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大人の社会科見学vol.1! FATTORIA DA SASINO(ワイン醸造所)

おうちにいながら弘前の事業者を楽しく美味しく応援するプロジェクト「ヒロサキ大人の社会科見学」。第1回は、イタリアンレストランの料理人に自家製チーズや生ハム職人、農家、そしてワイン醸造家...とオールラウンドに活躍し弘前の食そしてワイン産業を牽引する笹森通彰さんに、ワイナリー「FATTORIA DA SASINO」をご案内いただきました。
(社会科見学レポートの公開順が前後してしまったことをお詫びいたしますm(__)m)

笹森さんのこれまでのご活躍や、緊急事態宣言下でどのようにレストラン運営をしていらしたのか等、こちらの記事もあわせてご覧ください。

イベント概要

日時:5/2(土)14:00~15:00(オンライン開催)
    -ワイン、シードルのご紹介
    -ワイン醸造所、ブドウ畑見学ツアー
    -質問コーナー、雑談など

当日はNCL弘前のワインプロジェクトメンバーとして活動し、笹森さんの元でぶどうやワインづくりを研修中の永田さんが進行を担当。普段は一般の方の見学は行なっていないという、笹森さんのぶどう畑や醸造所をナビゲートしてくれました!


FATTORIA DA SASINOができるまで

笹森さんは東京・イタリアのレストランでの修行を終え、2003年に故郷・弘前にレストラン「OSTERIA ENOTECA DA SASINO」をオープン。料理に使う野菜やハム、チーズなども自分でつくっていらっしゃいます。それらをアテに自分がつくったワインで晩酌をしたい!という思いが、そもそものワインづくりのきっかけだったと言います。

2005年にワイン用ぶどうを栽培しはじめた当初は趣味のような感覚だったそう。醸造免許を取得するには「年間最低6000Lのワインを製造する」と法で定められた基準も、笹森さんの畑の規模では満たせず…。そんな時に新聞で目にしたのが「どぶろく特区」というもの。自分で育てた作物を自分で醸造し、自分の経営するレストランや民宿で提供する場合に限り醸造免許が認められる制度を利用し、「ハウスワイン特区を作りましょう!」と笹森さん自ら弘前市に掛け合います。市がハウスワイン特区として認められワインの醸造免許が下りたのは2010年のことでした。

前例がない中で、免許取得のために色々な書類を用意して関係各所からの協力をもらったそうで、免許を取ること自体がはじめに苦労したことだと言います。資金的余裕もなく、元実家を改装して小さな醸造所をスタート。この頃はつくる量も増え、大きなタンクの置き場や保管場所等の確保が大変とのこと。「ぶどう栽培とかワインづくりにも当然苦労はあったけれど、それはもう最初から折込済みなので。」と語る笹森さんの、理想のワインづくりのために工夫を凝らし苦労を惜しまない姿勢は、一本芯の通った大人として、とても格好良く映りました。

ぶどうからワインになるまで

笹森さんのぶどう畑は、津軽のシンボル・岩木山を望む素晴らしいロケーション。ワイナリーにすぐ隣接したところや周辺に畑があり、ぶどうを植えている畑の面積は1.3ha。山間にも2haもの広い畑を確保しているそう。現在の主力は5品種で、イタリア原産のネッビオーロ、アルベーラ、そして白ワイン品種のマルヴァジア、メルロー、シャルドネなどを植えています。「実家があり、畑も田んぼもあったから、弘前(でワインをつくること)は必然的な選択でした」と笹森さん。

圃場に雪がまだ少し残っている時期に剪定、新しい苗木は(2019年の場合は)5月中旬に植樹。5月下旬に芽が出て細い花を咲かせたぶどうは6・7月の梅雨時期に受粉を行います。その後実をつけたぶどうは7月末になるとだいぶ大きくなり葉も繁り、8月中旬頃から次第に色づきます。9月の後半あたりから、甘く成熟したぶどうを収穫し、醸造へ。

ワイン製造工程2.001

まずは収穫したぶどうの痛んだ粒を一つ一つ手で摘み取ります。ここがサスィーノ一番の肝。最も時間と手間をかける工程です。それからぶどうの枝や茎を取り除き、ぶどうを潰します(①)。
その後、白ワインの場合は圧搾してジュースにし(②)、タンクに入れたら発酵開始(③)。醸造過程で糖度の55%がアルコールに変わるので、例えば糖度20度のぶどうだとアルコール分が11%のワインが仕上がります。発酵が終わったタンクは底にオリや酵母が沈んでいるため、上澄みだけをポンプで吸い上げて(④)瓶詰めしたら、白ワインの出来上がり!
赤ワインの場合は、枝を取って潰しただけのぶどうをタンク内で発酵させます(①→③)。そうすることで皮の色が赤ワインの色に、種や皮から出るタンニンは渋味となるのです。発酵が終わってからプレスして皮や種を除去、木の樽で貯蔵し熟成させます。その後オリ引きし(⑤→④)、瓶詰めすれば赤ワインの完成!ただし、瓶詰め後にもう半年〜1年ほど熟成させてからリリースしているとのこと。

ワインの製造工程を教えていただいた後は、醸造所の中を案内していただきました。非常にコンパクトなスペースに必要な機械や樽などがみっちりと設置されている様子に、参加者のみなさんもびっくり。広さはなんと約8〜10畳!貯蔵庫も約10畳ほどのスペースとのことで、笹森さん曰く「たぶん日本一小さなワイナリーだと思います。普段見学を行なっていないのは、あんまりちっちゃくて恥ずかしいっていうのもあります(笑)」

Q&A

つくり手である笹森さんから、ワインそれぞれの品種や特徴をご説明していただき、参加者の方の質問に直接お答えいただく時間も。お寄せいただいた質問をいくつかご紹介します。

Q. ラベルが素敵ですが、これはどういったデザインですか?
A. シャルドネのラベルはイタリアの古い料理本の挿絵を使いました。ラベルの右上、オリジナル版では城が描かれているのを岩木山にアレンジしました。白黒だった絵をアルバイトさんに綺麗に色づけしてもらってデザインしたラベルです。また、ネッビオーロ・マルヴァジアのラベルはサソリが特徴的ですが、愛車のクラシックカーのエンブレムを少しオマージュしたものになります。

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↑右から2018年のネッビオーロと2018年のビアンコ。

Q. ワインづくりはどちらで学んだのですか?
A. イタリアにいたころ蔵に遊びに行っていましたが、イタリアでも日本でも実際にワインづくりを学んだことはなく、ほぼ独学に近いです。これまで失敗や苦労は様々ありますが、今年で10年目。ネッビオーロなどは特に非常に満足いくものができていると思います。

Q. 弘前とイタリア系品種の相性はいかがですか?
A. 最初実験畑に11種類のぶどうを植えて、どれが弘前でもいけるか実験しました。寒さに不向きな品種もあり、自分がかなり好きだったイタリアのサンジョベーゼなどは成績が振るわず断念しました。今残っているフランス品種のシャルドネとメルローは国際的な品種で、どこに植えてもある程度のワインができます。うちでも全然問題なくいいぶどうが採れています。ネッビオーロとアルベーラはイタリア・ピエモンテ州原産。トリノオリンピックが開催された雪の降る寒冷地のぶどうなので弘前とも相性がいいです。特にネッビオーロは非常にいい品種で、弘前に向いていると思います。

おわりに

イベントの最後に、今後のワインづくりについて笹森さんの意気込みをお聞きしました。
「今はネッビオーロをかなり増やしておりまして、収量は2015年が1000本、2016年で600本、2017年はかなり難しく収量が300本、2018年で600本。2019年のワインは現在熟成中で、樽に入っているものをボトルにすれば3000本できあがります。今後どんどんネッビオーロを増やしていって質も高めて、『弘前=ネッビオーロの産地』のような産地形成をできればなと思っておりますので、皆様引き続きご協力、応援のほどよろしくお願いいたします。」

自分がほしいと思ったものを突き詰めてつくっていくことが、巡り巡ってだれかの喜びや豊かな時間につながるのかもしれない、と感じました。とことん挑戦する笹森さんの姿に「自分もやってみたい!」と続く方はきっとたくさんいるのだろうなと思います。今年の実りの季節を楽しみにしつつ、私たちも実りある日々を送るためにこつこつと努力を積み重ねてゆけたらな、と思うのでした。


◎LINK
・OSTERIA ENOTECA DA SASINO 公式HP
http://dasasino.com
・ワインを楽しく学ぶ「ひろさきわいん塾」(ワインPJ永田さん)の情報はこちら!
https://www.facebook.com/hirosakiwinejyuku/




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