桜じいさんの話(「公園の童話」より)
その公園には、年寄りの それは立派な 桜の木があります。
花の頃になると、電車や車に乗って、遠くの町からも たくさん人がやって来て、 思い思いに 写真を撮ったり お弁当を広げたりします。
隣に植えられた若い桜は、そんな人々の桜を見上げる時の表情を見ると、 桜であることを誇らしく思うのでした。
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若い桜がその か細い枝にやっと、かたい芽を少しつけた時、一人の老人が うつむいたまま通り過ぎました。
「桜じいさん、私には よく 解らない。もうすぐつぼみがふくらむのに