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れいぞうこ(「みんな みんな いいこ」より)

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くいしんぼうの くまのクーちゃん 
おやついっぱいを食べたいの。

だけど ママはいつも 
「これだけね」
お皿に ちょっぴり。

くいしんぼうのくまのクーちゃん 
おやつをいつでも食べたいの。

だけど ママはいつも
「3時になったらね」


ある日 クーちゃんは ママのおるすに 
用意されたおやつ 食べちゃってから
冷蔵庫をのぞきます。

あるぞ、あるぞ、おいしそうなもの。

キイチゴジャムに ハチミツに  
ステキに美味しい ママの作ったアップルパイ。

くいしんぼのクーちゃん ちょっぴりだけ、つまみぐい。

ママは気づきません

つぎのおるすばんも そのつぎも
くいしんぼのクーちゃん 
ちょっぴり ちょっぴりつまみぐい。

でもその ちょっぴりが 
だんだん 大きな「ちょっぴり」になります。

だけど ある日のこと。

クーちゃんの ママが
さあておやつの時間だわ、
クーちゃん一緒に たべましょうって 

冷蔵庫開けたら あららたいへん

どうして こんなに からっぽなの?

クーちゃんは ドキドキ かくして あわてて言います。

「きっと 冷蔵庫がたべちゃったんだよ、ママ」


「ふううん それじゃあ しかたないね。
 3時のおやつは なしにしましょう。
 困った冷蔵庫さんだこと。」


ママにはおこられずにすんだけど、
クーちゃんは そのあと 大変な目にあっちゃうんだ。

ホッとしたクーちゃん 
今度はほんとに ちょっぴりだけって
冷蔵庫を 開けた時 

おこった冷蔵庫が
「ひとのせいにするなんて なんて子だ!」

キャンディーにのばした クーちゃんの手を
中からグイグイひっぱった。

「わー、ママ~助けて!!」


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お話つくるのが大好きな カヨちゃん先生、
マサエ先生がご用の日、みんながおねだりしたら
こんなお話をしてくれた。
作りかけなんだけどなぁって言いながら。

みんなは きゃあきゃあ言って喜んだし
その後 カヨちゃん先生と一緒に 
いろんな 続きのお話を作って遊んだよ。

すぐに ごめんなさいして許してもらうっていうのが タカくん
ママが変身して戦ってくれるのは ミサちゃん
アッくんなんか 冷蔵庫の中で冒険する話を作ってくれた。

楽しかった。
楽しかったんだけど……

事件は 次の次の日おきたんだ。


☆  ☆  ☆


かかとの高い靴をカツカツいわせ、きれいに巻いた髪の毛をブルブル振って、マユカちゃんのママが 幼稚園にやってきた。
マユカちゃんの手をしっかり握って。

そういえば マユカちゃん、昨日 お休みだったっけ。


園長先生が どうそあちらのお部屋でお話しうかがいます って言っても

──ここで 結構ですっ 

先生たちのお部屋の入り口で 立ったまま。 

カヨちゃん先生が呼ばれ、マサエ先生も慌ててやって来た。


話は こういうこと。
カヨちゃん先生の「つくり話」を聞いてから、マユカちゃんが「冷蔵庫がこわい」って泣くんだって。眠れないんだって。

イタズラにこどもをおどかし フアンをあたえるような
そんな お話をするなんて なんてこと。


カヨちゃん先生はシュンとするし マサエ先生はペコペコする。

園長先生が マユカちゃんとお話しようと思っても
マユカちゃんママは、お構いなしに 考えてきたことを 言い続けてる。

マユカちゃんは ずうっと 下を向いている。


マユカちゃんのママのお話が ますます 長くなりそうな時だった。

たっちゃん先生 ダンスのスッテプ踏みながら やって来た。

「あれれ、マユカちゃん……」

入ってくるなり たっちゃん先生 マユカちゃんに声をかけた。

マユカちゃんママがギロリと睨む。

たっちゃん先生は ペコリと頭を下げて 自分の机に ご用をしに行った。
たっちゃん先生は マユカちゃんの顔を 横目で ずっと、見ていたよ。

マユカちゃんママの きれいな巻き髪でも 口紅の似合う よく動くお口でもなく もちろん 素敵なお洋服でもなく 
その後ろで 下を向いたままの マユカちゃんを見ていたよ。

パタン、パタン、机の引き出しを 音たてて閉め たっちゃん先生が立ち上がった。マユカちゃんママの後ろを通り過ぎ お部屋を出て行った。

あれれ、マユカちゃんの手を引いて たっちゃん先生どこ行くの?

──何するんですっ、これ以上子どもを傷つけるようなこと 言ったりしたら……

気がついたマユカちゃんママが 怖い顔して追いかけてくる。
マサエ先生たちも 心配顔で ついて来た。

「きゅうとうしつ」
おうちの台所みたいなお部屋には 流し、食器棚 ポット、そして おおきな銀色の冷蔵庫。

たっちゃん先生とマユカちゃんが 大きな銀色冷蔵庫見ながら
何か お話している。

マユカちゃんママが入っていこうとしたら 園長先生が止めた。

「少しだけ 待ってください」

たっちゃん先生、銀色冷蔵庫、開けてるよ。

マユカちゃん? マユカちゃん……覗き込んだ!

たっちゃん先生、冷蔵庫の中に何か話しかけてるよ。

マユカちゃん? マユカちゃんも 何か言ったよ。

笑ってるよ、笑ってる。ふたりニコニコしながら出てきたよ。

何がなんだか訳わかんないって感じのマユカちゃんママに たっちゃん先生が言ったんだ。マユカちゃんの背中を ぽんって押しながら。

「マユカちゃん、おかあさんに お話することがあるんですよ」

マユカちゃんの笑顔がちょっとひっこんで、たっちゃん先生の顔を見上げた。

「ほら、冷蔵庫の親分との約束! マユカちゃん。」
マユカちゃんは スカートの横でギュっとグーをにぎると
ママに言ったんだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい ママ、 勝手にチョコレート食べたの。

 ママに内緒でキャンディー食べたの。ごめんなさい、ごめんなさい。」

ママのきれいなお洋服にぐしょぐしょ涙と鼻水つけて マユカちゃんは しゃくりあげて泣いた。

ママは最初びっくり顔だったけど、マユカちゃんの背中をよしよしって
さすってくれた。


「カヨちゃん先生~、新しいお話、できたぁ?!」
アッくんが 廊下をバタバタ走ってくる。

「今日は 先生、冷蔵庫のお話の続きをするんだって。くまのクーちゃん ママに ごめんなさいして 冷蔵庫さんと仲直りする話……でしたっけ?」

たっちゃん先生が カヨちゃん先生の方を笑いながら見て言った。
カヨちゃん先生、
「そ、そう、そう、そうです そうでしたです!」

慌てて 言った。言葉 変だよ、カヨちゃん先生。


たっちゃん先生は フンフン「冷蔵庫の歌」歌いながら
お玄関まで歩いていくと 

おーし、外で思いっきり遊ぶぞぉ

気合を入れて 走って行った。


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