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売り手殺しのミステリィというジャンル

 こんにちは、名雪七湯です。

 今回は日記調に、ミステリーという特異なジャンルについて思ったことを書き連ねる、ゆるーい記事になります。

 本を紹介するに際し、一番手古摺るミステリーというジャンル。

 理由は簡単で、犯人が書けないからです。

 ミステリーの中で一番大切な要素である謎解きについて書けない。あらすじは書くことができますが、それも詳しく書きすぎるとネタバレに繋がる。

 もちろん、ミステリ作品でも謎解きに加えてテーマやキャラを魅力にしているものも多いです。例えば、松村 涼哉さんの『15歳のテロリスト』だと、少年法というテーマを扱い、その是非が問われます。最近話題になった、メフィスト賞の『法廷遊戯』(五十嵐律人)では冤罪が扱われます。

 キャラが作品の魅力になるのは、連作が多いですね。探偵は変わらずに、舞台や登場人物が変わるシリーズもの森博嗣さんの代表作『すべてがFになる』S&Mシリーズや、東野圭吾さんの加賀シリーズなどなど。


 ミステリーは読書家にとっても、普段本を読まない人にとっても根強い人気があるジャンルであり、具体的な数字を用意するのは難しいですが、本屋に足を運び本棚を眺めてみるとミステリーまみれです。ミステリー専用コーナーを設けている本屋も多いでしょう。人気の裏には色々な要素が見え隠れしていると思いますが、一番は「面白さ」が見えやすいところにあると考えます。起承転結に加えた、トリックという分かりやすい面白さ。

 ミステリーとジャンルに表記していなくとも、色々なジャンルでトリックを一つ混ぜるという作品も増えてきています。逆に、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は、ミステリー文庫発ですが、ヒロイン二人の関わり合いを主に描き、ミステリ要素は作品を彩る一つの要素に留まっていたりします。

 その上で、とてもとても売りづらいミステリー作品。

 いわゆる、叙述トリックを用いたどんでん返しがある作品が読みたいが、どんでん返しがあると先に知ってしまうと読む気が削がれる。

 というパラドックスを感じた人も多いでしょう。

 帯に「大どんでん返し」と書かれ、辟易する。そんな経験。

 売り難さを逆手に取る手法もよく見られます。

 例えば、乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』では、大どんでん返しがあることを先に予告し、「最後の2行を絶対に先に読まないで下さい」という、とても興味のそそられる売り文句が使われます。

 元祖どんでん返しと言っても過言ではない、殊能将之さんの『ハサミ男』では、口コミが広がり過ぎたこともあり帯に堂々と「どんでん返し」と書かれます(それでも構成が良いので騙されましたが)。

 浦賀和宏さんの『彼女は存在しない』という作品では、攻めたタイトルを付けることで、「存在しないのは誰か」という問い掛けを読者の頭の中に植え付け、常に疑った視線を持たせるという手法を取ります。


 一番攻めたタイトルは似鳥鶏さんの『叙述トリック短編集』というタイトルそのままの一作。ここまで来ると逆に怖いものなしで読み進められます。

 逆にタイトルを全て隠すした、早坂吝さんの『○○○○○○○○殺人事件』や犯人を最後まで明かさない嘘みたいな、東野圭吾さんの『どちらかが彼女を殺した』など、作品を売り込むための作家さんの色々な工夫が見られる、というのはミステリーならではの魅了ではないでしょうか。

 他には、最初から犯人が捕まった状態で、犯行までの経緯、彼女の人生が描かれる『イノセントデイズ』(早見和真)や、登場人物の心理描写をグロテスクなほどに徹底的に描いた『告白』湊かなえ)などなど。

「衝撃! 親が犯人だったミステリーコーナー!!!!」

 というコーナーの目撃情報もあったという(眉唾情報)、ミステリー作品。紹介もしにくければ、売り出しにくいがゆえに、様々な工夫が凝られています。形式に目を向けると見えてくるものがあるかもしれません。

 「偶然、前情報無しに良いミステリーと出会う」ことが大切になる、というパラドックス的なジャンル。

 という訳で、以下に良質なミステリー作品を並べてみたいと思います。何も知らずに買ってみるというのもありかもしれません。本との出会いは一期一会ですので、遊び感覚でぜひ挑戦してみてください。


 考えれば考えるほど興味深く、不思議な気分に陥るものですね。

 今日はこの辺りでお終いにしたいと思います。

 最後までお付き合いありがとうございました。

 またお会いしましょう。

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