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にぼし3匹の呪い

祖母は意地が悪かった。
母はかなり嫁いびりをされたので、いつまでも根に持っている。
そりゃ夫の母なんてまったくなーんの関係もないアカの他人をいきなり「お義母さん」だとは無理があるんだよ。
よその気に食わない女とひとつ屋根の下で暮らしてごらん。精神が苛まれ、一時も落ち着ける時間もなく、イライラし、憎しみと恨み辛みで発狂寸前になるのではないだろうか。
母が料理を作ると祖母は見てない隙にぶちゃって(捨てて)いたそうだ。さて、昨日の残りの肉じゃがでも食べようかと探すと「おれがはあ(もう)ぶちゃった。」と祖母がのうのうとぬかしやがったそうだ。
「人のやることが全部気に入らねぇんだ。あのババァは。あたしが何か作ると生臭くて食えねぇとぬかしやがって。炒飯のどこが生臭ぇんだよ。それがひとが見てないと手づかみで食ってるんだぜ。なんてババァなんだよ。」母は心底嫌だったという。
そんな祖母の作る料理は激まずだった。
ほとんどの料理が酸っぱかった。
なぜか。
祖母は新しく作った煮物に何日も残っていた煮物を入れていた。
しかし何日も放置されていた煮物なので腐りかかっている。
だがババアは躊躇なく出来たての煮物に腐りかけの煮物をたすのだ。酸っぱいのは饐えているんである。
そして母がいつまでも忘れられないババアのクソまず料理の極めつけは味噌汁だ。
ババアは5人分の味噌汁を鍋に作る時、出汁としてにぼしを3匹しか入れなかったのだそうだ。出汁か?なんかのまじないか?その鍋の大きさになんでにぼしが3匹なんだよ。ふざけんなよ。と思ったが口をだすと祖母が気が狂ったように怒り出すので黙って食卓に味噌汁を出した。
祖父は無言で味噌汁に味の素を振りかけていた。
やがて母と父は祖母の底意地の悪さ、性悪さに耐えられなくなり、きのこ小屋を改造して住居にして祖父母と別居した。
母は料理は上手かった。何しろ調理師免許を持っているんである。
それで出汁を本格的にかつお節や昆布からとると手間とコストがかかって赤字になるので大量に作るときは業務用のだしの素じゃねぇと旨味が効かねぇと言っていた。
だがな、5人前の味噌汁ににぼし3匹とはいくらなんでも嫌がらせだ。
ババアのくそまずい汁を食わずにすむようになってよかったと言った。

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