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マッドストーン

Stone (1974)

 オーストラリアのバイク・アクション映画。「マッドマックス」の原型と言われているようですがまるで違いまして、「爆走!ヘルズ・エンジェルス」や「ワイルド・エンジェル」、もっと言えば「ワンダラーズ」あたりの青春不良映画に連なる作品だと思います。ヘルズ・エンジェルズのシドニー支部が制作に協力しているようです。

 もう映画としてはてんでダメダメでして、ストーリーは意味不明だわカメラワークは下手っくそだわ編集は学生映画並みだわ音楽はダサイわ、いいところがありません。シドニーの街を牛耳んとする闇組織が、国際的テロリスト(ゴルゴ的な)まで雇って複数の暴走族グループを仲違いさせようと画策……しているようなのですが、はっきり言って目的はよくわかりませんし、それは脚本的にはどーでもいいみたい。連続バイカー殺人事件を追うストーン刑事(ケン・ショーター)が、“葬式屋”(サンディ・ハーバット/制作・脚本・監督兼)率いる暴走族『墓堀り軍団』に潜入し、友情を深めていくのがメインのストーリーとなります。

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 が、そのくだりもまたグダッグダしてまして、バイク乗ってビール飲んでハッパ吸って女とヤッてバーで暴れて……を、実に緊張感なく描いています。おそらく、意外と街の人気者だったりする暴走族の日常をドキュメンタリー的に撮りたかったんじゃないかな、と思うのですが、とにかくダラダラしていてとりとめがない。刑事には美人の奥さんだか彼女だかがいて、モデルをやっているらしくハイソな生活ぶりが描かれるのですが、ストーリーには当然関係ありません。深読みをすれば、モデルのセレブ生活と暴走族のワイルドライフを描くことで、結局どっちもあんまり変わんねえんだぞ、と言いたいようにも思うのですが、そうだとすればまったく成功していません。

 とは言え、カワサキZ1を中心とするバイクがたくさん登場するのは、バイク乗りとしてはやっぱり胸が騒ぎますね。ハーレー・ダビッドソンも多少出てきますが(おそらくハーレーに乗ってるのは本物のヘルズ・エンジェルスじゃないかと)、ビキニカウルをつけたZ1のかっこよさが圧倒的です。バイクの儀式的なエンジンスタートを丹念に映したタイトルバックも実にかっこいい。シールド部分がガバッと大きくあいていて、チンガードが細いフルフェイスヘルメットもかっこいいんだよなあ。

 もう1つの見どころは、のちに「マッドマックス」に出演する俳優が『墓堀り軍団』のメンバー役で出ていること。“ガマ蛙”役のヒュー・キース=バーン(トーカッター)はひと目でわかりますが、“死神”役のヴィンセント・ギル(ナイトライダー)、“スケこまし”役のロジャー・ワード(フィフィ隊長)は調べないとさすがにわからなかったです。

 意味不明なストーリーだけど、雰囲気はそこそこあって、とにかくバイク(だけ)がかっこいい点は、H本S平氏の初期作品に通じるものがあるかも。

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