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コンサドーレのクラウドファンディングで考えたこと

北海道コンサドーレ札幌が行ったクラウドファンディングが無事目標金額を達成して終了した。

目標金額1億円のところ、それを少し上回る1億900万円相当が集まった。集まった支援金は「クラブ強化費」に使われる。途中、金額が伸び悩み目標達成が危ぶまれたが、残り数日からすごい勢いで金額が集まり1億円に到達した。

目標金額を達成したことは、コンササポとして素直にうれしい。ただ、その気持ちとは別に今回のクラファンで自分が思ったことを記すことにする。後ろ向きな話になるが、クラファンが終わった今なら水を差す感じも少しは薄れるだろう。

クラファンは「サポーターの力」を可視化する

今回のクラファンが発表されたとき、僕は真っ先に「こわいな」と思ってしまった。

なぜならクラファンは「サポーターの力」が可視化されるからだ

クラブもサポも「サポーターの力」や「サポーターの熱さ」という言葉を口にすることがある。特にコンサドーレは、クラブも熱いサポーターをかかえている自負が見えるし、サポ自身も自らが熱いサポーターであることを自負してる節がある。

では、サポの熱さや力は何によって示されるのだろうか。

一番わかりやすいのは観客動員数だ。たとえば、あるクラブの平均観客数が2万人だとすれば、そのクラブのサポの力はざっくり「2万人を集めることができるレベルの力」と推測することができる。

あるいは、我々サポには公表されていないが、スポンサーの製品やサービスをどれだけ購入、利用したかも企業やクラブによってはざっくり計算しているところがあるかもしれない。これもサポの力や熱さを示す材料だ。

僕が感じるのは、サポの力や熱さを測る正確な指標はないだろうということだ。だから観客動員数などの傍証を集めて推測するしかない。この傍証には、なんとなくの雰囲気や断片的な証言も含まれる。サポの力や熱さは、思いのほか明確に分かるものではなく、ぼんやりとした霧のようで、ふんわりとしたイメージに包まれているように見える。

クラファンは、そんなサポの力や熱さを「どれぐらいサポーターがクラブのためにお金を集められるか」という指標で推測するヒントを与える。これは成功すれば問題ないが、失敗すればクラブイメージの大きな損失である。

成功したとしても成功の仕方が問われる場合もある。

今回コンサドーレは「コンササポは、クラブのために1億円を集められる力を持つ」ことを証明した。これを好意的に捉える人もいるだろう。だが、「あれだけ熱いサポと自負しているのに、目標金額ギリギリしか集められない」という見方もできないわけではない。

正直、僕はクラブもサポも「熱いサポ」を自負するなら、爆速で目標金額に到達し、目標金額はあっさり越えて「やっぱりコンササポの力すげえな。自負してる通りだ」と示せたらよかったなあと思わんでもない。期待しすぎだろうか。

サポの力が可視化されるのは、歓迎すべきことかもしれないが、実際はその力がはりぼてだったらどうしようというこわさもないわけではない。そのリスクも含めると、僕個人としてはこんなに心臓が痛くなるクラファンは二度とやってほしくないというのが本音だ。

サッカークラブのクラファンは「飛び道具」だ

近年、サッカークラブがクラファンを行う例は増えている。もちろんコロナ禍による財政危機など緊急なケースもその中にはあるだろう。

一方、なんでもかんでもクラファンでお金を集めすぎではという考えもある。僕もそちらよりの考えだ。

コンササポのしゅんちゃまさんは、Twitterにて以下のように述べている。

個人的な本音としては、今回は仕方ないけど、「クラウドファンディングに頼った運営、補強」みたいなんはあんまり好きじゃないな

それは俺らが普段払ってるクラブコンサドーレやチケットやグッズ代から出して欲しい。もちろんそれでは足りないからこうなってることは理解してるけどね

コンサドーレに限らず、クラウドファンディングでなんでもかんでも金集めればよくね?みたいな流れが好きじゃない

例えば何か実現したい具体的な目標があって、それをどれくらいの人が望んでいるのかわからないけどアピールして、お金を出してもらうための仕組み、としてのクラウドファンディングなら大いにありじゃないかと思うけど、それ普通の物販じゃだめなの?みたいなのよくあるじゃん。

しゅんちゃまさんのTwitterより

僕もこれらのツイートに同感する。たとえば「クラブハウスを新築します」とか「育成組織用の練習場を作ります」でもいい。何か具体的な目標があって、それを実現するために活用するのがクラファンの本筋だと思う。

強化費や経営資金というふわっとしたものは、悪いわけではないが良いわけではないというのが僕の感想だ。だからこそ、こういうクラファンは今回限りにしてほしい。

いくつかのサッカークラブが行っているクラファンは「飛び道具」だと思う。入場料収入、スポンサー収入、物販収入など本流の収入があまり芳しくない、目標に達しない際に搦め手攻めとして活用する手段だ。

「飛び道具」は何度も使うものではない。僕たちサポも、物珍しい飛び道具につい飛びつきたくなるが、本筋は日々のサポ活動でクラブにお金を落とす方法を模索することなんだと思う。

一方で、今回のクラファンの意図も理解できる。元々コンサは「サポと共にクラブを作っていこう」と発信していた。三上GMがトップになってから、クラファンでのメッセージでもわかるように「サポをもっと巻き込んで、自分ごととしてクラブに関わってもらいたい」という気持ちをより一層感じる。

その意味では、自分の支援したお金が直接クラブ経営につながることが分かりやすいクラファンは、「一緒にクラブを創り上げている」感を出すには適した手段だったのだろう。

サッカー選手の「価値」ってなんだろう?

終了したクラファンのリターンを確認すると、「選手一人占め写真撮影会」(250,000円)、「レンタル選手」(1,000,000円)、「レンタルGM・CRC」(1,000,000円)に一人も支援が入っていない。

これらに支援が入らなかったのは、金額設定の問題もあるかもしれないが、僕はリターンの内容に注目したい。

前もって書いておくと、僕は特定の選手にあまり思い入れを持たないし、ひとりの選手の大ファンだったこともない。そういう人間によるものの見方だとは留意させていただきたい。

選手の写真撮影会、選手たちのレンタル。これらを僕は「選手たちの存在そのものに価値がある」という考えに基づいたリターンだと考えた。

「存在そのものに価値がある」という売り方は、非常にアイドル的な売り方だ。

もちろんアイドルだって、ルックスやダンス、歌などのスキルに立脚して価値を生んでいる面がある。ただ、「推しが存在しているだけで尊い」的な考えが幅をきかせているジャンルであることも事実だと思うので、便宜的に「存在そのものに価値がある」考えに基づいた売り方をアイドル的とする。

誤解がないように補足すると、僕は選手たちの存在には価値がないと言いたいわけではない。

しかし、選手たちが持つ価値の根っこは存在そのものではなく、「サッカーが上手」などの特殊スキルを持っていることにあると考えている。

親しみやすいだったり、ファンサがいいだったり、存在そのものに価値が出るのは、特殊技能に基づく価値に付属、あるいは上積みでしかなく彼らの持つ価値の本質ではない。

その上で、今回のクラファンのリターンを見てみると、選手たちが持つスキルに立脚したリターンがひとつもない。

選手をレンタルすることでサッカー教室をしてくれるのかもしれないが「活動内容についてはご相談の上、決定いたします。」や「実施内容によってはお断りさせていただく場合があります。」と注意書きがあることからも、実施してもらえるかは支援した上で、先方の事情次第なので不透明だ。

選手たちの存在そのものに価値があることを土台にしたリターンが悪いわけではない。でもそれだけじゃなくせっかくなら彼らが持っている一流のスキルを活かしたリターンがあってもよかったのではと思う。

マンツーマンサッカーレッスンでも、事前にプレー動画を見てもらいzoomで30分アドバイスしてもらうでも構わない。あるいは、キックが上手と評判な赤池GKコーチによる、GK練習体験なんかもおもしろいかもしれない。

選手をアイドル的な売り方をするときの注意点

選手をアイドル的な売り方をすることが悪なわけではない。それもクラブに関心を持ってもらったり、より応援してもらうために取り得る手段の一つである。

ただし、アイドル的な売り方をするときにもそれなりに注意することがあるはずだ。アイドルだって大変なのだ。

今回の選手をレンタルするというリターンだが、一見支援者が自由に何をしたいか決めることができそうだ。しかし、選手にNG項目がいくつもあることぐらいはサポも想像つくだろう。そうなると、果たして自分がやりたいことが叶えられるかまったく分からない状態で、自由に決めてくださいと言われても二の足を踏みはしないだろうか。

例えば、各選手たちがそれぞれどんなスキルを持って、どんなことをお手伝いができるなどを明示したほうが依頼側もイメージしやすいし頼みやすいはずだ。

本当にできるかは分からないが、仮に菅選手が「自分は魚をさばくのが得意です」というスキルを事前に提示したら、「菅ちゃんと一緒にお魚をさばいて刺身を食べたい!」ってサポが一人ぐらい出てくるかもしれない。

今やトップアイドルでさえ「私はこれができます!」と周りに自分の特徴やスキルをアピールしている時代である。アイドル的な売り方をするなら自分が何をできるかくらいは示さないといけない。

ただ存在しているだけでみんなが満足するのは、本職のアイドル、それもトップオブトップのアイドルぐらいだ。もっともトップオブトップでさえも、存在しているだけでは多くのファンが満足できるかは分からないが。

ちょっとひねくれた見方をすると、今回の選手を活用したリターンは「選手が近くに来てちょっと親しげに接してくれたらサポは満足なんだろ?」っていう感覚に思えてしまい、僕は正直感じ悪く思ってしまった。サポをなめてるというか、殿様商売感というか。

「選手をアイドルっぽく売り出そう」と考えるのもいいし、それを実行するのも別に構わない。しかし、本職のアイドルの方々をみると、売り出される側もそれ相応の見せ方や自己アピールを努力していることが分かる。

これをアイドル的振る舞いとするならば、アイドル的に売るならば、選手たちにもある程度のアイドル的な振る舞いが求められてしまうのではないだろうか。

だが、選手の本職は「サッカーをプレーすること」だ。いくらクラブが選手をアイドル的に売り出そうとしても、アイドル的振る舞いは選手にとって業務範囲外である。だからこそ、フロントと選手の間でしっかりとした調整や根回しが必要になるのではないかと予測できる。

サッカーとアイドルを結びつけたり、比較したりする言説がサッカー側からみられることがある。「アイドル」ってワードを安易に使えばキャッチ―に見えるかもしれないが、ちょっとアイドルを応援してた身からすると、あんまりアイドルなめんなよと言いたくなることもたまにある。

おわりに

以上、今回のコンサのクラファンについて思ったことを色々書いてきた。

せっかくの華々しくクラファンを行うのだから、もっとコンサドーレというクラブ(フロント、選手、スタッフなどなど含む)が持つポテンシャルやスキルを活かした試みをクラファンの中に組み込んでほしかったと改めて思う。別に一発芸をするのが悪いわけではない。でも僕はどうせなら自身が持つ強みを存分にクラファンで発揮した上での一発芸が見たかった。

そして、これはクラファンに限らず、これからのファンサービスにも通ずるものである。

僕個人がとてもよいファンサービスだと感じたコンサの試みが、サポーターズデイで実施された「FKの壁体験」だ。サポがFKの壁となり、選手が実際にFKを蹴ることでそのキックのすごさを思う存分堪能しながら交流を図る。選手が持つ特殊スキルを活かした最高のファンサではないだろうか。

もちろん特殊スキルを活かしたファンサは、企画も実行も非常に難しい。そうなると、もちろん親しみやすさやパーソナリティを活かしたファンサが多くはなる。

明確なアイデアが出るわけでもなく、思ったことの垂れ流しでしかないが、個人的に今回のクラファンは、選手が持つ特別な価値を改めて考えるいいきっかけになった。

また、それとは別に開幕も迫ってきており、キャンプ情報や新規パートナー発表など楽しみも増えている。今季も思う存分コンサドーレのサッカーを楽しんでいきたい。