見出し画像

荒野の棺桶

Una bara per lo sceriffo / Lone and Angry Man (1965)

 マリオ・カイアーノ監督、アンソニー・ステファン主演のマカロニウエスタン。共演はマカロニ常連のエドゥアルド・ファヤルド、「オーウェルロックの血戦」のルチアーナ・ジリほか。本作に続き監督:カイアーノ、主演:ステファン、撮影:フリオ・オルタス、音楽:フランチェスコ・デ・マージで翌年に制作されたのが「荒野のプロ・ファイター」になります。

 妻を殺した男を捜す保安官(ステファン)が、テキサス・ジョーと名乗ってルーペ(アルマンド・カルヴォ)率いる強盗団に潜入、仇敵を見つけ復讐を果たす物語。

画像1

 以前も書きましたが、ステファンはマカロニ出演数が多いだけに出来・不出来の差が大きい俳優だと思います。人並み以上のいい男ですが、結構のっぺりした薄口の面構えで、演技もさほど上手ではないので、キャラクター設定と演出の腕前次第なところがあるのですが、本作はかなりの当たりだと思います。マカロニ名物の身バレからのリンチ後のステファンは、血まみれメイクの効果もありますが、「やっちまえ!」と応援したくなる演技をみせてくれます。ガンファイトも緊迫感があってかっこいい。オルタスの撮り方もまたいいんですよねえ。

 尊大で冷酷なボス役が定番のファヤルドが、珍しく野獣系の悪党を演じているのも本作の特長ですね。ツンデレ娘のジリをかどわかして挑みかかるシーンはなかなかのゲスっぷり。こういう汚れ演技もできるんだなあ。さすが。

 原題は「保安官の棺桶」。劇中の道具として棺桶は出てこないのですが、ラストで主人公が馬の水桶に保安官バッジを捨てるところから、このタイトルになっているんですね。すごくいいシーンなだけに、その後でマカロニ名物の飲んだくれじいさん(ヘスス・トルデシリャス)がしゃしゃり出てくるのは要らないかなあ。

 ピーター・テヴィスが歌う主題歌。以前書いた「私的マカロニウエスタン主題歌16選」には挙げていなかったですが、この曲もめっちゃかっこいいです。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?