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ミミズクと夜の王


YouTubeでよく歌を聴く、DAZBEEさんという歌手がいる。
彼女の歌声は流行りのポップスも似合うが、なにより少しエキゾチックで個性的な伸びやかな歌がぴったり似合う。

そのDAZBEEさんがsasakure.UKという、これまた大好きな作曲家とコラボし、この「ミミズクと夜の王」という小説の15周年記念の年にイメージソングとして作り上げたのが「mimizuqu」だ。
もともと歌手と作曲家どちらものファンで、小説のことは知らなかった。ただその音楽がグサッと刺さって、原作を知れば尚のこと深く理解できるのではないかと探しに出かけた。






物語は「ミミズク」と名乗る少女が森の中をさまよう所から始まる。大きな月が浮かぶ夜、木の上にいる何者かと目が合う。その瞳はまるで月が二つこちらを見つめているようだった。

ストーリーの大筋は「ミミズクという少女が森で夜の王に出会う」。その出会いによって何もかもが変化してゆき、ミミズクは"人間として"成長してゆく。
愛のかたちは人によって様々で、直接「好き」だとか「愛している」だとか言う人もあれば、そんな言葉はおくびにも出さないのに深く愛されていると分かる人もいる。
言葉を操る"魔物"と"人間"、言葉が通じるのに諍いの絶えないもの。
長年停滞していた関係が、ひとつの異分子によって転機を迎える。わかりやすいストーリーなだけに、手を止めることなくさっくり読み終えることが出来た。

最近涙脆くなってきているのは実感しているが、この小説にも泣かされた。
ミミズクと夜の王の関係、人の王とその部下や王子の関係。愛と括るには複雑すぎる感情に呑まれて、すっかりこの小説のファンになってしまった。続編もあるらしい、じゃあいつかそれも読もう。

となるともう一度mimizuquを聴いてみれば、また違った発見があるかもしれない。
チャリチャリとした鎖の音や、歌詞に出てくる"赤"。月を見ていた──月が見ていた──こんなにもふんだんに小説の世界観が落とし込まれていたなんて!
私一人で再生回数を伸ばしている自信がある、それほど聴き込んで、背景の音にまで集中して、やっぱりこの歌は私に刺さって抜けないと確信する。
同時に小説も、私に刺さって抜けない杭の1本になった。この杭は増えれば増えるほど楽しい。

梅雨に入り外出が億劫になる時期、せっかくですからこれを理由に図書館にでも顔を出して、手に取ってみてはいかがでしょう。

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