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「偶発的学習理論」のクランボルツについて考える

 クランボルツの幼稚園時代にアランという友人がいたそうですが、転校で会えなくなったのだそうです。数年後、クランボルツが自転車で近所を探検していたところ偶然、家の庭で遊ぶアランを発見、再び遊び仲間となります。彼らは卓球が好きだったようですが、12歳になってからアランのお姉さんが誕生日にもらったテニスラケットを借りてテニスをするようになり、彼らは高校で代表選手になるくらいテニスをやりこみます。
 クランボルツはその後、大学に進学しますが2年の終わりの専攻決めができず、大学の呼び出しを喰らいます。締切ギリギリでテニスのコーチに相談したところ、実はテニスのコーチは心理学の教授でもあり心理学を勧められます。そしてクランボルツは心理学者になります。(このお話はLuck is No Accident(日本語版:その幸運は偶然ではないんです!)という本の中に出てきます。そもそもこの書名も、共著者のレヴィンの奥さんがレストランに掲げられていた額から思いついたのだとか。)
 クランボルツはこうした出会いや運に可能性を感じ、標準化されたテストへの依存を嫌っていたそうです。

 クランボルツは1999年に「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を発表しています。要約すれば、
・ キャリアにおける偶然の出来事を軽視せず、むしろ積極的に取り込み、よりよいキャリア形成に活用することを提案
・ すなわち過去の「偶然による成功」を聴取し、新たな偶然への参加を促し、偶然による成功確率が上がるような行動を促す
・ 好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心の5つのスキルが重要である
という感じでしょうか。
 さらに2009年には「計画的」という単語を落として「偶発的学習理論(Happenstance Learning Theory)」を発表します。偶発的学習理論の4つの提案として
(1)キャリアカウンセリングのゴールは、クライエントがより満足できるキャリアと私生活を達成するために行動することを学ぶことを手助けすることである
(2)アセスメントは、個人的な特徴を職業適性とマッチさせるのではなく、学習を刺激するために用いられる
(3)クライエントは、有益な「計画されていなかったイベント」を生成するための方法として冒険的行動をすることを学ぶ
(4)カウンセリングの成功は、カウンセリングセッションの外にある現実世界においてクライエントが遂行したことによって評価される
、とカウンセリングの目標と評価方法を明記しています。
 また偶発的学習理論のカウンセリングの具体的な一連の流れとして、
1 クライエントの期待により添う
2 スタート地点としてクライエントの懸念を明確化
 活気を感じたアクティビティ(活動・行動)を教えてください
 活気に満ちたアクティビティはどうやって見つけましたか
3 行動のもととなる、計画されていないイベントでの過去の成功体験
 その影響されたイベントになぜ(どうやって)参加しましたか
 どうやって可能性を認識しましたか
 イベントの後、それを利用するために何をしましたか
 学んだ新しいスキルは何ですか
 キーとなる人物にどうやってコンタクトしましたか
 他の人たちはあなたの興味やスキルから何を学びましたか
 今どのような類似した行動を取ることができますか
4 潜在的な可能性を見つけるためにクライエントを敏感にする
  起こって欲しいと思っているイベントを教えてください
  好ましいイベントを増やすためにどう振る舞うことができますか
  もしあなたが行動すれば、人生はどう変わりますか
  もしあなたが何もしなければ、人生はどう変わりますか
5 行動を妨害するものに打ち勝つ
  何を信じることで、本当にやりたいことを止めていますか
  何を信じることで、望むことに近づく行動の第一歩になりますか
  何を信じることで、第一歩を踏み出すことを止めていますか
  適切な行動を取れば、どんな満足した人生を得られますか
  我々が次回会うまでにどんな行動を取りますか
  いつまでに行動のレポートを私にメールしてくれますか
6 カウンセリングの結果の評価
という流れが具体的に紹介されています。

【実践家向け】クランボルツ(1928-2019)のキャリアカウンセリング - YouTube

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