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恩師がいる、という人生。

数ヶ月前、Twitterにて、たくみさん @0taku0 という方のツイートを見かけました。かなりバズっていたので、もしかするとご自身のタイムライン上で目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「~~中学の国語の先生、お元気でいらっしゃいますか。」から始まる一連のツイートは、思いもよらぬ形で締め括られる事になるのですが、その内容はもちろんのこと、

なんと美しい文章なのだろう…

と、感嘆しておりました。こんな風に美しい文章を書きたいと思いましたし、太宰治の「人間失格」を読み返したくもなりました。

そして、そのまま自分の恩師について記憶を辿ったところ、小学校2年生の担任だったS先生が思い当たりました。恐らく、私の基本となる考え方や性格を大きく形成する事になったのは、S先生のご指導によるものです。朧気ではありますが、小学2年生、7〜8歳の記憶を振り返ってみましょう。

なんだかヤケに正義感が強く、今とさして変わらず長所も短所も「真面目」といった当時の私は、

「男子〜!ちゃんと掃除してよ〜!」


といった、クラスに必ず1人はいるタイプの女子でした。(笑)まぁ同学年のヤンチャな男子にしてみれば、

「うるせーな!このチビ!!」


としか言いようがありませんよね。今であれば「チビでも視界に入ってて良かったわ〜!」ぐらいは言い返して笑い飛ばせる気もしますが(笑)、そこはまだまだ未熟な小学2年生。ヤンチャな男子たちの発言に、いちいち傷付いてしまう訳です。そんな時に

「マリエちゃんはね、ちっちゃくても中身が詰まってるから立派なのよ。君たちみたいに大きくて空っぽより、ずーっといい!」


と、怒っていたのがS先生です。今考えると、同じクラスの児童を「大きくて空っぽ」と評するのは大丈夫だったのかしら?と思ったりもしますが(笑)、授業中も笑う時も怒る時も声が大きくって、パワフルで、そして私と同じ様に小柄なS先生は、恐らく同じ境遇を過ごしてきたのでしょう。当時からズバ抜けて小柄であった私がクラスメイトから茶化される度に、何かにつけて声を挙げてくれていました。残念ながら、その後も私の身長が伸びる事はなかったけれど、だからこそS先生の言葉は私の指針になっていた様に思います。

そしてもうひとつ。私に"文章を書くことの楽しさ"を教えてくれたのもS先生でした。当時、教室の壁には

「せんせい、あのね」


という、いわゆる投稿コーナーが掲示されており、教壇の引き出しには必ずプリントが用意されていました。どうやら他のクラスでは取り組まれていない様子で、きっとS先生のオリジナルだった気がします。そんな「せんせい、あのね」のプリントは月に1枚は必ず提出しなければいけないのだけれど、たくさん投稿したい人は何枚でも書いて良かったのです。

内容は……といえば、なんせ小学2年生ですので、「校庭でこんな遊びをしたよ!」といった絵日記や、「ドングリを拾ったよ!」とセロテープでドングリを貼り付けてみたり、「○日の給食が美味しかったよ!」とか「漢字の勉強を頑張ったよ!」とか「兄弟喧嘩をしたよ!」とか、とにかく話題は問わず「せんせい、あのね」から始まる日々の徒然を、それぞれの児童が自分なりに1枚のプリントへとしたためていました。登校してすぐ、朝のうちに教壇へと置いておくのですが、夕方までにはそのプリントに先生が一言コメントをくれて、どんどんと壁に貼られていくのでした。壁にはクラス人数分の枠がそれぞれ用意されているのですが、私はその「せんせい、あのね」を

私の枠だけ、壁に貼ったプリントがこんもりなるぐらい、書いてた。(笑)


そして、S先生はその事について、とにかく褒めてくれました。どんなに短い文章でも、些細な内容でも、昨日や一昨日と似たような内容でも。

「マリエちゃんは、たくさん"あのね"を教えてくれて、先生は嬉しいなぁ〜」
「好きなだけ書いていいんだよ〜」
「もっともっと自由に書いてごらん!」

と。とにかくいつもニコニコしながら、私の書いた「せんせい、あのね」を肯定し続けてくれたのです。……余談ですが、私の持っている"好きな人には直接好きだと伝えないと気が済まない気持ち"は、この時に助長されたのかもしれませんね。(笑)さておき、今思えば、朝の登校時に提出されたものを夕方の下校までに読んで1枚ずつコメントをしてきたS先生の手間と労力、そして子どもたちへの愛情は、私には計り知れません。

せんせい、あのね。
もう何年も前に定年を迎えられているとは思いますが、あなたの存在と教育は今でも私にとってかけがえのないものです。あなたのおかげで大人になった今でも、私は文章を書く事が好きなままでいます。

せんせい、あのね。
あの頃は1日に何枚もプリントを出していたけれど、今でも2〜3日に1回のペースで、このnoteを更新しています。なんだか、良くも悪くも私は変わっていないのかもしれませんね。

せんせい、あのね。
でも、私はそんな自分自身を嫌いではありません。そう思えるのは、常に肯定し続けてくれていた、あなたのおかげです。なかなかお会い出来る機会はないかもしれませんが、どうかお元気で。あの大きな声で笑い続けていて下さい。

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