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あなたの好き嫌いはなんですか?第21回

泉はスマホで尾上病院の面会時間を調べた。13時から17時までとあった。
午後からなのね…。
気持ちがはやってしまったが自分だけ焦っても仕方ない。
でも異常事態なのだから。
瀕死の病人だったら面会時間にあわせなくても会えるんじゃない?
だって死に目に会えないと家族は困るから。私は困らないけどね。むしろ、死んでから会ったほうがいい…。
いや、本当は死んだお母さんに会うのも耐えられないかもしれない。
はあ、泉は大きくため息をついた。
この後に及んでまだ私の気持ちはグラついている。
子供の頃の強迫神経症の切迫感を思い出す。
洗っても、洗っても落ちないけがれ。
忘れたくても記憶にこびりついた嫌悪感。
それに続く罪悪感。
母の存在そのものが忌まわしかった。
お母さん。
あなたはいつまで私の心に居座るつもり?

泉は始業時間を待って勤務先の会社に休む旨の連絡した。
理由は母の急病ということにした。
それすら、空々しい気がした。
ああ、まだ何もしていないのに疲れた。
でも、本当に疲れるのはこれからだ。

高崎駅に降り立つと、時刻はまだ10時を少しまわったばかり。
高崎駅は地元の駅より規模が大きく華やかで都会的だった。やっぱり新幹線が停まる駅は賑やかで盛ってるなあ。
ああ、病院にすぐ行くとしても、面会時間外で断られたらどうしようか。
やっぱりお父ちゃんによく相談してからの方がよかったんじゃない?
また私はおっちょこちょいをやってるんじゃない?
泉は自問自答しながら改札を出た。
だめね。時間をつぶそう。
泉は駅ビルをブラブラ見て回ることにした。駅ビルの中にはユニクロやスターバックス、100円ショップ、雑貨、無印良品など見てるだけで楽しい店がいっぱいだ。
泉はお菓子ランドという店舗に目を留めた。
あっ。お菓子が安い。
店に入ってみると色んなお菓子がこれでもか!と売られている。
駄菓子の品揃えもいい。
わあ、駄菓子かあ。
泉は駄菓子に夢中になり小さなカゴに20円のチョコ入りマシュマロやプリンのグミやチョコを入れていった。
さくらんぼ餅!これ好き。あんず棒も甘酸っぱくて好きなんだよね。
パンダクッキーメロン味だって。かわいい。
泉はしばし我を忘れて買い物をした。
20円や30円のお菓子をあれこれ選び、ビニール袋にいっぱいに買ったらなんとなく心の毒が少し抜けたような気がした。
そうだ。
ついでにこの辺でお昼ごはん食べてから行けば13時からの面会時間にちょうどいいじゃない。
はあ、そうだ。そうしよう。
気持ちにゆとりができてきた。
朝は食べなかったから、空腹で考えが悲観的になっていたのかもしれない。
まずは何か食べなければ…。

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