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手のひら一杯の世界
スーパーの店先に、降り始めた雨を眺めているサラリーマンがいた。
その手のひらには一杯に食品が握られている。
遅めの昼食が雨に濡れるのを少し躊躇ったようだったが、サラリーマンは少し苦笑いした後すぐに歩き出した。
2020年07月01日、ついに全国で一斉にレジ袋が有料化してからというもの、こういった光景を見掛けることが増えた。
缶チューハイや発泡酒を一缶だけ手のひらで握ってスーパーから出て来るおじさんや、スナック菓子を気怠そうに片手に乗せて退店する若者。
お弁当のおかずだろうか?紅と白の板かまぼこを一つずつ握り締めて足早に帰路へつく主婦もいた。
何もかも禁止されていく昨今。
息苦しさを感じずにはいられないけれど、名前も知らない人々の〔手のひら一杯の世界〕をみていると、その人のことをなんだか可愛らしく感じてしまうことさえある。
今日もどこかで誰かの、新しい〔手のひら一杯の世界〕が生まれている。
そう思うとちょっと、愛おしい。
2020/07/13 ねだやし
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