めよう!(일심단결의 거대한 위력으로 함북도 북부피해복구전선에서 전화위복의 기적적승리를 쟁취하자!)"というスローガンを合わせて発表した。
参考: 朝鮮労働党第7次大会から「200日戦闘」主要目標変更までの流れ
5/6~9 朝鮮労働党第7次大会。2016~2020年までの「国家経済発展5カ年戦略以下、5カ年戦略)」発表
5/26~28 朝鮮労働党第7次大会の課題貫徹のための党、国家、経済、武力機関幹部連席会議。5カ年戦略の具体的な内容・対策を決定。「国家経済発展5カ年戦略遂行の突破口を開いていくための衷情の200日戦闘(以下、200日戦闘)」発表。
5/30 金正恩委員長、200日戦闘への進入を宣言。
6/1 共和国各紙が社説を発表。
6/10 朝鮮労働党出版社によってポスターが創作される。
8月末~9月初 北部地域の水害。
9/10 朝鮮労働党中央委員会 「200日戦闘」の主要目標を水害被害復旧に変更。
同日 「すべての党員と人民軍将兵、人民に送るアピール」発表。
大水害、それによる主要目標の変更などといった背景が影響を与えたか定かではないが、「火の手の中で鋼鉄が鍛錬されるように 試練の中で我らはもっと強くなる」、「一つの心で固まって越えられない山岳はなく 一つの意思となって打ち勝てなかった狂風はない」、サビには「我らは立ち止まらない 我らは恐れることを知らない」等の、「災害にも負けず、これを契機により強くなる」、まさに"転禍為福(전화위복: 禍を転じて福となす)"を示唆するような歌詞が盛り込まれている。
また、2番と3番の間奏では普天堡電子楽団の楽曲『社会主義を守ろう(사회주의 지키세)』の旋律が引用されている。
意味もなくただ引用されている というわけではないだろう。
これはあくまでも私見だが、5カ年戦略、それもその初年度に戦略の中身である「200日戦闘」の目標変更は人民に戦略貫徹への不安や懸念を抱かせる原因に十分なり得ただろう。"社会主義を守り"、そして"前進していく"。そういう意味でこの曲の旋律を引用したのではないだろうか。
歌詞
火の手の中で鋼鉄が鍛錬されるように 試練の中で我らはもっと強くなる
不敗の党に従って万難を打ち勝ってきた 誇りに満ちた行路の上に信心は百倍に
※我らは立ち止まらない 我らは恐れることを知らない
我らは暴風を吹かせて進む 社会主義 勝利の道へ一つの心で固まって越えられない山岳はなく 一つの意思となって打ち勝てなかった狂風はない
いつも党を信じて奇跡を轟かせてきた 一心の隊伍の中で信念も百倍に
※くりかえし主体の党旗掲げながら進む我ら 社会主義の強国を打ち立てん
嚮導の党が広げた燦爛たる未来に 世代を継いで真っ直ぐ行かん
※くりかえし
以下、朝鮮の今日(조선의 오늘)の「歌解説(노래해설)」から引用する。
後記
모속 という言葉の訳し方に迷った。わが民族同士(uriminzokkiri)にある「朝鮮語大辞典(조선말대사전)で調べたところ次のような結果だった。
では、この「털묶음」の意味は何だろう。
모속と同じく、朝鮮語大辞典の結果を引用する。
日本語の「毛玉」に近いニュアンスだろうか。ただ、後続する「진행(進行)」という言葉の前で使われていることを加味すると、単に「かたまり」「まとまり」的な意味であると推測して、「まとまって進行してくれながら」と訳した。
追記: 本文出典元のサイトは、どうも古い記事から少しずつ削除されてしまうらしいので、Wayback Machineを使ってアーカイブした。原文を確認したい人は下のリンクからどうぞ。
https://web.archive.org/web/20221024215643/https://dprktoday.com/news/35067
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