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無関心を装っても無益なこと

 というわけで、5月となりました。なかなか時間がとれず 2か月のお休みをいただいてしまいましたが、なんとかスケジュールの目処も立ちましたので、今日からまた、noteマガジンの定期更新を再開いたします。

 この 2か月間はそれなりに慌ただしい日々を過ごしていたのですが、その合間を縫いながら、いわゆる「人文系」の本は色々と性懲りもなく読んでいました。ただ、その中でも管見の範囲では総じて戦前世代の方々が書いたものが面白く、同種の魅力を放つ書籍や言説が(私自身の怠慢もあろうかと思いますが)現代ではなかなか見当たらなかったことは残念だなあと感じるところです。humanitiesの評判は、一部SNS等ではほとんど地に落ちているようなところがありますが、私はどちらかといえばその価値を擁護する立場をとってきたものですから、同時代の方々にそれが伝わっていない(ように見える)現状には、やはり忸怩たる思いもあります。

 人文学(humanities)の魅力とは何かという問いについては、色々な答え方があるでしょうが、私にとってのそれは、何よりも「物事を根本(基礎)から考えるための道具や訓練の機会を提供してくれる」ということにほかなりません。たとえば、SNSでは「人権」について毎日のように多くの人々が語っていますが、この「人権」なるものがそもそも何であって、それはなぜ現在私たちに理解されているような内容をもって規範性を獲得しているのだろうか、といったことを、教科書に示された簡潔な定義と説明のレベルを超えて考えようとするならば、その思索はどうしても人文学の領域に踏み入らざるを得ないことになる。humanitiesとはその名称どおりに人間(及びその所産)を扱う知的営みであり、「人権」という人間の価値判断と本性的に切り離しようのない概念もまた、この知的営みの蓄積の中から、生み出されてきたものであるからです。

 ただ、残念ながらこのところの斯界の言説には、それが一般向けのものとして語られたときでさえも、己の属する「業界」の規範(場合によっては、それは明示的な言語化すらされていない「空気」のようなものであることも少なくありません)を天下りの前提として、その枠内だけで話題の「処理」を行おうとするようなものがしばしば見られます。そして、物事を根本から考えたいと志している一般の方々が、その天下りの前提に疑問を呈した場合には、問われた側は「勉強してください九官鳥」と化してしまうことも珍しくはない。実際に勉強してみれば当該の前提を天下りに採用することの妥当性がよくわかるというのならばまだよいのですが、そうではないケースもわりとあるように思われるので、humanitiesにはそれなりに好意的なつもりの私にとっても、「これはつまらないだろうなあ」と感じられることは率直にいってけっこうあります。

 とはいえ、そうした語り方をする人たちにもそれなりの理由や事情があるのだろうし、あまり私の立場でどうこういっても仕方がないのだろうとは思います。結局のところ私にできることは、カントが「無関心を装っても無益」と述べたような諸問題について、「そもそも論」から丁寧に考えてみるということは、なかなか楽しい営みなのだということを、個別具体的に書いたり語ったりしてゆくことですね。今月も、例によってそれが本note(マガジン)の、メインコンテンツということになるのだろうと考えています。


 さて、そんな感じで定期更新も再開ということで、マガジンもいつもどおり新しいものを作成いたしました。5月のマガジンは、上掲リンク先になります。内容としましては、まずテクストの記事が月~金曜日の週5回(原則として朝8時に)必ず更新され、その有料部分は全て上掲のマガジンを購読することで読むことができるようになっています。また、より踏み込んだ内容を語るツイキャス放送・録画の視聴パスも、本エントリ下部から取得が可能です。noteエントリの補足や質問対応、そして文章にはしにくいような微妙な問題に関する話はたいていツイキャスのほうで行っておりますし、また日々の更新で過去エントリへの言及は頻繁になされることが通常ですから、とりわけ読まれたい記事が複数ある場合には、マガジンを購読されたほうがお得になることは多いかと思います。

 また、これも通例にしたがって、マガジンの新規作成とともに、スキ占い(スキをつけた時に出るランダムな占いメッセージ)の差し替えも行っております。朝に更新されるエントリを通勤・通学の道中などでお読みいただきながら、こちらも是非お楽しみくださいませ。

 なお、先々月分のマガジンは下掲のリンク先です。ご購読いただいている方は、もちろん従来どおり記事の閲覧もツイキャス録画の視聴もそのまま可能ですので、過去エントリを見返される際等に、ぜひご利用くださいませ。


 そんなわけで、今月もどうぞよろしくお願いいたします。最後にいつもの告知ですが、限定キャスで回答を希望される質問や相談等のメッセージは、ツイッターDMもしくはグーグルフォームにて受け付けておりますので、そちらのほうにお送りください。また、対談のお申込み等の様々な提案・連絡・雑談等も同じところにお気軽にどうぞ。これからは気候もますます暖かくなり、春というよりは初夏に近い日々が多くなってくることかと思いますが、皆様どうぞ身心ともに大切にされて、お元気に過ごされますように。


※以下のマガジン有料エリアには、今月配信するツイキャス放送(録画)の視聴パスを記載しています。このパスで視聴可能な動画URLは、配信があるたびに、順次以下に追記してゆく予定です。

飛行機の恐怖体験、貨幣は負債か、積極財政論に思うことなど
食べ物の好み、LGBT法案、浄土教についての私見など
自由への旅、「権利」とはなぜそう呼ばれるのか
女性主人公のこと、激ヤバ「改正」の件、「権利」について補足など

 5月のツイキャス(録画)視聴パスが記されているのは本エントリのみであり、今月の他のエントリには有料部分にもパスの記載はございませんのでご注意くださいませ。

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2023年5月のエントリをまとめたもの。記事の有料部分は全て読める上、踏み込んだ内容を語るツイキャス放送(録画)の視聴パスも入ったお得なセットです!

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