短編小説|ロスト・アーモンド no.6
やはりどうしても気になってしまい、帰宅してからもチョコレートのパッケージを取り出して、眺めてみる。
かくれんぼを終えて、籐の椅子の上で毛繕いをするロクが不思議そうに僕を見つめている。
パッケージを眺めながら、チョコレートを一つ口に運び、齧ってみる。
カリッと音が鳴り、口の中でチョコは豊潤に溶け出す。その音を聞いたロクは耳をピクリと動かした後、籐の椅子から飛び降りて、僕の足元にまとわりつく。
「ロク、いくら君からのお願いでも、猫にチョコは食べさせられないよ」
僕が言うと、ロクは足元から少し離れて丸くなる。
この件に関して、僕は考えすぎなのだろうか。
手早く夕食を済ませ、ロクを膝に抱いてぼんやりと過ごす。あまり気になるようなら明治製菓のサポートセンターに問い合わせれば良いのだ。
でも考えてみれば、それもおかしな話で、僕の疑問なんてただのクレームにしか聞こえない。
パッケージや商品名が可笑しいなんて言われても、企画会議で決定した事なのでと言われれば、それまでなのだ。
もう考えるのは良そう。僕はこのチョコレートが好きだ。そこにいったい何の問題があるというのか。
ロクは僕の膝から離れ、籐の椅子の足元で丸まる。
彼は一瞬僕に目を合わせはしたたが、すぐにその目を逸らし、退屈そうに目を閉じる。まるで僕に呆れてしまったみたいだった。
よろしければサポートお願いします! しがない物書き活動の減資として大切に使わせていただきます。 m(__)m