見出し画像

真夜中読書倶楽部 2024年7月

これはJ-WAVEで毎週火曜日の深夜に放送中のラジオ「BEFORE DAWN」の人気コーナー「真夜中読書倶楽部」で紹介された推薦図書の記録です。

私が読んだ本には感想や備忘録を付けています。


7/3 デザートはあなた/森瑤子

「オイルサーディン丼」と走り書きをしている。きっと、作り方が載っていて、自分も真似して食べてみようと思ったんだろう。書き留めておかないと、繋ぎ止めておかないと、日々を忘れていく。思い出さないと、忘れていく。ずっと、繰り返し思い出してきたことしか残らないような気がする。

7/10 幸福御礼/林真理子

7/17 ピアニシモ/辻仁成

Kindleもない。Amazonでは中古本しかない初期作品。
紹介で初めて知ったのだけど、作家活動の名義は「つじ・ひとなり」で点々が二つの「辻」で映画監督・音楽家活動の名義は「つじ・じんせい」で点が一つの「辻󠄀󠄀󠄀」なのだそうだ。今度、ジャケットを見てみようと思う。

 辻さんの初期作品は「救済」がテーマなのだそう。

燃え殻さんが読んだことがあると挙げていた本のメモ。

クラウディ
特に好き。初めて小説を書くときに参考にした、と言っていた。

旅人の木

海峡の光
主人公が悲しい、つらいときに女の人が人生の中でふと救いの手を差し伸べてくれる感じがする。辻さん独特の文体がある、と言っていた。

7/24 なんだか今日もダメみたい/竹中 直人

真夜中読書倶楽部の会員からは「竹中さんを好きになる本」と紹介された。
挿絵はご本人によるもの、挿画は奈良美智さん。

燃え殻さんは大好きなエッセイとしてこちらも紹介してくれた。

少々おむづかりのご様子 /竹中直人
好きな人のこととかを思いついた順に書いてある、楽しくて面白くて優しい本。一緒に読むといいかも。何十年も前の竹中さんと今の竹中さんを、と。

7/31 夜明けのすべて/瀬尾まいこ

七月最後の放送では、「けもの」の青羊(あめ)さんがゲストとして番組に出演してくれた。紹介してくれたのは、入院時に電子書籍で読んでいたというこの本。瀬尾まいこさんの本は、3月にも他の会員から紹介されていた。

燃え殻さんは小説は未読だけど、映画は観たと言っていた。
ああ、「映像の人」なのだなと思った。燃え殻さんの小説もエッセイも、その情景が頭の中で映像化するから、絵や写真、動画でも燃え殻さんの世界を表現してほしいと思う私は欲張りだろうか。求めずに願うだけならいいか。

8月末に燃え殻さんの「これはただの夏」が文庫化して発売される。

この小説のタイトルは、けものの楽曲「ただの夏」から名付けられた。
タイトルというか、燃え殻さんがこの曲をライブで聴いたのがきっかけでこの小説が書かれたというから、小説と音楽とで物語が繋がって、想いが循環する感じがした。ゆったりとした音楽が、水底から空を見上げるみたいな気持ちになる。「海、行きたいね」と言う声と少しの塩素臭が鼻先を掠める。

そして、循環は続く。
今後は青羊さんが小説「これはただの夏」にインスパイアされて作ったという、けものの新曲「新しい誕生日」を番組で初公開してくれた。
発売まではタイムフリーで。

大関との屋上のシーン、私も好きだ。
完璧には揃わない不完全なままの幸せのようで。
その時を過去として振り返って、「ああ、あの時は幸せだった」と気づくような、二度と戻れないあの瞬間が眩しい。読後、そんな気持ちになる。

鍋島推薦図書

ラジオで読んでもらえるようなメッセージの書き方がわからない。
何度も投稿してはいるけど(番組ステッカープレゼントの時は何かしら必ず送っている。欲しい!)紹介しにくい文面なのかもしれない。
読み上げられた他の人を真似すると、自分がしっくりこなくていつも我流の書き方をしているから(我が強い)

読後にポジティブになれる小説を紹介したい。
いま私の中で一番アツい小説家、佐原ひかりさんの4冊。

私はいわゆる「青春」に対してものすごく憧れが強いけれど、現実は時間を取り戻すことはできないから、創作物の中で自分の魂を泳がせることで「これが青春!」と擬似体験を楽しむのが大好きだ(本物の青春を知らないから、どのみち勝手な妄想に過ぎないので、それなら思いっきり楽しむ)
この4冊はいずれもそうした物語の楽しみ方ができるので、お気に入り。
Twitterでも何度か投稿している。好きだから。

ブラザーズ・ブラジャー

ペーパー・リリイ

私は作中に登場する食べ物を実際に作って楽しんだりもしている。
以前、作者の佐原先生がTwitterのSpaceでペパリリの「蜜造パイナポー」もブラブラの「ミントゼリー」も想像のみで描写したと話してくれた。

どうりで、ミントゼリー(ゼラチン)は崩れてしまうわけだ。
それならばと寒天で作ると、ミントの風味は閉じ込められて広がらない。
それに、私は安易にペパーミントリキュールで翡翠色を出したから酔っ払ってしまった(アルコール度数25%)

「ミントゼリーは、ため息が出るほど美しかった。

翡翠を溶かしたような、透きとおった角切りのゼリーが、光を閉じ込めて揺れている。
口に入れた瞬間、爽やかなミントの香りが口いっぱいに広がった。さっぱりして、食後にぴったりだ。

ブラザーズ・ブラジャー p.164

想像の中にしか存在しない食べ物。自分がいるこの世界と見た目はよく似ているけれど、別世界なのだと現実にかえる瞬間だ(とても大事)

人間みたいに生きている

「食べる」ということは、生き物として当たり前という共通認識の社会の中で、食べることが苦痛の主人公の少女・唯は孤独感を抱いている。自分だけが他の人と違う、他の人には普通にできることができない、他の人にとっては嬉しいことが自分は嫌だという感覚は他者と関わることを困難にする。
そんな中で吸血鬼だと噂の泉と出会う。泉は「食べられない」大人だった。

私と同じ人がいた!と親近感を覚える身勝手さを私は何度かやらかしてきた実体験がある。同じだけど、同じじゃない。私達は別々の人間だから。

この物語の好きなところは、最初から最後まで唯も泉も食べられるようにはならないところだ。物語というのは、最初と最後の間に起きる様々な出来事を主人公が経験していくことで成長していく(できなかったことができるようになる)姿を描くことにあると思う。
この作品も同様で、唯も泉さんも登場時と結末とでは成長している。

その成長とは、食べられない自分を受け容れることだと思った。
他の人は普通にできることができない自分を劣等感や嫌悪感で責めるのではなく、「この自分」で生きていくことの覚悟を決められたことだと思った。

この世界に「みんな」なんていない。そう思った。

鳥と港

自分の心を言葉にして贈るための手紙が書きたくなる作品。
私はこの物語をイメージした封筒、便箋、シール、スタンプ、ペンを使って作者にファンレターを書いた。ネタバレを気にせず、この本を読んで私はどう感じたか、どう思ったか、どこが好きかを書き綴って出版社に送った。
その想いは、出版社、編集者、作者の元に届く。

「手紙」を軸に人間同士の繋がりが絡まり合うのだけど、私はこの物語に登場する人たちがその絡まりを投げ出さないところが大好きだ。
人それぞれ色々あるけど、放り出さない、切り捨てない誠実さがある。

現実の私の周りの人間関係では、多少の絡まりなら立ち止まってほぐそうとするけれど、きつく絡まり合って塊が大きくなると切られてしまう。
凧や釣りみたいだなと思ったことがある。
何かに引っかかってしまったら、中断して一先ず糸を断ち切るでしょう?
そして、新しい凧を結びつけたり、釣り針を付け替えたりして再開する。
その後で、引っかかってしまった凧や釣り針を回収に行くような人はどれくらいいるのだろうか?
私の人間関係は交換可能なものがほとんどだったから、絡まってすぐに解きほぐすことができなかったら、それきりになる。
「もういい」と置いてかれることが多い。そして、忘れ去られていく。

私は自分の友人に「あなたは地球に来たばかりの宇宙人」「人恋しい食人鬼」と例えられたことがある。この例えを自分でも好んで使っているけれど、要するに「追いかけてしまう」のだ。切り離されて、置いてかれたことを理解できずに。「何度捨てても戻ってくる呪いの人形」とかでもいい気がする。

私もまた別の意味で「人間みたいに生きている」のかなと思ったりして。
話がまとまらなくなってしまった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?