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<5> 少しの違いがあっただけ/少しの違いがあったこそ

言い過ぎたかもしれない。
相手の立場も考えずに。

同じ方向を見ているものだと思っていたけど
ちょっとずつずれていることに気づかなかった。

ずっと同じだと思っていた。
そう信じたかっただけかもしれない。

立場が変わった。
彼が上司になり、ボクは部下になった。

そのことについて、悔しいとは思わない。
彼はそれを望み、ボクはそれを望まなかっただけだ。

協力していたつもりだったし、実際していた。
まかせられていると思っていた。

しかし、物理的な距離は
やがて、心理的な距離も伴ってきた。

自由を奪われた。そう思った。

自由に振る舞っているように見えるのが
気に入らない人がいた。

昔からそりの合わない上司。
上っ面だけの付き合い。相思相嫌。

おそらく、お互いが一番大切にしていることが
真逆なのだろう。

ボクは、やることはそつなくこなしていたが
すべてに従うことはしなかった。


押し付けられた。そう思った。

求めた時には与えられず、
不要な時に送り込まれる。

直属の上司である彼に聞いてみた。
「どういうことか?どういう意図があるのか?」

「知らない。自分も先日聞いたばかりだ。」

「疑問に思わないのか?」

「思わない。上司の命令だから、それに従うだけだ。」

共通の敵だと思っていたが
そうではなかった。

いや、そうだったかもしれないが
立場がそうさせたかもしれない。

彼は、従うことを選び
ボクは、従わないことを選んだ。

ただそれだけ。
どっちがいいとか、悪いとかではない。

もうすぐ僕らは違う道を歩む。

もしかしたら、同じ方向を見ていたからではなく、
違う方向を見ていたからこそ、交わったのかもしれない。

少しの違いがあっただけ
少しの違いがあったこそ

ボクらは、出会い
そして、離れる










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