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2024シーズン初めのコンサドーレを見て感じた3つのポイント

 2024シーズン開幕後1分4敗でJ1最下位。絶不調の北海道コンサドーレ札幌についてTreads(元ネタはX)に投稿したことを少し編集し、話題毎に再整理してまとめてみた。

 ちなみに僕は学生時代、テスト前日になってから慌てる学生だった。だからシーズン3分の2過ぎぐらいになって、まだ状況がどん底だったらはじめて悲壮感出していこうと思っている。5節ってまだテスト2週間前ぐらいだよね。


1.コンサドーレ・ファミリーとドン・ミシャの現在

 今のコンサドーレにとってミシャは「絶対的ボス」である。僕のイメージは映画『ゴッドファーザー』でマーロン・ブランドが演じたドン・コルレオーネだ。コンサドーレ・ファミリーのドン、それがミシャである。マフィアのボスは自分に忠誠を誓い、自分が示す道を信じて走る者は絶対守りぬく。だからミシャは「ドン」であり、チームは「ファミリー」なのだ。

 ひょっとしたら今のコンサドーレ・ファミリーは、他のクラブや環境の変化に取り残されて斜陽の一途なのかもしれない。でもどんな試合内容、どんな結果だろうと選手やスタッフの「俺たちがボスを漢にする」気持ちに変化がないなら、我々はこの斜陽のマフィアを応援するしかないのである。それがゴッドファーザーと運命を共にするということだ。

 4節の町田戦後、代表ウィークによる中断期間でミシャは「自分たちは前から行くんだ」と訴え、選手たちは「走る、戦う」という原点に改めて立ち返ったそうだ。そうやって臨んだ5節の神戸戦は1-6で惨敗だった。

 実にミシャらしいと感じた。今までのやり方や方向性を誤りとするのではなく「自分たちの原点に立ち返りそれを徹底すれば、お前たちの実力なら勝てる」とアプローチする。実力はあるけどうまく自信が持てない選手たちにはすごく効くだろう。そして、自分たちの実力を信じてくれる監督に付いていきたくない選手はいない。

 告白したら付き合えるのに自信がなくて一歩踏み出せない人にも、告白したとて成就しないし告る自信もない人にも「お前ならできる」と背中を押してくれる。ミシャは最高のクラスメートなのかもしれない。ミシャが友達ならひょっとすると僕も学生時代にもう1~2人に告白していたのではないだろうか。

 黒田監督の町田は「たとえプロでもどこかでサボりたくなる気持ちはある。そこをサボらせないように年中マネジメントするだけで相手チームとの差がつく」ことをずっと証明し続けてる印象がある。

 黒田監督が異常なのは、サボらせないためのアプローチの手数がおそらく無数にあって選手がダレないところだ。100を120に成長させる前にまず100出させることが先だと考える人である。

 以前、高橋秀人選手が「あんまり口酸っぱく監督が言っても選手は慣れちゃう」と言っていた。でも町田のサッカーはきっと口酸っぱく言わないと成り立たない。選手を飽きさせてないためのアプローチの手数が膨大なのだろう。

 黒田監督は危機感を煽り、ミシャは希望を煽る。性悪説の監督と性善説の監督だ。だからこそ町田戦は楽しみにしていた。正反対の監督が真っ向からピッチ内でもピッチ外でもぶつかったら盛り上がると思ったからだ。結果はそこまで互いが熱くなれるほどコンサに手ごたえがない試合だったのだが。

 コンサはパスをつなぐことよりも無理にでもシュート打つ方が「勇気がない」とか「リスクから逃げてる」って内部評価を与えられるチームなのかもしれない。それはそれでひとつの方針としてありだ。少しでもゴールを決める確率を上げるプレーを選択するように促すことができるからだ。

 戦術プランはゴールを目的として組まれてるはずなのに、いつの間にか「ゴールを決めること」ではなく「ゴールまでの過程をきちんとこなすこと」が目的や評価基準へとすり替わっている。企業など一般人が属する組織でも結構あるあるかもしれない。

2.なぜ変わらない?なぜ代えれない?

 1-6で負けた神戸戦の後、僕が一番気になったことがある。こういう試合の後に監督やスタッフ、選手は何を考えるんだろうか。「自分(選手)たちがもっとがんばれば、上手くなれば、今のサッカーで勝てる」と思うのだろうか。すごく気になる。

 今のコンサは「自分たちがもっと上手くなればミシャが提示したサッカーができる!だからもっとがんばって成長しよう!」でどうにかなるレベルにないように見える。チームの真価や伸びしろを信じることに実際のピッチ上で発揮される実力があまりに釣り合ってなくて「どうするんだ???」と印象を受けてしまう。

 一人の監督が安定した長期政権を築くには「ボトムアップ」か「トップダウンだけど自分のそばに置く部下は定期的に入れ替える」マネジメントじゃないとどこかで強度にきしみが出るのだろうか。「トップダウン+部下も固定」はよくない組み合わせだ。

 マンチェスター・ユナイテッドで長期政権を築いたファーガソンもまさに「ボス」だったが、部下のスタッフを入れ替えることで戦い方を変えたりして戦い続けていた。

 コンササポの中には「監督はミシャがいい!でもミシャの足りないところは誰か修正してほしい!」って思ってる人が結構いそう。「四方田さん(現・横浜FC監督)呼び戻そう」論や「守備を指導できるコーチを入れよう」論はその典型だ。「ミシャを総監督にしよう」論もこういう意見の亜種だ。

 でもミシャがそんないいとこ取りができる監督なら、既に北海道にいなくて別の場所で活躍してる気がしてならない。ヨーロッパで指揮を執っているかもしれない。レベルやお金の条件がコンサよりうんと良いクラブで、タイトルも勝ち取ってそうだ。

 ミシャは「信念を曲げない絶対的ボス」であるからカリスマ性を持ち、結果も残してきた。それを部分的に修正するということはミシャである理由がない。

 結局「ミシャと共に歩む」か「ミシャをすっぱり切り捨てるか」の二択しかないのだろう。都合の良いことを考えたところで気休めにもならない。

 今まで信じていた戦い方を変えるのも、負け試合だからってタオル投げて次の試合に備えることも、対象が感情を持たない駒なら簡単にできる。生身の人間だから実行するタイミングが難しい。マネジメントのやり方ひとつで簡単に積み木は崩れるから。

 日本史や世界史を学んでいると分かることがひとつある。どんなに優れたリーダーでも「一度はじめて続けてることから撤退すること」が最も失敗しやすい。そして難しい。撤退してもタイミングを間違えたら地獄、撤退しなくても地獄。そんな中でいかに綺麗に撤退するか。これが本当に難しい。

 みんながある程度納得感を持って「ここで撤退なら仕方ない」と思える段階に至らないと撤退の旗を振るのがとにかく難しい。そしてそこまで行き着いた段階は手遅れの一歩手前であることが多い。だからタイミングの見極めが本当に困難だ。

 撤退の難しさの象徴としてぱっと浮かんだのは、シベリア出兵の撤退とWW2での日本の降伏である。前者はどんなに有能なリーダーでも撤退の旗振りは困難なことを、後者は本当に状況がヤバくなっても撤退に対してみんなが納得感を得ることは難しいことを教えてくれる。

3.正直者GMの哀しきすれ違い

 三上GMは、コンササポをだます気もごまかす気もまったくない。話せる情報はおそらく真摯に開示してくれている。でもサポにすべての情報を話すことは当然できない。サポに話した情報と話せない情報を合わせることで、はじめてクラブの全体像が分かる。「愚直に情報開示する」という行為そのもので、クラブもサポも双方納得いくコミュニケーション成果は得られない気がする。

 スポーツ報知のコラムで三上GMが「今季黒字とJ1残留」という思いを明確にさらしてくれた。この真摯さは本当にありがたい。ただ、もし開幕ダッシュに成功してたらこんなに洗いざらい言わなかったのかな想像するとそれはそれで震える話だ。

 「こういう情報をこういう形で自分から出すことでサポをこう動かしたい」ってストーリーがあるというよりは、「その場その場で話せることを正直に話す」がクラブと三上GMのコミュニケーション戦略になってる気がする。もっとサポに対して「こうしてくれ」ってはっきり要求していいと思う。

 三角山放送局のコンサGVで「サポにできることは何か?もっと甘えてもいいですよ」といった趣旨のメールが三上GMに届いた。それに対して彼はコンササポをベタ褒めかつ感謝した上で「今していることを続けてほしい」と語っている。三上GMは本当にいい人なんだなと感じた。そして話が噛み合ってるようで噛み合ってない感じもするやり取りがもどかしい。

 推測するに今のコンササポは、クラブのために何かしたい意欲はある。何かできそうな自信もある。でも「そもそも何をすればいいか分からない」人と、「何をすることが一番クラブのためになるか優先がつかない」人が一定数いるのではないだろうか。

 別に強要ではなく、例えばクラブ側が「まずこれをがんばれる人はがんばってほしい。できない人はこういう応援の仕方もあります」と例示するだけでも動きやすくなる人がいるはずだ。指示待ち人間と思われるかもしれないが、それが現実なのだからいいじゃないか。

 今のクラブは、意欲も自信も満ちてる人に「今のままのキミが好き」と現状に対する自己肯定感を余計に高めてるだけな気がする。「今のまま」でこんな現状になっているから「なんとかしよう」とみんな思っているんじゃないのか。どちらも互いのことを想っているはずなのに、こんなにすれ違うものなのだろうか。

 「ひとりひとりが金出せ声出せ」という話は伝統的にコンササポから話が出る。でもクラブの本音は「ひとりで何かするより誰か試合に連れてきてくれ」と「できる範囲でパートナーと直接コミュニケーションとってくれ」なのかもしれない。つまり僕のようにnoteやSNSでくだを巻いてる人間は一番の役立たずだ。もちろん「消しゴムの消しカスのような存在」だと自覚をもって僕も書かせていただいてる。

 だとしたら改めて「サポのこういう行動がクラブにこういう形で還元されている」とお金の流れを明かせる範囲で明示するだけで「自分たちのこういう行動が○○選手の年俸につながる」とか実感しやすくなるのではないだろうか。

4.参考資料

◎ミハイロ・ペトロヴィッチにまつわる5つの妄想
 僕のミシャやコンサドーレに対する考えのベースは、こちらに詰め込まれています。

◎今季黒字とJ1残留へ…札幌には計画的な補強が必要…三上大勝代表取締役GMのコンサ便り(2024/3/24)

◎J1札幌、屈辱の2年ぶり6失点…開幕から5戦勝ちなし(2024/3/31)

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