採用担当者が博士に求める資質を検討してみた
どうも、ひろりんです。博士号を取った後に、企業で研究者をしています。
それと、同時に10年以上企業の技術面接官を担当しています。最終的には全事業部の推薦の学生を審査していました。
それなりの規模の会社です。
先日Twitter上で博士にアンケート取ったら、企業研究者を目指す人が多かった。N数は少ないが、これを正として採用担当者として博士に求める資質を検討してみようと思う。
その前に、まず、非常に本質的なことだが
「修士と博士の採用の違いがありますか?」
この問いに答えれる経営者はほぼいない。
つまり経営戦略上での博士の立ち位置というものがない。
従って、採用方針にも修士と博士の違いは無いと言ってよい。
そこで、採用担当者としての自分が、経営戦略を踏まえて博士に求める資質を検討しようと思う。私は研究職でもあるので、私の意見は現場とも一致する。
しかし、これはあくまで1企業の1個人としての戦略であって、博士そのものの社会的地位等を定義するものではない。では、行ってみよう。
結論から先に言うと、博士に最も求められる資質はなにか?
深い専門性?それは違う。専門性は企業でも鍛えられる。
論文を書く能力?それも、違う。論文書く能力の可否は気にしない。
即戦力になる?それも、違う3年長く研究してるから当たり前だ。
研究テーマを自分で立ち上げる?結構近い。
答えは、博士課程に進んだ時点で決まっている。
それは、博士課程という、人と違うレールを自ら選んだ、主体性だ。
研究室の雰囲気等もあるが、大なり小なり博士課程に進むことは、大多数の行動原理から離れている。そしてそれを自分で選んでいる。
さらに、民間企業という、所謂、普通の人生に戻ろうとしているのは興味深い。つまり必要な資質は博士課程に進んだ時点である程度持っている。
追加すると、主体性は経団連が学生に求める学生の資質とも一致している。
資質を見極める詳細は、あとにして、主体性のある人材に何を経営上期待しようか?
経営戦略は基本的には下記のようなアンゾフのマトリクスで考える。
そして、その実行の殆どが、1,2,3の分野だ。
博士には4番目の多角化の高リスク、高リターンの分野を担ってもらおう。
すぐにではない、5年後、10年後に。
会社を既存の組織から新しいものに変えてもらいたい。
では、その主体性に量的に求めるものは何か?ここで勝負が決まってくる。
まず、修士+3年程度の能力では意味がない。社会人と変わらない。
論文や学会発表だけが評価軸ではない。
必要なのは
まずは、圧倒的な行動力。
1つの分野に造詣が深いが、他の領域にも興味がある。
誰とでもすぐに人間関係を築けるコミュニケーション力。
そして、それらが形となって表れてくるものは何か?
簡単なところでは、学部と院で専攻が違うのは興味深い。
もう少し求めると
研究費を自分で取ってきている人材。
起業経験がある人材。
これぐらいしてくれると、博士と経営戦略がマッチする。
経営のリソース配分としては2:8ぐらいだろう。
2が博士で、8は修士。
この様に、博士の立ち位置を明確にすると、その人材が少ないのがよく分かる。
博士が少ないのではない、真の研究者が不足している。
余談だが、経団連が主体性を求めているのはよく分かる。身も蓋もない話だが、主体性というものは会社で鍛えることが出来ない。専門性や資格などはいくらでも会社で鍛えることができる。従って、会社で鍛えられない資質が上位に上がる。
これは、雇用の流動性が無い、日本社会の特徴かもしれない。流動性、つまり、すぐに解雇することができれば、専門性を優先するかもしれない。
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