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僕には愛犬がいました
犬種はビーグル
名前は百合亜(ユリア)

20代の頃、一人暮らしをしている時に飼い出しました
当時は社宅だったため、休憩時間の度に様子を見に帰っていました

子犬の頃です
ひとりにさせる時間を長くすることには抵抗がありました

休日に隣町に住んでいいる実家に連れて帰り
次の休みの日まで両親に百合亜の面倒をみてもらえないかとお願いしました

成犬になるまではその方が良いだろうと思ったのです

両親も快く引き受けてくれて
僕が連日仕事の時は実家に
休日になったら引き取りに行って一緒に過ごす生活になりました

当然ですが
両親にとっても懐いたのです

気がつけば実家の子になりました

当時、両親の仲がギクシャクしていることを感じていました
それが百合亜がいることで改善されていったのです

休みの日に実家で百合亜に会い
離れ際に伝えていました
「父ちゃんと母ちゃんを頼むね!」と…

その後、心理カウンセラーの師匠に
「うちに来ないか?」と声をかけていただき
生まれ育った関東から大阪にある本部に行くことを決めました

両親のことが心配でしたが愛犬がいるから大丈夫だと思えたのです

それから僕は師匠が全国を飛び回ることについてまわる役割をもらいました
東京に出張で来る際は帰りがけに両親と愛犬に会いに実家に立ち寄りました

母曰く
僕が実家の最寄駅に到着した時間くらいから愛犬は玄関に行き待っていると言うのです

僕の帰る時間を伝えているわけではないのにです

大阪に移り住み10年が経ち結婚することになりました

夫婦ともに30代後半になり
子宝にはなかなか恵まれなかったのですが
百合亜が孫がわりになっていました

あの時、両親に預けることにして本当に良かったと思うのです

その後
今から8年前のGWの頃、妻が入院することになりました
時を同じくして愛犬が倒れました

散歩中に突然動けなくなったのです
脳幹に異常があり、ずっと目が回っている状態とのこと
医者からは安楽死も考えてくださいと言われたというのです

母から言われました
「あなたが飼い主なのよ。どうするか自分で決めて!」

大阪では妻が入院していて
実家では百合亜が倒れている

どうすればよいか迷いました

程なくして百合亜は薬が効いてきて、なんとか歩けるところまで回復してくれたのです

とっても優しい子です
僕が妻の元に居れるようにしてくれたのだと思います

それから2週間後に妻が退院しました

母に「退院したから来週には会いに帰るからね!」と伝えた
翌日、百合亜は息を引き取りました

急いで実家に帰り愛犬に伝えました
「ごめんね!ごめんね!ずっと会いに来れなくてごめんね!でもやっぱり優しいね!奥さんが退院するのを待ってくれてたんだね。ありがとう…ありがとう…」

僕は悲しかったけど、それ以上に感謝の気持ちで一杯でした

しかし、両親は孫を失ったかのような落ち込み方でした
心理カウンセラーをやっていると色んなお話を聞きます

大切なことの喪失体験はとてつもないストレスです
時には生きる気力を奪ってしまうこともあります

何か生きる希望を見つけて欲しいと思いました
孫を見せてあげることができたら…

でも40を目の前にしている僕たち夫婦は孫を見せてあげることは難しいと感じていました

僕ができることは心理カウンセラーとして培ってきたこと
どんな話も受け止めて聴くことに徹しました
毎週、両親の話を聴くことに努めました

前向きに考えることを進めることもなく
ありのままの気持ちを受け止めました

心理学者カール・ロジャースは
「変えようとするな、まずわかろうとせよ」と言いました
どんな悲しみ、苦しみを感じていても、その事から抜け出せるように変えらるよりも、人はわかって欲しいのだと

でも正直、キツかったです
両親の気持ちが伝わってくることが切なかったです

だけど、家族を癒してくれた百合亜が教えてくれたのです
どんな時も変わらず側にいることの大切さを


百合亜が旅立ってから数ヶ月が経った頃
出張中の僕に妻からの電話
「赤ちゃんができたかも…」

妻のお腹に命が宿ったのです

僕は百合亜が連れてきてくれたのだと勝手に信じました
だって、このことで両親が元気になってくれたのですから

予定日は6月初旬、高齢で初産なのでもっと遅れることが予想されていました

百合亜の命日5/15に母と電話で話しました
「一年経ったね。さみしいけどきっとあの子は母ちゃんと父ちゃんが笑って過ごしていることを願っているよ!それにもうすぐ孫が生まれるんだよ。じいちゃんとばあちゃんが元気でいてくれないと僕たちも困るからね!」と

母は「そうだね。クヨクヨしてたら百合亜に笑われちゃうね!大丈夫だよ。私たちも頑張るから!」と言ってくれました

その日の夜中に妻は破水しました
翌日、予定日よりずっと早かったですが息子が無事に産まれてくれました

百合亜の命日の翌日が息子の誕生日になりました

僕はどうしても百合亜からもらった命のバトンだと思えて仕方ないのです

犬は安産の守り神とも言われていますよね
妻は分娩台に乗ってから15分で出産しました

そして息子が一番最初に覚えた言葉は
「わんわん」だったのです

これを単なる偶然とは言えないと思うのです

シンクロニシティ

意味ある偶然だと思っています

心理学ではシンクロニシティが起きる時は
何かに気付くためのメッセージとも言われています

僕は愛犬と息子の存在から
人生に起きる全ての出来事の意味を考えることの重要性を感じました

嬉しいことも、悲しいことも、楽しいことも、辛いことも
ただ一つ一つの出来事として感じるだけではなく
自分の人生にとっての意味があると受け止めると
全てが無駄ではないと心から思えるようになりました

今日は息子の誕生です
百合亜の命日と息子の誕生日を迎えるたびに
命の尊さを感じています



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