息を飲む

夏休みの女子寮には私とエリしか滞在してなかった

寮といってもひとつの同じビル、同じ屋根の下

共有スペースの右手が女子寮

左が男子寮

思春期を過ぎて成人間際の男女の理性と

モラルを分けるのは1台のテレビがあるこの共有スペースだけだった。

エリと私は英語の勉強のために2人でテレビを見ては、男子バスケットボール部のコーチ リッチーに英語の質問をしていた

いつものとおりリッチーと話していると

男子寮入口からその男が洗われた

スティーブ キャスラー

今でも忘れない

カーリーな黒髪

彫刻のような肉体

何より彫りの深い目

クスッと笑うその笑顔

20年経っても忘れることは出来ないこの瞬間

息を呑む、とはこの事だった

彼のあまりのまぶしさに 私は息をするのを忘れていた

彼がこちらを見て微笑む

ハーイ!

エリと私は2人で目を見合わせた

あんなステキな人がアジア人の私に挨拶してくれるなんて

挨拶だけにしておけば良かったのに

どこかの次元でそう思う自分は居るけれど

きっとそれは必然だった


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