燕は飛んでいく【無職放浪記・エジプト編(12)】
アブ・シンベルという街には、神殿と湖以外に観光的な場所はない。本当に何もない。
中心地と思わしき場所には商店や飲食店が軒を連ねているが、端から端まで数分で歩けてしまう程度の狭い範囲だ。あとは住宅街が迷路のように広がっている。
にも関わらず私がこの街に2泊することを決めたのは、流れる空気ののんびりさに惹かれたからだ。
観光地と言っても、観光客のほとんどが日帰りでアスワンに帰ってしまうため宿泊客は滅多にいない。そのためか、ギザやルクソールのように強引な客引きに出会うこと