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今井美樹 ~ たった愛なのに

 今井美樹の魅力は何かというと、美人であることに尽きます。外見が良いのはもちろん声質まで美人です。それは歌手としてすごい武器になります。
 今聞くと退屈に感じる曲も多くあります。当時の楽曲としては正解でも、やはり時代の流れで風化します。その風化に耐えられているものを私好みに抜き出すとこんなプレイリストになります。
 核としたのは「幸せになりたい」と「雨にキッスの花束を」の二曲です。これらを初めと終わりに置いて、説得力を持たせたいと思いました。懐かしいシティポップが流行っている今、その括りでぜひ思い出してほしい同時期にリリースされた二曲です。
 「雨にキッスの花束を」はアニメ「YAWARA!」のテーマソングとして使われました。これがとんでもない名曲です。作曲はKAN、作詞は岩里祐穂。この歌詞が、私が好きな歌詞で五本指に入るほど至極の出来です。刹那的な高潮をこんなにもかわいくキャッチーに描いたサビの歌詞が、他にあるだろうかと思います。そしてKANの仕事も良すぎる。自身の音楽力をあくまでポップスという形にこだわって常に昇華させたKANには頭が下がります。
 今井美樹の声には風のようなイメージがあります。涼しげというよりは、湿気を含んだ艶っぽい風。その声を活かすために、テンポの遅い楽曲が多く提供されていますが、今聞くと古臭く聞こえます。アレンジが変われば聞けるのにと思いますが、それは時代の良さでもあります。聞けるものを聞く。
 歌唱の際、表現に感情を込めようとしたがるのがシンガーソングライターの常です。ピチカート・ファイヴ小西康陽は、ピチカート初期の頃、元メンバーのORIGINAL LOVE田島貴男に言ったそうです。歌に気持ちを込めるな。気持ちを込めずに歌うことで曲が引き立つからと。ピチカートにおいて、それは良策でした。その反動かのように脱退後の田島はORIGINAL LOVEで、より感情を込めて歌うようになっていましたが。
 今井美樹の歌も、その話に近いものを感じます。歌い手として、歌詞の内容に寄り添いすぎないことで曲が活きてくる。歌詞の情緒はリスナーが自由に見つけてくれる。解釈は自由であるし、それに対して歌う側がアクセントをつける必要はない。
 アーティストが作家仕事で歌手やアイドルに曲提供することも多かった時代、広く聞けば聞くほど面白い発見がありますね。

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