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介護日記2#33母とバイオリン

看護小規模多機能で宿泊し、自宅に帰ってくる時には施設での様子を報告してもらう。

最近、時によっては起床後覚醒出来ず食事が取れない事があるとの事。もちろん覚醒するまで待ち、その後なんとか摂取出来てはいるそうだ。

そうかと思えば朝から食事はもちろんスムーズだし、饒舌で挨拶や普通の会話が出来る日もあるようだ。


自宅でもそうだ。

しっかり覚醒し全量休まず食べれる時もあれば、こんこんと眠り続けている事も。

また最初はしっかり食べれていたのに5分後には瞼が重くなり食べ物を口に入れたまま無反応になる事も。

そんな時途中でまた覚醒し、また食べ始める事もあれば、口に含んだままだったのをごくりと飲み込んだと思ったらまた無反応になってしまったり。


前の様に笑ったり、話したりできていた頃のような日々はなかなか巡り合えなくなってきた。

仕方がないとは思っている。

認知症は進行するし、年齢も重ねる。

しかし母は日々穏やかだし、昔から拒否もないので介護もやりやすい。

それは施設のスタッフからも。

「いつも癒されてます」と。


まだ今より意識がはっきりとしている時間が多かった時に、送迎車に乗り込もうとするタイミングで私は母に「これから施設に泊まりだから、お風呂入って来てまた帰ってきてね」と言ったのだが、

その後に母が私に言った言葉が忘れられない。

「あなたが良い様に」

ありがとうと送迎車を見送りながら思わず手を合わせた。

私の事を案じてくれているのだと思う。

あれから随分時間がたった様な気がするが、僅か1年程度。

1日1日を大切に私も家族も母も。



先日は私が小学生だった頃、学校から帰宅するとよく母が練習していたバイオリンの曲、ユモレスクをYouTubeで聞かせた。

母は…目がキラキラとしていた。

「わかる?昔よく練習していたユモレスクだよ」と伝えるとこくんと頷いて聞いていた。


当時小学生の私にとって、母のぎこちないギコギコと人様には到底聞かせられない程酷い音でのバイオリンの練習はかなり苦痛でしかない思い出なのだが。

母にとっては働き始めて念願のバイオリンを購入し、個人レッスンに通う夢物語の大切な思い出だったのだから。

忘れる筈がない。

音楽の記憶はずっと残る。

素晴らしい時間。

音楽が母の趣味で本当に良かったと思う。

読んでくださってありがとうございます

今日も明日も良いことがありますように(紫陽花)

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