ブラックホールの解像度を50%向上!史上最高解像度の観測技術を達成
宇宙の観測技術が飛躍的な進化を遂げました。
アメリカ航空宇宙局のジェット推進研究所(NASA-JPL)らはこのほど、地球上からブラックホールを撮影する「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」という観測技術において、史上最高の解像度を達成したと発表。
これは高周波の宇宙からの電波を検出する技術が達成されたということであり、特定の天体の撮影はまだされていません。
しかし、この技術を用いることで、これまでに撮影されたブラックホールの解像度を最大50%も向上させられるとのことです。
研究の詳細は2024年8月27日付で科学雑誌『The Astronomical Journal』に掲載されています。
参考文献
Event Horizon Telescope Makes Highest-Resolution Black Hole Detections from Earth
https://www.cfa.harvard.edu/news/event-horizon-telescope-makes-highest-resolution-black-hole-detections-earth
元論文
First Very Long Baseline Interferometry Detections at 870 μm
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ad5bdb
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
地球を巨大な望遠鏡にする「EHTプロジェクト」
イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope:EHT)は、地球上の各地に配置された電波望遠鏡を組み合わせて、仮想的な地球サイズの望遠鏡として使う観測技術のことです。
複数の電波望遠鏡を一つに集約させることで非常に高い感度と解像度を実現し、遠く離れた天体を観測することができます。
特に主な観測対象としているのは、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*(いてざエー・スター)」や、地球から約5500万光年離れた楕円銀河「M87」の中心にある超大質量ブラックホールです。
実際に2019年には、EHTプロジェクトによりM87の中心にあるブラックホールの撮影に史上初めて成功し、大きな話題を集めました。
それがこちらの画像。
ただこのときの画像は波長1.3ミリの周波数230GHz(ギガヘルツ)で観測されたもので、まだまだ解像度が低く、実際の姿よりもぼんやりと写されていました。
例えるなら、視力が低いので、対象物がぼや〜と広がって見えているようなものです。
研究者によると、EHTの解像度をさらにアップさせるには2つの方法しかないといいます。
1つは「望遠鏡のサイズ自体を大きくすること」です。
しかしEHTはすでに地球サイズに達しており、人間の力で地球を大きくすることは無理なので、この案は現実的でありません。
そこでもう1つの「周波数を高くすること」が最良の選択肢となります。
研究主任の一人で、NASA-JPLの天体物理学者アレクサンダー・レイモンド(Alexander Raymond)氏は「波長0.87ミリの周波数345GHzで観測すれば、画像はより鮮明なものとなり、これまでの観測では見られなかったブラックホールの構造が明らかにできるでしょう」と話します。
チームはEHTでこのレベルの観測が可能かどうかをテストしました。
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