Unravel Future第0回アーカイブ-NOIZが公開している2つのダイアグラムの分析とアップデートの提案-
※このアーカイブは、ND3Mメンバー独自の解釈によるものです。一部内容に不正確な表現や、誤りを含む可能性があります。
はじめに
「Unravel Future」とは、名古屋周辺の建築学生が主体となり、①「建築と異分野の融合」を軸とし過去から未来へ時間軸を横断して研究・思考・議論、②アイデアコンペ,エキシビジョン,実作,実務に渡るまで、デジタルデザインの分野から制作活動,ワークショップを行うチーム「ND3M(Nagoya Digital Design Developer Meeting)」が主催する研究型プロジェクト。
この企画の中では、noiz architectsが取り扱っている「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」の2つのダイアグラムを分析していく。
画像はNOIZのHPより引用
第0回目「Pre Meeting」として、ダイアグラムの中の「矢印」「キーワード」に着目し、関連した話題の書籍やWEB記事からの発見を共有。テーマを絞らず、幅広くメンバーの興味関心を拾い上げ、第1回からの本ミーティングに繋げた。
メンバーそれぞれが話題にあげた文献からのリサーチ
文献リスト
『建築情報学会準備会議』
『人は明日どう生きるのか 未来像の更新』南条史生
『都市5.0 未来都市を「実装」するために』 葉村真樹
『WIRED vol.33 デジタルツインへようこそ』
『Society5.0 人間中心の超スマート社会』日立東大ラボ
今回は第0回目ということで、ざっくばらんに語った。
(今回は本当にざっくばらんとしてます。)
まずは、それぞれが議題を提供するところから。
議題
①「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」の図で、DigitalTwin⇄PhysicalWorldのAction/Senseの矢印の向きや意味について
②ヒューマンセンタードに関して
③国ごとに違うデジタルツインの在り方について
④次回からの方針
①「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」の図で、DigitalTwin⇄PhysicalWorldのAction/Senseの矢印の向きや意味について
画像はNOIZのHPより引用
阿部「2枚目CommonGroundの図で,DigitalTwin⇄PhysicalWorldのAction/Senseの矢印の向きって上下同じだけど、これは逆になる場合はあるのだろうか。また、ActionとSenseをどういう意味で使っているのだろうか。」
近藤「まず、DIGITALTWINからPHYSICALCITYへはsense、PHYSICALSITYからDIGITALTWINへはactionとなっているけれども、DIGITALTWINからPHYSICALCITYへのactionはないのかどうかということですね。」
阿部「そうです。初音ミクのライブを例にあげると、デジタルエージェントの初音ミクが歌って踊って、我々に影響を及ぼしている。そういう存在はDIGITALTWINからPHYSICALCITYへのactionではないのでしょうか。」
松本「でも、それはあくまでフィジカルシティ同士がデジタルを介してつながっているだけで、デジタルツインではない気がします。むしろ、左下の”DIGITAL AGENT”からのinteractionなのではないでしょうか。でも、Amazonのレコメンドのようなものはデジタルツインを介したアクションのような気もしてきますよね。だって、フィジカルな人の選好をデータとして吸い上げ、さらに製品のデータとマッチングし、今あなたが欲しいのはこれでしょ?ってあたかもすごい優秀な執事みたく提供してくれる。機械学習やディープラーニングで出された結果かも知れないけど、端からみるとそこで判断が起きて、フィジカルワールドにアクションが起きている。こんな状態がDIGITAL TWINじゃないかなと思ってます。」
中島「actionに関して、自律的か否かという視点は深める余地がありそうですね。この矢印は作成者の意図しているものなのでしょうか。どういった意図があるのか、今後ダイアグラム分析をしていく上で気になる点だと僕は思いました。」
②ヒューマンセンタードに関して
松本「デジタルツインの話をするときにヒューマンセンタードの話が要であると僕は思います。例えば、阿部君のレジュメにあったエアコンの話。こういうテクニカルな話よりも、「人間が幸せかどうか」とか「人間の位置づけ」をしっかりと考えるべきというところに論点をシフトしたいです。
阿部のレジュメより
Digital World ≒ Digital Twin ≒ サイバー空間
「サイバー空間とは,計算機の中の空間を意味しており,実社会から集めたデータから問題を分析して対策を立てる場である.~その実態はネットワークで継がれた多くのコンピュータである.」
「"Society5.0"においてサイバー空間というとき,それは単に大量のデータをやり取りする空間のことだけではなく,問題の分析や問題の解決策の立案のために実社会のモデルが計算機の中に作られていく空間という意味も含まれる.」
「たとえばエアコンのサイバー空間では,部屋のモデルは部屋の大きさ,実内数箇所の室温,人の位置,などでできているだろう」.
(日立東大ラボ『Society5.0 人間中心の超スマート社会』p15-17)
阿部「僕のレジュメにはのっけてないけど、この本には書いてあります。本のタイトルにも人間中心とありますので。」
池本「いずれにしても、今後、ダイアグラム分析する中でテクニカルな話だけではなく、ヒューマンセンタードについてしっかり触れる必要があるのではないでしょうか。」
③国ごとに違うデジタルツインの在り方について
松本「ところで皆さん、世界の中でも一番、デジタルツインについて先行しているといわれている国はどこだと思いますか?実はエストニアなんです。」
松本「エストニアでは個人IDを使って全て国管理でのプラットフォームでやり取りできて、ログも取られています。それを国が管理しているという状態がすごい。一企業主導ではなくて、国がやっている。利権の問題も解決されるのではないでしょうか。しかしこれが正解というわけではないです。国が管理するのかどうかは比較政治学にあるような政治体制によってもそれぞれ違うと考えてます。もちろんこの政治体制や市民の意識は国の成り立ちが違うところから来ているのかもしれないですね。例えばエストニアは長い間ソ連だったこともあり、ITの普及と同時に独立しました。どうせならITしちゃおうと(笑)こんな具合に中国モデルやアメリカモデル、北欧モデルなど比較政治学に基づいて分類してみると面白いかも知れません。」
田住「そもそもデジタルツインとは、に戻るけど、今既に結構進んでるんじゃないかと思っています。実際今も色んな自分のデータがある。具現化されていないだけでデータ自体の分身はすでにいるのでは。例えばGoogleのLocation履歴とか行動履歴とか、あのようなデータがサーバー上にあってマップに落とし込めるということはすでにデジタルツインな世界に分身がいると考えてもいいと思います。。また、ミラーワールドで国家というものはなくなって1つになるのか、と言われると疑問は残ります。というのも先の比較政治でみると国家ごとに体制も異なるし、国民の意識も異なる。この壁はかなり大きいと思います。その点も踏まえると、フィジカルな問題とデジタルな問題は変わらないのではないでしょうか。」
④次回からの方針
田住「そろそろ次回からの方針に移りましょう。今回の企画では『Diagram for Expanded Dimension of Architecture』『物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド』の2つのダイアグラムについて取り扱うとありましたが、今日の議論の中では『物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド』の方を中心に話が進んでいった気がします。まずはこのダイアグラムの方の分析からはじめましょうか。」
中島「僕は概念的なことよりもまず、デジタルツインが実際にどのように実践されているかについてまず事例を知り共有するところから始めるべきだと思います。この国はすごいとかこの企業はすごいとか、そういったプラットフォームを調べ、このダイアグラム(『物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド』)の中に、フィジカルシティからデジタルツイン側にインタラクションするデバイスは何かとか、そういうのをどんどん書き込んでいったらよいのではないでしょうか。」
松本「また、今日の議論の中で僕はヒューマンセンタードの話を出しましたが、『ホモ・デウス』(ユヴァル・ノア・ハラリ)を課題図書にしましょう。」
次回:第1回(4/23)
ダイアグラム分析「DIGITALTWIN⇔PHYSICALCITY」
「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」の図中にある「DIGITALTWIN⇔PHYSICALCITY」に着目する。デジタルツインの事例を、官民問わず、ダイアグラムに対応させて事例集める。その中でも実現しているプラットフォームを調べる、図中に書き込んでいくことで、ダイアグラムを理解する。
読書会テーマ「社会的な背景、歴史的な背景を知る」
時代ごとの経済状況や戦争、疫病など社会的/歴史的背景から技術史や美術史の変遷をたどる。
*課題図書候補*
ホモデウス、サピエンス全史、銃・病原菌・鉄、暗号解読(サイモンシン)
口紅から機関車まで、美術の物語、日本美術の歴史,レトロハッカーズ入門
第1回アーカイブはこちら
では次回もお会いしましょう。
文責:池本
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?