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猫おやじ🐾噂ばなし18

ミケちゃんは財布片手に買い物かごをさげてスナック蛾を飛び出しました。
猛ダッシュで乾物屋にむかいます。
商店街の乾物屋は主に酒のつまみ類やかつお節や昆布や煮干しを専門に扱う店です。
商店街の中程にあります。
夕時の商店街はお惣菜の特売セールの呼び声で賑やかでした。
学校帰りの子や仕事帰りにおかずを調達するひとで活気があります。
肉屋や惣菜屋では閉店前でお惣菜が値引きになるのでお得なのです。
ミケちゃんは煮魚の甘辛い煮汁やコロッケの美味しそうな匂いに後ろ髪をひかれながら乾物屋のドアを押しました。
「いらっしゃ〜いませ。」
かすれ声のおじさんがカウンターで雑誌を読みながら店番をしています。
「おじさん。こんばんは。」
「おや、ミケちゃん。仕入れかな?」
おじさんとミケちゃんは顔なじみです。
たまにおじさんは試供品のスナック菓子をくれたりしてミケちゃんにとっては親切なおじさんです。
「新商品でササミスティックっていうのが入ったよ。グラスにさして出したらオシャレじゃないかね。」
「いいわね。いつもおんなじつまみじゃ新鮮味がないもんね。それとサラミとチータラとアーモンドフィッシュと…。」
ミケちゃんは買い出しメモを取り出して読み上げました。「あとまたたびチョコと、またたびキャラメルと…。」
ふんふんとうなずきながら、おじさんは棚から商品を取りカウンターに並べます。
「ママが休みの間に店のおつまみほとんど食いつくしてたのよ!まったくもう。あわてたわー。」
ミケちゃんはホッとひと息つきました。
おじさんはサービスの冷たいコーン茶をだしてくれました。
こうばしくておいしいトウモロコシのお茶です。
「そういえばミケちゃん。最近死神が出没してるらしいって噂きいたかい?」
おじさんがミケちゃんの顔を覗き込むようにして言いました。
「えっ?なに?死神?」
ミケちゃんは何のことだかわかりません。
「昔、この辺は死神がよく出たんだ。若い人が前触れなく死んでな。それは死神の仕業だと言われたもんだった。死神はぼんやりした灰色の毛色をしてるんだ。」
「灰色の?」
「そうさ。灰色のねこに魅入られた者は必ず死ぬって騒ぎになったもんさ。最近、その死神みたいな毛色のねこがまたこの界隈を荒らしてるって噂だ。」
「ねぇ。おじさんその噂はどこから?」
「うーん。どこだったかなあ。どっかの飲み屋のお客さんがつまみを仕入れに来て話してたんだ。」
「酒場界隈での噂なのね。」
「まあね。」おじさんはミケちゃんの買い物かごに品をおさめてくれながら頷きました。
ミケちゃんは何かの手がかりになりそうだと感じました。
灰色のねこと死神。これいかに。
「何十年も前に死神に取り憑かれて一家のほとんど死んだ者もいるよ。あいつら死神は気がつくとこっちの近くにいて、人間を観察してるんだ。いやな者だ。ミケちゃんも気をつけな。」
おじさんは試供品のささみスティックを二袋おまけにくれました。
ミケちゃんはお礼を言って乾物屋からでましたが、先程聞いた死神の話が頭から離れません。まさか…?こねこちゃんのお父さんの奥さんも死神に?もんもんする頭を振りミケちゃんはスナック蛾へと足を早めて歩きました。

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