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ここが好きだよ江戸川乱歩

江戸川乱歩は『人間椅子』『孤島の鬼』『D坂の殺人事件』などの著者として有名です。読書家noterの皆さんなら、読んだことのある人がいらっしゃるのではないでしょうか。

まだ読んだことがない方に江戸川乱歩の良さを知ってほしいので、江戸川乱歩作品の好きなところ、その作品についてご紹介します。

江戸川乱歩とは

江戸川乱歩は三重県出身で、明治生まれの推理小説家です。29歳のとき『二銭銅貨』でデビュー。ペンネームの由来は、アメリカの小説家エドガー・アラン・ポー。そして江戸川乱歩が江戸川コナンへと連なるわけです。コナンをきっかけに江戸川乱歩を知った人も多いのではないでしょうか。

第二次世界大戦も経験した年代ですが徴兵はされず、他に男手がいないので近所のリーダー役をやらざるを得なかった。本当はやりたくなかったとか、自分の家の庭で茄子を育てて近所に配ったとエッセイに書いていました。おどろおどろしい作風とは違ってなんだか人間味がありますよね。

ここが好きだよ江戸川乱歩

1.  児童向け作品が豊富

江戸川乱歩は児童向け作品をたくさん書いています。明智探偵や怪人二十面相が登場する少年探偵団シリーズが代表的です。

"子供のうちから大人びた小説を読んでいる自分"に当時ドキドキしたものです。少年探偵団シリーズの主役は読者と同世代(か少し上)の小林少年。

小林少年になったつもりで大冒険を体験できるのもいいですよね。

2.  独特な擬音

江戸川乱歩は背筋がヒヤッとするような雰囲気がありますが、それに一役買っているのが独特な擬音だと思います。

カタカナに注目して読んでみると面白いかもしれません。

彼はニヤリと会心の笑みを浮べた

三挺の太い蝋燭がユラユラと幽かすかに揺れながら燃えていた。

ニコニコしながら、アッという間に死骸にして見たいという異常な望みがあったのです。

3.  日常に起こりうる犯罪を描く

人間が椅子の中に入っている『人間椅子』や屋根裏で人がうろついているかもしれない『屋根裏の散歩者』のように、

やるやついないだろう!でも・・・(思わず椅子から立ち上がる)

というように日常になさそうでありそうな犯罪を描いているのが最大の魅力です。


江戸川乱歩作品が気になり出した方には、

まずは青空文庫で読んでみる

江戸川乱歩作品は2015年に著作権フリー(パブリックドメイン)となったので、青空文庫から無料で読むことが出来ます。

初めての方は「何を読んだらいいかわかんないよ」だと思うので、乱歩初めての方におすすめする青空文庫で読める乱歩作品3選をご紹介。

赤い部屋

異常な興奮を求めて集った、七人のしかつめらしい男が(私もその中の一人だった)態々(わざわざ)其為(そのため)にしつらえた「赤い部屋」の、緋色の天鵞絨(びろうど)で張った深い肘掛椅子に凭れ込んで、今晩の話手が何事か怪異な物語を話し出すのを、今か今かと待構えていた。

冒頭の一文だけでもう奇妙!真っ赤な部屋に異常な興奮を求めた7人の男が集まってるなんて。

この後、この会合の新入会員T氏がこう告白します。

突然申上げますと、皆さんはびっくりなさるかも知れませんが……、人殺しなんです。ほんとうの殺人なんです。しかも、私はその遊戯を発見してから今日までに百人に近い男や女や子供の命を、ただ退屈をまぎらす目的の為ばかりに、奪って来たのです。

人殺しの告白です。

もうグイグイ興味を引かれますよね?
気になった方は下記から奇妙な世界を体験してみてください。

※下記リンクからXHTMLファイルを選択するとブラウザで見られます

恐ろしき錯誤

「勝ったぞ、勝ったぞ、勝ったぞ……」
 北川氏の頭の中には、勝ったという意識だけが、風車の様に旋転(せんてん)していた。他のことは何も思わなかった。
 彼は今、どこを歩いているのやら、どこへ行こうとしているのやら、まるで知らなかった。第一、歩いているという、そのことすらも意識しなかった。
 往来の人達は妙な顔をして、彼の変てこな歩きぶりを眺めた。酔っぱらいにしては顔色が尋常だった。病気にしては元気があった。

この主人公も何か奇妙な感じです。
それもそのはず、北川氏は自宅の火事で愛する妻を亡くしていたのです。しかしその死を企てた者がいるらしいとわかり、彼は復讐に乗り出すのですが・・・

「錯誤」がテーマのこの作品。読み進めていくと「一体何が真実なのか」と揺さぶられること間違いなし。

算盤が恋を語る話

最後は爽やかな恋のお話です。

造船所に勤めるTは同僚のS子に淡い恋心を抱いていました。しかしTはその想いを口に出すことが出来なかったのです。

読む人は既に推察されたことと思いますが、Tは世にも内気な男でした。そして、それが女に対しては一層ひどいのです。彼は学校を出てまだ間もないのではありますけれど、それにしても三十近い今日まで、なんと、一度も恋をしたことがない、いやろくろく若い女と口を利いたことすらないのです。無論機会がなかった訳ではありません。一寸想像も出来ない程臆病な彼の性質が禍いしたのです。それは一つは彼が自分の容貌に自信を持ち得ないからでもありました。うっかり恋を打あけて、もしはねつけられたら、それがこわいのでした。

Tかわいいですね。Tに共感する人も多いと思います。

そこで、Tは話しかけたり、手紙を書く以外の方法で想いを伝えることに・・・

キュンとしたり胸が締め付けられたりする乱歩らしい恋愛作品です。

興味がでたら『江戸川乱歩傑作選』を読もう

青空文庫で読める作品を3つ紹介しました。江戸川乱歩の雰囲気に興味を持った方は、新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』を読んでみてはいかがでしょうか。

有名かつ面白い作品が選ばれていて、ハズレがありません。

ただし、最初の作品『二銭銅貨』は少し取っ付きづらいかもしれないのでハマらなかったら、その次の作品から読んでみてください。

さいごに

江戸川乱歩は有名な割に読んだことがある人が少ない印象でした。

  • ホラー作品が好き

  • 性格が大人しめ

  • 人間の悪い側面に興味がある

こんな方には刺さる作品ばかりです。ぜひこれを機に乱歩に触れてみてください。

一人でも乱歩好きが増えたら嬉しいです。