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【みんなのねがい2022年8月号特集番外編②】平和について悩み、考え、学びたい ~後編

『みんなのねがい』8月号特集「平和をつくる~暮らしと憲法」
クロストーク「平和について悩み、考え、学びたい」(22~23ページ)
誌面には載りきらなかった番外編を2回にわたって公開します!
この記事はパート②です【パート①はこちらから】(まとめ・みんなのねがい編集部)

入澤佳菜さん(低学年担任)と池田翼さん(特別支援学級担任)

考え、行動する子どもたち

――平和学習を通して、子どもたちはどのような姿になっていくのでしょうか?
入澤:子どもでも平和について行動できるのです。子どもたちは、学んだら行動したくなります。学んだことは自分を変えていくことにつながります。
 ある子は、全校の子どもたちの前で「自分が嫌な人と決めつけないことが平和だと思う」と語ったのですが、この言葉がとても子どもたちに響いたようでした。
 子どもたちは、平和という言葉を口にはしますが、実際の生活の中では、「うざい」、「死ね」、「あいつうざいから話したくない」など、暴言を口にします。自分にとって嫌な人はいるけど、その人たちも自分にとって大切な人に変わっていくというその子の言葉は、もがいている時期の子どもたちに響いた言葉だったのだと思います。違いや個性について考えることにつながりました。
 また、卒業のときに平和宣言をつくり、自分たちの思いを一つの文章にした子どもたちもいます。「世界の子どもの平和像」の取組を劇にしたり、当時の学校長に「僕たちと一緒に修学旅行に行った思い出を歌にしてください」とお願いしたりした学年の子どもたちもいます。そうして完成した『ぼくらのへいわ』という歌を歌って卒業していきました。
 さらに、あるときは、ある子が「僕たちも世界の子どもの平和像をつくろう」と言い出し、突然、学級会で話し合いが始まったこともありました。お金をどうするか、どのようなデザインがいいかなど、子どもたちなりに懸命に話し合っていました。
 私は、その話し合いに付き合い、とにかく子どもたちの話を聞くことにし、付き合い続けました。結局、像をつくることは難しいという結論になりましたが、平和の歌をつくることにしました。平和委員を立ち上げ、みんなの思いを集めて、歌詞をつくり、『この思いを未来へ』という歌が完成しました。この歌をCDにするとともに、歌詞に込めた思いを文集にしました。
 この話には後日談があるのです。その文集を様々な場所に送ったのですが、「I CAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」にも送りたいと考え、国際運営団体の一つである「ピースボート」へ送りました。文集を送った一年後くらいに「ピースボート」から手紙が来たのです。そこには、I CANのメンバーで歌を共有したことと子どもたちの行動に感銘を受け、「ピースボート」も新たな取組を始めることが書かれていました。
 子どもたちの行動が他の団体を動かしたのです。行動はつながりを生むのだということを学びました。

子どもを信じて待ち、付き合う教職員集団

入澤:子どもたちは学ぶことで行動したくなり、その行動は新たな行動を生み出すきっかけになっていきます。そのためには、子どもたちにとことん付き合うという覚悟をもった教職員集団が必要です。
 平和学習は、教職員集団の支え、互いの信頼関係があるからこそできる実践だと思います。
池田:平和学習に向ける教職員の熱量はすごいと感じています。これまでの先輩たちの実践の積み上げがあります。それは、学校としての財産です。
 今、本校では、様々な文化圏、国の子どもたちが増えてきています。職員会議の場で、アメリカ人の父親がいる子どもが日本の被害のことだけではなく加害のことも学びたいと発言しているということが話題になったことがあります。
 文化圏が違えば、同じ事柄でも見え方が違います。そうした違いを受け止め、新たな学びをつくっていくことが、平和につながっていくと感じています。

――お二人にとっての平和学習とは何ですか?
入澤:平和学習をすればするほど、自分がちっぽけだと思います。
 子どもたちは本当にすごいです。子どもたちを見ていると、いかに自分がいい加減に生きてきたかと感じさせられています。6年生の子どもたちは、社会、大人のことをよく見ています。その中で本当によく考えています。
 平和を教える存在ではなく、子どもとともに考え、悩み、話ができる存在でありたいです。
 子どもが求めているのは、正しい言葉ではなく、信頼できる大人の言葉なのだと思います。
池田:平和学習をするようになって自分で考えるようになりました。
 自分は何もできないのではなく、自分が何を学び、何をするかが大事なのだと思います。
 平和学習を通してそのことを実感した私が、未来を担った子どもたちの前にいるということを心して、実践を続けていきたいです。

(おわり)

★『みんなのねがい』8月号については下記ホームページから★


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