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淡淡《あわあわ》した魚

冬、よく母は鱈ちりを作った。
鱈ちりというよりは白菜、えのき、ねぎ、豆腐などの鍋に鱈を加えて、それぞれが麺つゆに薬味のねぎを入れて食べる、という鍋物だった。家ではポン酢という物を使わなかった。母は酸味のある物が好みではなかったらしい。
それなので鍋用の器に各自3倍濃縮の麺つゆに野菜や鱈を取り入れ、少し鍋の湯を入れ薄めて口に入れる、という鍋だった。
鱈はうまい…と魚好きの私は夢中になった。
しかし、白身魚の宿命かな、味が淡白なんですね。
食べても食べても淡白だからいくらでもいけてしまう。
鱈を言葉で表現するなら淡淡あわあわしたような味だな、と子供の頃思っていた。
何かの本で作家が北陸の鱈の味について書いていて「淡淡した」という言葉を使っていて、やはり鱈を表現するなら「淡淡」と言いますか、と得心した。
しんしんと真っ白い雪が降りしきる夜、宿を出て、ちょっとした小料理屋なんかで鱈ちりを…みたいなシチュエーションが旅情を誘いたまらなく鱈が愛おしくなる。
ホイル焼きにした物をいつかどこかで食べた。塩気のきいた鱈に薄切りの玉ねぎ、えのきにレモンの輪切りが添えられていた。
レモンの酸味が効いてそれはそれで目先が変わって良かった。ヘルシーという感じ。
ひかえめ。胃にもたれない。優しい。
鱈が好きだー。


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