では、日本人はアフターコロナの世界でどうやって生きて行けば良いのか?(第三回)

■ネタとメタとオタの前振り話

ミーちゃん「ハイ、『では、日本人はアフターコロナの世界でどうやって生きて行けば良いのか?』。三回目が始まりました。アシスタントのミーちゃんです。クラウドは人生!」
ネコトク「ナビゲーターのネコトクです。それはまた随分とフワフワとした人生だね。雲のように風のようにみたいな?(違う)全くもって猫の人生のお手本だね。ただ、最近だとむしろ、クラウドはれんh……」
ミーちゃん「バシン!バシン!」
ネコトク「痛い!痛い!……む、無言でポリコレ棒を使用するのは止めて頂きたいですね。申し訳ございません」
ミーちゃん「やめなよ」
ネコトク「……そのネタもどうかと思うけどね。もはやネタがダブルやトリプルミーニングになって来てしまって、自分でも訳が分からなくなってきた昨今、皆さんどうお過ごしでしょうか?」
ミーちゃん「まあ、ご機嫌伺いはそれくらいにしておきましょう。今回は何を語るんですか?前回で語れることはある程度語られたのではないですか?」
ネコトク「……まず、この前振りはプレミアム版のネタに繋がる感じです」
ミーちゃん「はあ」
ネコトク「『クラナドが人生ならば、Fate(/stay night)とは何か』とかね」
ミーちゃん「あれ?ネコトクさんって、アンチ奈須きのこじゃなかったの?」
ネコトク「私が批判しているのは、(FGOも含めた)ソシャゲの現状であって、Fate(/stay night)は普通に評価していますよ?」
ミーちゃん「全く面倒臭いヤツですね。じゃあ、クラナドが人生ならば、Fateは何なんですか?」
ネコトク「……『Fateもまた人生』なのかも知れない」
ミーちゃん「何でも人生じゃないですか」
ネコトク「そうだね、人生勉強だからね。我以外、皆我が師なり。そもそも、私はクラナドはプレイしたことは無いので、そちらの方は分からないが、Fateやデスストランディングについてはプレミアム版である程度語ろうと思う」
ミーちゃん「デスストランディングについても語りますか?火中の栗を拾いに行きますか?」
ネコトク「まだあの辺の議論に関してモヤッと来ている人は何らかの参考意見のひとつになるかも知れませんね。今回の本論からはズレるし、今回は今回でまたぞろ敵を作りそうな話なので。『私のせいでは無いのは分かると思うし、早めに自覚した方が優位になるのではないか?』みたいな話はご理解して頂けるとは思うが」
ミーちゃん「なんか、悪役の台詞っぽく聞こえますが。まあでも、アフターコロナに対するネコトクさんなりの考えみたいなものはいつ語るんですか?」
ネコトク「むしろ、『アフターコロナを語る前の前提』みたいな話ですよ。下準備に力を入れる感じです」
ミーちゃん「とんねるずのネタで、『(長期休暇で)充電していたと思ったら、放電していた』みたいなものがありましたが、そうならないと良いですね」
ネコトク「……ありがとうございます。ミーちゃん、若いね。そのネタを知っていることはともかく若いね。大きく分けると流れは三つですかね。まあ、あまり明るい話では無いです。『更なる飛躍のために一旦かがむ時期』もある、ということです」
ミーちゃん「……そのネタもどうなんですかね、プレイステーション5も予想の斜め上でしたし。まあいいです。ミーちゃんは寛大ですから。では、どうぞ」

■きっと、よくなる!

ネコトク「では、最初は、『きっと、よくなる!』の話」
ミーちゃん「インドの映画でそんなタイトルがありませんでしたっけ?」
ネコトク「それは、『きっと、うまくいく』ですね。良い映画らしいですが。まあ、その映画もコロナの前の話だからね。また、前提が色々変わっているのが現状だと思う」
ミーちゃん「『きっと、よくなる!』も似たようなものじゃないですか?」
ネコトク「そもそも、『きっと、よくなる!』は、『ユダヤ人の大富豪の教え』を書かれた本田健さんの本なのですが、まあ、『ポジティブシンキング』という意味では、そういう部分もあると思う。自己啓発本だしね。私はまだ目次しか読んでいないが、そのうち読もうと思っている。ただ、今回は本の中身の話では無い」
ミーちゃん「じゃあ、何の話ですか?」
ネコトク「Amazonレビューの話ですよ。具体的には、chococoさんのレビューね。URLを下に示します」

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RQ0NARRDKNXX5/

ミーちゃん「……」
ネコトク「そうだよね。ちょっと言葉が出ないよね。ただし、ほぼ全員、『心当たりがある』と思うんじゃないかと思います、霞を食べて生きている人以外は。要するに、『現代社会は昔に比べて(生存のための)難易度が上昇している』。それは、『昔と比べて良くなった結果』だということだ。それが人によっては、『息苦しい社会になった』みたいな言葉として出てくる場合もある。最近はその言葉すらほとんど聞かなくなったが。多分、何を言ったところで変わらないので、現状を受け入れて生き延びることに注力し出した人が多いんじゃないですかね。どうしようも無い世界の流れであると。別の言い方をすれば、『より誤魔化しが利きづらくなってきている』。コロナ前に一時期、日本企業のデータ不正や改ざん、誤魔化し、そういうのが話題になっていた時期がありましたが、『では、非正規になったから質が下がったのか?』と言ったら、実はそれが全てでは無くて、むしろ、『高度成長の時期からそういう誤魔化しをしていた』部分が大きいことが現実として明らかになったりもした。まあ、今でも政府関係も含めて、そういう点の問題は続いているが」
ミーちゃん「でも、だからと言って、そういう誤魔化しを許すわけにも行かないんじゃないですか?」
ネコトク「それはその通り。だから、やり方を変えるなり何なりするしかない。『以前はナアナアで許されてきたものが許されないようになってきた』。例えば、芸能人にしても、『私の言い方が悪かった』とか言って、『誤魔化しに誤魔化しを重ねて墓穴を掘り続ける』みたいな光景も風物詩になっていますしね。かと言って、過去に戻ることは許されない。世界は進歩し続けているわけです。私自身も、『ポリコレ棒』などと揶揄しているが、『推進派に理があると認めざるを得ない場合は認めざるを得ない』訳です。ただし、『どこかで暴言等を吐ける部分も無ければ、つまり、遊びの部分がなければ、社会システムは硬直化して動かなくなる、車のハンドルのように』とは思う」
ミーちゃん「……うーん、じゃあ、どうすれば良いんですか?」
ネコトク「まずは、『世界とはそういうものだ』と受け入れる部分も重要かな、と思った。例えば、『きっと、よくなる!』を別の言葉で言おう。『神の国は近づいた』」
ミーちゃん「!」
ネコトク「私も、『神の国は近づいた』って、何を言っているんだ?と子供の時から思っていたが、あー、こういうことだったのね、と思った。もちろん、私の解釈だが。センテンスを抜き出すと、『時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい』。『誤魔化しだけでやってきた人はいよいよ悔い改めるときが近づいてきた』のではないかと思うが。どのみち、難易度が上昇していく現実は変更のしようが無い。『インターネットで勉強が出来るようになりました!』とまるで選択肢があるかのように喧伝されたりするが、選択肢は無いのですよ。『インターネットの動画によって、世界の剣玉のレベルが上がった』という現実もあるらしい。『こぼれたミルクを嘆いても仕方がない』。『勉強する』の一択しかないわけです。『こぼれたミルクはまた汲めばいい』。その通りです。他の世界中の国の人達がほぼハンデ無しで勉強しているのに、日本人だけが勉強しないで済むわけにも行かないでしょう。少なくとも、自分が生き残りたいなら、勉強するしかないです、選択権はありません」
ミーちゃん「なんて時代だ」

■タチコマ化する人類

ネコトク「全くね。もう一つは、現実性とバランスの問題。思考停止して極論に走るのは良くないと思います。例えば、トランスセクシュアルのためにトイレを新たに作るわけにも行かないでしょう、現在の技術レベルでは。というのが現実的な落としどころだと思います。後は、社会構造、アーキテクチャの問題。これについては、私なりの案はそのうち示すつもりではいます。あとは、出来ることを一つ一つやっていくしか無いとは思いますが」
ミーちゃん「『大きなことはできません、小さなことからコツコツと』ですか」
ネコトク「……ミーちゃん、若いね、とにかく若い。あと、世界レベルでの常識(コモンセンス)の変化がかなり速まってきていますね。コロナ渦はされにそれを促進させている。もっとも、『難易度の高さ』にせよ、『世界の変化の速さ』にせよ、大体の人は感じていることじゃないか、とは思いますが。まあ、日本人の得意技って、『正確さ』とか言われていますが、私は実は『誤魔化しの巧さ』だと思っているのだが。『誤魔化しの巧さ』と言うと、ネガティブに捉える人もいるかも知れないが、要するに、『帳尻合わせの巧さ』ということであり、それが、『(阿吽の呼吸による)摺り合わせの巧さ』に繋がっているのだと思う。ゲハ板に『任天堂のゲームは面白さで誤魔化している』という名言がありますが……、まあいいや、それはプレミアム版で語ろう」
ミーちゃん「ミーちゃんも今はゲームの話は聞きたくない感じですかね。で、何が言いたいんですか?」
ネコトク「某大手掲示板で、『おまえら別人なのに、皆似た感じだね』みたいな指摘があって、『確かにそうだなあ』と思ったりもしたのですが、『インターネットのどこに行っても(某大手掲示板のような)同じようなノリになってきている』みたいな指摘も思い出したわけです。で、『これはどこかで見たぞ』と思ったんですが、『攻殻機動隊SAC』でした」
ミーちゃん「SFが現実を先行していたわけですか、さすがですね」
ネコトク「というか、あまり笑えない現実なんだけどね。『攻殻機動隊SAC』には、『タチコマ』という自律型ロボットが出てくるのだが、ザックリ言うと、『個性を持たせないためにたまにサーバに繋いで、全ての機体の記憶を並列化している』んですよ。今の我々も似たようになっている印象がある、というか、『たまに、どころか、常時インターネットに繋いで、記憶を並列化している』みたいな感覚がある。しかも、世界レベルで。4chanとかも日本とそれほどノリに違いがあるとは思えなくなってきた『人間は完全には理解し合えない』と前回書いたが、逆に言えば『ある程度は理解し合える(並列化出来る)』みたいな?」
ミーちゃん「でも、人間はロボットではありませんよ?」
ネコトク「それはそうなんだが、『私自身の優位性まで並列化される』感覚もあったので、意識的にネットに出力しない部分もある。馬鹿正直に全部ネットに書いていると思ったら大違いだし、それは他の人も同様だろう。個人的に思うのは、本当に頭がいい人ならば、勝海舟の言う通り、『不言実行』だと思う。ブラックスワンのタレブさんの意見も同様だった。ネットで無料で情報提供して餌になったりしない」
ミーちゃん「でも、ネコトクさんは今回、この文章を書いているわけじゃないですか?」
ネコトク「なんというか、『頭の中のゴミを取るため』かな、と思う。自分としては逆に余分な負荷になっている知見や与太話を書くことによって、自分の中に新しいスペースを作る。で、次のステージに行きたい感じなんだよね、自分としては」
ミーちゃん「なるほど」

■死後さばきにあう

ネコトク「『死後さばきにあう』も何となくは分かりましたよ。まあ、少なくとも、私の解釈になりますが」
ミーちゃん「閻魔大王に舌を抜かれるんですか?神の御前に立って罪の告白でも行うんですか?」
ネコトク「いやあ、それはオカルトだよ、ミーちゃん」
ミーちゃん「……そのセリフだけはネコトクさんから言われたくなかったですね」
ネコトク「現実的な話としては、なんてことは無い、当たり前の話だと思う」
ミーちゃん「どういうことですか?」
ネコトク「『後世によって判断される』という話ですよ、単純に。例えば、安倍さんは今は評価されていないかも知れないが、後世には評価されるんじゃないかな、普通に。『運が良いだけだ』と言う人もいるかも知れないが、私は、『運が良い人に政治家をやって貰いたい』ですね」
ミーちゃん「『ネトウヨ的』というか、『安倍支持』みたいな感じですね」
ネコトク「……一応書いておくが、本来の立ち位置からすると、『私と安倍さんは敵同士』なんですよ。事情を説明すれば、九割くらいは納得するんじゃないかな、と思いますが。ただ、個人的な感情とか抜きに判断すれば、『運が良い人にやってもらったほうがいいんじゃないですか』みたいな話なだけであって。『ネトウヨ』に関しては、個人的には、『歴史的必然性』の中にあると思います。これは次の話に被ってきますが……。だから、『後世によって判断される』訳です。例えば、私の今の行動にしても」
ミーちゃん「後世の方々からすれば、ネコトクさんなんてアウトオブ眼中じゃないですか」
ネコトク「まあ、それはそうかも知れないが、書いておく意味も多少あると思いました。ええと、例えば、こういうことを書くと年上の方を全員敵に回すかも知れないが、後世の教科書には、『団塊の世代、新人類世代、バブル世代は日本の資産を食いつぶしてきました。そして、哀れ、そこから下の世代は奈落の底に落ちましたとさ』と載るかも知れない。『バブルの頃はその辺のOLでも海外旅行に何回も行けた。日本はなんと貧しくなったことか!』みたいに嘆いている人もいましたが、それは単なる『資産の食いつぶし』だと思うんだけどね。ゴルフの会員権にしても土地転がしにしても社長なんかも勉強しないでやっていたわけでしょう。つまり、『バブルの頃に(遊ばないで)どれくらいの人がキチンと勉強していたのか』という話にもなりますが」
ミーちゃん「ネコトクさんは教科書にそういう記述を載せたいんですか?」
ネコトク「私の意志の問題では無いですし、後世の方々の方が、私より賢明なわけです。私がこういうことを書く書かないにかかわらず、彼らは私よりも良い判断をします。後世の世界はさらにレベルが上がっているからね。『きっと、よくなる!』の話に繋がる。ただ、先輩方に言いたいのは、死後悪役になる覚悟とかあるのかな、という点ですかね。現状を見てみると、『後は野となれ~』みたいな人が多いのかな、とは思いますが。まあ、戦後教育の影響をモロに受けたリベラル派の人も多いですし、唯物論的価値観からそういうことは気にもされていない、ならば問題ないですが(戦後の価値の転換に付いていけなかった元軍人が暴れた、みたいな話も少しは耳にしたりしますし、多分、日本が貧しかった時代の体験もあるだろうし、背景は理解出来ますが)」
ミーちゃん「脅したいんですか?」
ネコトク「脅しでは無くて、後世からの評価を気にするならば、言動に気をつけた方が良いんじゃないか、という話です。もっとも、個人的には、『そういう私怨めいた話は教科書には載らない』と思います。後世の人はレベルが高いからね。私が裁く必要は無い(ただ、勇気が無い行動は私が裁かれるだろうが)。ただ思うのは、『教科書では無い形で残る』という可能性ですかね」
ミーちゃん「というと?」
ネコトク「つまり、今の世界って、インターネットが出来た後の世界なんですよ、例えば、大きめの地震が起こる旅に、あるコピペとそれに対するカウンターのコピペが定番のように貼られる。仮に、『T鉛筆のSさんのコピペ』としようか」
ミーちゃん「伏せ字になっていませんよ、それは」
ネコトク「多分、100年後にも、あのコピペが使われている可能性がある。なんというか、現状、『都合の悪い情報はインターネットから結構消されている』という部分はあると思います。ただ、個人のローカルフォルダの中身までは消せないし、P2Pのファイル交換ソフトもまだ死んだわけではないらしいしね。逆に残って欲しくない情報ほど残る、かも知れない。いずれにせよ、今はインターネットが出来た後の世界ですからね、何らかの新しい事象は起こるでしょうよ」

■出版文化の終わりは何をもたらすか

ミーちゃん「で、ようやく三つ目の話ですか」
ネコトク「そうだね。今日は二つでやめようと思ったりもしたが、言ってしまおう。要するに、安倍さんが18:00に会見して、その後、19:00にまた会見する、みたいなことをやったりしています」
ミーちゃん「そうですね。最近、安倍さんの会見が多いですね。ただ、行き詰まっている感もやや見受けられますが」
ネコトク「要するに、言いたいのは、『19:00の会見は、18:00の会見に対するネットの反応を見て修正してくる』みたいな話があったらしいんですよ。私も年中ネットに貼り付いているわけにも行かないので、伝聞ですが」
ミーちゃん「まあ、そりゃ、それくらいやるんじゃないですかね。ネットの世論操作もやっているみたいな話ももっぱらですし」
ネコトク「私はね、……何というか、大げさに聞こえるかも知れないが、それに気がついたとき、『ソ連が崩壊した事を知った』くらいの衝撃を受けましたよ。『歴史が動いているな』と思いました」
ミーちゃん「どの辺がですか?」
ネコトク「……うーん、『出版』の話からするか。多分、その方が分かり易い。ミーちゃんに問題」
ミーちゃん「はい、どうぞ」
ネコトク「『出版』は英語で何と言う?」
ミーちゃん「『Kindle ダイレクト・パブリッシング』!」
ネコトク「必殺技じゃないんだから。動詞だと『パブリッシュ』ね。『パブリッシュ』。では、『パブリッシュ』の語源は?」
ミーちゃん「パトラッシュ!」
ネコトク「惜しい!『パブリック』ね。『公(おおやけ)』という意味です」
ミーちゃん「で、それがどうしました?」
ネコトク「例えば、『自分の意見を世に問う』という場合、一昔前だったら、出版する必要があったんですよ。同人文化も、『同人誌(薄い本)』がやはり本流なのですよ。それだけ、『出版に対する憧れ』というものがあったんだと思うけどね」
ミーちゃん「それはそうですね」
ネコトク「今は違うでしょ。インターネットに書き込んだ途端に全世界公開ですよ。つまりさ、『公(おおやけ)』の概念が変わってきた、という話ですよ。『インターネットの言論空間はすでに、公の空間』な訳ですよ。一国の総理大臣もチェックしているわけだし。トランプさんなんかは逆利用していたりもするんでしょうけどね」
ミーちゃん「……トランプさんについては、どこまで本気で喧嘩しているのか分からない部分はありますねえ。ただ、公の空間としては、インターネットの言論空間は罵詈雑言に満ちていませんか?」
ネコトク「そうそう、その通り。それは問題の一つとしてあるし、政治が規制の方向で動いている部分もあるよね。ただ、『自分の意見を世に問うだけだったら、出版する必要は無い』ということですよ。もちろん、旧メディアと呼ばれるラジオ、テレビ、CD、ゲームソフト(物理メディア)なんかは、『出版文化の延長』として考えることも出来るから、その辺の存在意義の前提というのがひっくり返ってきている訳です」
ミーちゃん「……ただ、権威とか、信頼性の問題とかもあるんじゃないですか?……あとは、ビジネスモデルの問題?それにしても、信頼性が無ければ、お金は支払われないと思いますし」
ネコトク「……一つ疑問に思うのは、『最近のメディアの言説で深い知見に満ちた見解』なんてどれくらいの人が読んだことがあるのかな、という点ですかね。もちろん、専門家の意見の紹介やインタビューなどはあるでしょうけど。メディアの中で、『有効な議論』や『生産的な議論』が出来にくくなってきていないか、……いやいや、昔からそんなものだったか、とか、色々思いますね。ここで一つ引用しましょう。『反脆弱性』の著者、ナシーム・ニコラス・タレブさんの最新作である『身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』からの引用だ。この本は痛快なくらい面白いです。毒舌が凄まじい。私の比じゃないですね」

 たとえば、次のことは自明だ。キャス・サンスティーンやリチャード・セイラーのように、私たちをある行動へと誘導(ナッジ)したがる連中は、すぐに物事を〝合理的〟とか〝非合理的〟(または、望ましい手順やあらかじめ決められた手順と食い違うことを指す似たような言葉)と分類する。だが、そうした分類の大部分は、確率論への誤解や一次モデルの薄っぺらい利用に由来している。要するに、一人ひとりの個人を理解すれば集団全体や市場全体が理解できる、個々のアリを理解すればアリのコロニー全体が理解できる、と考えているわけだ。
 この「知的バカ」は現代性の産物であり、少なくとも20世紀中盤から増殖を続け、今や局所的な上限にまで達している。私たちの社会は身銭を切らない連中に乗っ取られてしまっているのだ。大半の国々では、政府の役割は1世紀前と比べて5〜10倍も大きくなった(GDPに対する割合で表現した場合)。知的バカは私たちの生活のあらゆる場所にいるが、いまだ少数派だ。シンクタンク、メディア、大学の社会科学系の学部といった専門化された場所以外では、めったにお目にかかれない。ほとんどの人はまともな仕事に就いているし、知的バカの枠はそう空きが多いわけでもない。だからこそ、知的バカは数が少ない割に大きな影響力を握っているのだ。
 知的バカは『自分の』理解が狭いのかもしれないとは思いもせず、自分の理解できない行動を取る人々を病気に仕立て上げる。ヤツらは人々が自分の最大の利益のために行動するべきだと考えていて、『なおかつ』自分が人々の利益をわかっていると思いこんでいる。とりわけ、相手が〝貧乏白人(レッドネック)〟だったり、イギリスの欧州連合脱退に賛成票を入れた母音の聞き取りづらい階級の人々だったりすれば、なおさらそうだ。
 知的バカは、庶民がその人自身にとって合理的な行動を取ったとしても、自分にとって合理的に見えなければ、「無教養」呼ばわりする。そして、私たちがふつう政治参加と呼んでいるものを、2種類の言葉で呼び分ける。ヤツらの好みに合えば「民主主義」、ヤツらの好みと食い違う投票行動を取れば「ポピュリズム」と。金持ちは納税1ドルにつき1票、もう少し人道的な人間はひとりにつき1票、モンサントはロビイストひとりにつき1票と考えるが、知的バカはアイビー・リーグの学位、または外国のエリート学校や博士号ひとつにつき1票と信じている。ヤツらにとっては、それがクラブへの加入条件なのだ。
 ニーチェはそういうヤツらを「教養俗物」と呼んだ。自分が博識だと思っている中途半端な博識家には、脳手術ができると思っている床屋と同じくらい、気をつけたほうがいい。
 そして、知的バカには詭弁を本能的に嗅ぎ分ける能力もない。

ナシーム・ニコラス・タレブ. 身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質 (Kindle の位置No.2604~). ダイヤモンド社. Kindle 版.

ミーちゃん「……何というか、『ここまで言って良いんですか?』という感じなのですが」
ネコトク「私自身は、これでも、以前よりはかなり穏便になっている訳です。ここまで極論では無い。以前の自分を思い出すと、こんな論調だったな、とは思いますが。もちろん、教養の違いもあって、さすがにタレブさんはキレキレの明白な言語化をしてくるわけだけどね。まあ、ともかく、私はある人の言葉を思い出した」
ミーちゃん「はあ」
ネコトク「2018年に入水自殺されて亡くなった左翼から転向保守になった西部邁という保守思想家がいたのだが、それを思い出したのだが」

西部 高見の見物だ(笑)。オリンピアの神々が遠く(アルーフ)から、「人間どもよ、バカをやっておるな」と見下ろすという意味です。間もなく死にゆく私には、高見の見物をするしかないが、「餓鬼どもよ、けっぱれや(ボーイズ・ビー・アンビシャス)」と言い残して、おさらばだ。

西部邁氏の最後のインタビュー
http://gekkan-nippon.com/?p=12952

ネコトク「私の勝手な洞察をすると、西部さんは、知識人・思想家・言論人、言い方はなんでも良いが、それらに対する賞味期限切れを悟ったのでは無いか、と思った。あとは、『出版(放送)する側が上位世界になっていた』という現実はあると思いますが、インターネットによって、『誰でも神になれる(信者が付くかはともかく)世界』になってしまったからね。もう一回『身銭を切れ』から引用してみようか。まあ、あまりやり過ぎると、Kindleに怒られますが……」

■善の商品化
善をマーケティング戦略として用いることで、善の価値を貶めること。古典的には、善は隠れて行うべきものだった。現代の〝環境を救おう〟的なメッセージはこの原則に反する。善を売る人間は偽善者であることが多い。さらにいえば、勇気や犠牲を伴わず、身銭を切らない善は、善とはいえない。善の商品化は、聖職をお金で買うことができる中世の「聖職売買」や、お金で罪のゆるしを得ることができる「贖宥状」に似ている。

ナシーム・ニコラス・タレブ. 身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質 (Kindle の位置No.5122~). ダイヤモンド社. Kindle 版.

ネコトク「つまり、某コンビニ営業テレビの揶揄という訳でも無くて、いわゆる『業界人』というのは、『聖職者』みたいなものであって、神を仕立て上げて、儲けるわけです。坊主丸儲け、的な?『アイドル(偶像)』にせよ『クリエーター(創造主)』にせよ、『聖職者』の都合上、仕立て上げられる神、的な?ただ、もう、インターネットの時代になり、『神になれるのは特権階級だけでは無くなった』訳です。まあ、VTuberとか見てみると、経営側があちら側の世界の人間だった、違う意味で、みたいな笑って良いのかよく分からない状態の話もありますが……。という訳で、今回の結論ですが、行きますよ」
ミーちゃん「どうぞ」
ネコトク「『公(おおやけ)』の定義がズレてきたことによって、知識人も含めた『出版文化の限界』というものも私は改めて感じるわけです。で、出版のそもそもを辿っていくと、グーテンベルクの活版印刷の発明まで遡ることになる。つまり、ルネサンス時代の14~16世紀あたりからの前提条件がひっくり返る、という訳です」
ミーちゃん「壮大な話になってきましたね」
ネコトク「そうですね。とすると、出版と共にあった人文主義(リベラル)も揺らぐ、それだけではなく、憲法やら民主主義やら国民国家やらも揺らぐ、実際、中国の独裁政権とITの相性の良さ、現在のアメリカの混乱などを見ると、『かなり前提がひっくり返っている』としか言いようがない。果たして、文民統制はどれくらい揺らぐのだろうか。人間中心主義(ヒューマニズム)による人権問題も揺らいでいる。したがって、『宗教的なものの見直し』というのも行われるだろうし、新しい社会構造、というのも必要になるのかも知れない。まあ、私なりの案みたいなのは書く予定ですが、全部解決出来るわけもないしね。出来ることからコツコツとやっていくしかないじゃないですか。まあ、誇大妄想の類いにならないように与太話として笑い飛ばせるくらいの話を書きたい感じですね」
ミーちゃん「ネコトクさんの意識低い系の志はミーちゃんが受け取りました。という訳で、今回はこれくらいですかね。次回もまた気が向いたらよろしくご贔屓のほどをお願いします」

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