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愛すべき珈琲豆

お店で扱っている珈琲豆は二つのロースターのもの。
一つが山形のAURORA COFFEEさん。こちらの紹介はまたの機会に改めて。今日はもう一つの蕪木さんについて紹介したいと思う。

まずは4年前に遡って、蕪木さんの珈琲との出会いから。蕪木さんは元々蚤の市やクラフト市などのイベントで別の名前で出店していて、その存在は知っていたものの、初めて飲んだのは4年前のみどりのクラフトにて。友人と行列に並んで淹れてもらったのがオリザというブレンドだった。友人は複雑味があると言っていたが、私は美味しかったような記憶があるものの、紙コップの味がして、正直そこまで印象には残っていない。

同年11月、偶然、以前勤めていた職場の近くに蕪木さんがお店を出したのだ。オープンして1ヵ月経った頃、昼休みに訪れた。そこでケニアの豆が好きな私に蕪木さんが勧めてくれたのが珀という名のブレンドだった。運命の出逢いだと思った。衝撃的な美味しさだった。奥行きがあり、複雑味を伴い、一杯のカップの中にストーリーがあるように思えた。こんなに惚れ込んだ珈琲は後に先にもない。今は当時よりも少しアップデートされているようだが、当時の珀も今のものもそれぞれに良さがある。当時の感想をInstagramに書いていたのでここに転記しておこうと思う。

お薦めいただいたブレンドをオーダー。
ネルドリップで丁寧に淹れられた珈琲は、とても美味しくて。
まとまりすぎて面白味のないブレンドは好きじゃないけど、これは味の変化が楽しめるブレンド。
深煎りらしいコクと深みの印象から上品さが現れて。
そして温度の変化とともに甘味とケニアらしい香味が。
冷めてもとても美味しい。

ブレンドは「オリザ」「珀」「羚羊」の3種類。他にもエチオピアを中心としたシングルがいくつかあり、焙煎度合いは中煎り〜深煎り。
ブレンドというと、シングルの豆の持つ個性(ネガティブな言い方をすれば癖)を和らげる目的で、飲みやすくなるようにブレンドするお店が多い中、蕪木さんはその豆の良い特徴が最も生かせるように焙煎してブレンドしているという。だから、落ち着いた中にしっかりと個性が生きている。

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彼の作る珈琲は「暗い感情に寄り添うもの」「弱者への嗜好品」でありたいと本人が言うように、乱れた心を整えたい時にぴったりな落ち着いた味わいだ。そんな彼の珈琲には、Keith Jarretteの"The Melody At Night With You"が良く似合う。しみじみ感じる美味しさと切なさが相まって思わず涙がこぼれてしまうようなペアリングだ。

蕪木さんは珈琲だけでなく、チョコレートも製造している。彼が作るものへの拘りは人一倍強く、決して妥協はしない。傍から見ると心配になるくらい、味を追求しているように思える。だからこそ信頼でき、豆をお願いしているのだけど。

私は昔から、好きな豆を見つけると、只管それを求め続けてしまうタイプ。そうすると小さな変化や質のブレに気づくことがあるのだけど、安定して経営していくためには切り捨てなければいけない部分もきっとあるのだろう、と思うような経験が何度もあった。蕪木さんから同じ豆を買い続けてもうすぐ4年になるが、そんなことは今のところ一度もなく、ロットが切り替わっても、常に質の高い豆を提供してくれる。

蕪木さんの珈琲豆に興味を持った方はこちらから。
著書も勝手に紹介。

・『チョコレートの手引
・『珈琲の表現

料理通信webにて連載記事も公開されているのでそちらも併せて是非。
ご本人から教えていただいたことが書ききれないほどあるので、またいつかの機会に。


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