どこか少し壁を感じる、と君に言われてしまった。

「壁ではない区別だよ」

女のコは曖昧なものに傷ついてしまうように設定されているらしい。さみしい、と、君の首元の温かさを感じてみても身体ばかり温まるくせに、ぽっかり空いた私の、胸の辺りの空洞は埋まりやしない。そしたらもっともっと、得体の知れない色々なものを吸い込もうとしてしまうのを知っている。だから私は、透明だけど分厚い壁を挟む事で、関係を区別するのだ。

「じゃあさ、壁を外せる人はいるの?」

そうやって、曖昧が私たちの中にまたひとつ。

「壁を外してみたい人はいるよ」

曖昧がふたつ。

「それは身近な人?」

曖昧がみっつ。

いっそのこと、壁を破りに来てくれたら私の空洞は埋まるのか。その空洞はいずれ埋まるものなのかすら分からないけど、きっとどちらかが床に引かれた白いチョークを超えなければならないという、漠然とした淡い期待と、理想の中の勘違いを右往左往している。

「身近な人だと思う?」

私達はどちらからともなく、そうなるべきだったように、右足を上げた。

「分からないけど、試しに僕に壁を外してみなよ」

右足が同時に着地した。そして白いチョークはあたかも自然に消えていった。

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