見出し画像

クラムの「メンタリング理論」について考える

 メンタリング理論を提唱するキャシー・クラムはボストン大学の教員で、プロティアンキャリアで知られるホールの同僚に当たります。
 クラムは、キャリア発達を促進する人間関係としてメンタリング行動を重視しており、メンタリング行動にはキャリア的機能と心理社会的機能があるとしました。キャリア的機能とは、仕事のコツや組織の内部事情を教えることで組織内での昇進への備えを促すような行動を指し、上位の者としての経験や組織内における相応のランク、組織的な影響力があって初めて発揮される、とします。心理社会的機能とは、専門家としてのコンピテンス、アイデンティティの明確さ、有効性を高めるような導きを指し、相互の信頼と親密さを増すような対人関係によって生まれる、とします(労働政策研究・研修機構編, 2016)。
 クラムはまた、メンタリング行動を通じてメンターのほうも利益を得るとし、その理由に以下の3点を挙げます。
①自分の過去を再評価することが中年期の中心的な発達課題であること
②他人を支援することを通じて、精神的な満足感や教師ないしはアドバイザーとしての自分の能力に対する尊敬を獲得すること
③キャリア初期において自ら経験したことの無いような難問に直面するヤングアダルトに関わりながら、自分の過去を見直し再評価することができること
 またクラムは同じ大学のホールとの共同研究から、キャリアを取り巻く社会背景が従来の伝統的なもの(安定的で均一な組織)から変動的なもの(不安定なキャリア)に変化したことで、メンタリング関係も変化していることを指摘します。従来の組織的・階層的なメンタリングが、より複雑かつ多層的あるいは対話的またはネットワーク的なメンタリングへと変化したとします。例えば変化の激しい時代、今までは今までは直属の上司や同僚に相談すれば解決していたものが、別の職場や別の会社の人にも相談していく必要が出てくるかもしれません。ネットやIT関係であれば若者(後輩)のほうが詳しいかもしれません。労働者が活用すべき資源が自社内から広く社会や世界全体に広がってきていると言えるかもしれません。
 ネット社会を含め、もっと自分の所属する社会以外についても勉強していかないとなあ。noteとかfacebookとかyoutubeとか、どう付き合っていけばいいんでしょうかねえ。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?