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出版社→(略)→Webメディア記者/文春オンライン主催の「あなたが書きたい『平成の名言』と『平成の事件』は?」で最優秀賞。週刊Gallop主催の「週刊Gallopエッセー大賞」で最終候補ノミネートなど。

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アピチャッポン・ウィーラセタクンの個展「Solarium」へ行ってきたとのこと

どの駅からも絶妙に距離があり、出不精の俺にとって“余程のこと”がなければ訪れることがない「SCAI THE BATHHOUSE」でアピチャッポン・ウィーラセタクンの展示が開かれていると知る。 アジアを代表する映画監督の新作映像が見られる。かつ、この機会を逃せばいつ見られるのかもわからない。これは“余程のこと”となる。 というわけで、山手線を降り、日暮里駅の西口から谷中霊園の脇をひたすら歩く 牧野富太郎といえば、高知県の生まれだったはずだけど、墓は東京にあるのな。 徳川

    • プロ野球経験皆無で阪神タイガースの監督になった男の評伝『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』を読む

      『プロ野球経験皆無、田舎で農業をしていた平均寿命間近のワシが「阪神タイガース」の監督に突如抜擢された件』 ラノベのタイトルになってもおかしくない、珍奇な人生を送った男がかつて実在した。 第8代阪神タイガース監督、岸一郎。 ……という名前をいったいどれだけの人が認知しているだろう。 人並みに野球を愉しむ俺も、氏について知らなかったし、 と、地元でもその名を知る人はいない。 プロ野球界で1、2を争う人気球団の監督を務めながら、市井の野球ファンからも、地元住民からの知名

      • リュック・ベッソンの新作映画『DOGMAN』を観る

        ガーディアン「今年中、いや今までにも見たことのないようなおかしい映画だ」 テレグラフ「あまりのひどさに信じられないと吠えた」 バラエティ「この映画がヴェネチアでプレミア上映されたことが不可解」 大作SF『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』の大爆死、性的暴行の告発を受けるスキャンダル……。ネガティブな意味での注目度が高まった状況とはいえ、“恐るべき子供”リュック・ベッソンの新作にはひどく辛辣な評価が寄せられた。 さりとて、それほど変わった映画であれば、むしろ見てみたくなる

        • 国立新美術館「マティス 自由なフォルム」展へ行ってきたとのこと

          日本で客を呼べる海外の画家のなかでも、アンリ・マティスはそうとう上位に名を連ねる人物だろう。業界内での仔細な評価はわからないが、少なくとも俺はそんなふうにマティスのことを位置付けている。 だからこそ、かえって、年初から楽しみだった「マティス 自由なフォルム」展も「どうせ大混雑なんだろ……」となかなか訪問できずにいた。 が、開催から2週間は経ったし、平日の夕方ならば、人入りも少しは落ち着いているか? そんな希望的観測、あと、女の人に誘われたという事情もあり、六本木方面へ足を

        アピチャッポン・ウィーラセタクンの個展「Solarium」へ行ってきたとのこと

        • プロ野球経験皆無で阪神タイガースの監督になった男の評伝『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』を読む

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          ふくべ鍛治のオンライン包丁研ぎサービス「ポチスパ」が素晴らしいとのこと

          包丁の切れ味が悪いストレスは、カーペットの塵を取るコロコロのシートがめくれない不快感によく似ている。 後者の場合は汎用品でなく専用の商品を買えばどうにかなる話だが、包丁の場合なかなかどうして改善させるのが難しい。 シャープナーを使えばいいじゃないかという意見もあろうが、いま使っているのは貧乏な俺が1万円という大枚をはたいて買った大切な包丁である。なるべく刃に負担をかけたくない。シャープナーが弥縫策にすぎないらしいことは俺も知っている。却下。 では「包丁を研げばいいよね」

          ふくべ鍛治のオンライン包丁研ぎサービス「ポチスパ」が素晴らしいとのこと

          アルコール依存に悩む俺が『習慣と脳の科学 どうしても変えられないのはどうしてか』を読む

          アルコール依存症と医者に診断されて10年弱が経つ。が、直接的な健康被害は今のところほとんど出ていないし、ーー否認の病気であることも重なりーー「俺はそこまで酒に依存していない」いう自認のもと、1日の始まりのルーティンとして、毎朝、近所の散歩と純アルコール量30〜50gの飲酒を欠かさず行っている。 こうした生活習慣が褒められたものでないとは理解している。が、なかなかどうして改められない。なぜか。考えてみる……。のだが、まどろむ脳は「まあええやろ」と判断を下し、右手人差し指でタカ

          アルコール依存に悩む俺が『習慣と脳の科学 どうしても変えられないのはどうしてか』を読む

          原作未読・アニメ未鑑賞の状態で映画『ゴールデンカムイ』を観た雑感

          最近の池袋はすっかりオタクの街に様変わりした。俺が『ゴールデンカムイ』を観た「グランドシネマサンシャイン池袋」も朝8時前にもかかわらず、『ハイキュー!!』を観に来たと思しき若い女性で場内は大混雑。各々が推しバッグ(というのか?)を持っていたり、キャラクターのパネルスタンドをぬいぐるみ越しに撮影していたりと、なんともかしましい。いや、夢中になれるものがあるってのは素晴らしいことですね。 さて、映画『ゴールデンカムイ』。 原作未読・アニメ未鑑賞の俺は、この作品を「グルメ映画」

          原作未読・アニメ未鑑賞の状態で映画『ゴールデンカムイ』を観た雑感

          オペラシティアートギャラリー「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」へ行ってきたとのこと

          帰省した折、広島市現代美術館で開催されていた「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」へ行ってきた。 のだが……血中アルコール濃度が高く、まともに作品を観て回れないという失態をかます。そんな展覧会が近所の美術館へ巡回してくることを知る。これは好運。ちゃんと観よう、行こう、となる。 きたこれ。 しかし、この展覧会ーー少なくとも俺からするとーーずいぶんトリッキーなコンセプトで成り立っていて、素面だとしても解釈が難しい。 異なるメディウムを取り扱う作家が、一

          オペラシティアートギャラリー「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」へ行ってきたとのこと

          強制引退の瀬戸際にある競艇選手の悲哀よ…『レーサーの家』を読む

          16歳でデビューする選手から70歳を超えても現役で走り続けるレーサーまで、幅広い年代が鎬を削る競艇界。そんな勝負の世界には「1600人枠」という制度があるという。 レーサーの質を保つ、そして、各レーサーへの斡旋数を確保する目的で制定されたルールで、成績が振るわない選手は以下の条件で「クビ」を宣告されるのだ。 よくいえば新陳代謝を促す、悪くいえば力無き老ぼれを除外するためのルールともいえる。 これがどれだけ困難なものなのか……というと、そこまで厳しい条件とはいえない。例え

          強制引退の瀬戸際にある競艇選手の悲哀よ…『レーサーの家』を読む

          悪趣味がすぎる秀作シチュエーションスリラー映画『犬人間』を観る

          「未体験ゾーンの映画たち 2024年」にラインナップされていたノルウェー製ホラー、ヴィルヤール・ボー監督の『犬人間』。 「奇天烈なスティルがいいじゃねえの」 そんな気楽な気持ちで劇場に行ったのだが……いや、これが観てみると「作品自体も相当いいじゃねえの」となった。わけで、こうして書く。 物語は、荒唐無稽な前提のもと繰り広げられるシチュエーションスリラーである。 ノルウェーの夏らしい極端に長い日照時間からなる、朝とも夜ともわからない独特な風景の中で進む物語は、終盤近くま

          悪趣味がすぎる秀作シチュエーションスリラー映画『犬人間』を観る

          映画『哀れなるものたち』がフェミニズム作品として昇華されていくことへの違和感をメモしておく

          ベネチア国際映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ作品賞を受賞するなど、すこぶる前評判の高かった『哀れなるものたち』。 かねて日本での上映を楽しみにしていた俺は公開初日の朝8時30分、汚れきったトー横を通り過ぎ、何人もの水商売らしい男女とすれ違いながら、TOHOシネマズ新宿へ向かう。 きたこれ。やっと観られた。 『哀れなるものたち』が抱える軽薄さ 観賞前に抱いていた俺の期待は泡沫の、いや、胃酸発生装置を使った際に口から吐き出される残滓物の如くパッと消えた。 なぜか。

          映画『哀れなるものたち』がフェミニズム作品として昇華されていくことへの違和感をメモしておく

          千葉県立美術館「テオ・ヤンセン展」へ行ってきたとのこと

          埴輪や仏像、ロボットもそうか。無機物に生命・魂が宿ったような状態に、何か特別な感情を抱くのは人間の根源的な心性に思う。 テオ・ヤンセンの作品、いや、生み出した生物もそうした一連に連なると言えよう。 風を喰みながら自らの体を駆動させる姿は愛らしい事この上ない。美しく、そして、どこか愛おしい、そして、かっこいい、だろう? しかし、千葉県立美術館で開催された「テオ・ヤンセン展」には心底ガッカリした。 「ストランド・ビースト」が屋外で動く姿が見られるイベントが開催されると知っ

          千葉県立美術館「テオ・ヤンセン展」へ行ってきたとのこと

          美術館で“ヤバいおじさん”に遭遇したときのこと

          美術館・ヤバい・おじさん、こうしたキーワードから連想されるのは、“やんちゃなシルバー”向け雑誌『GG』の編集長が、「オジサン向けのナンパ術」を指南し(当然のごとく炎上し)た一件ではないだろうか。 男性特権を有する自身の行為の加害性についての無頓着さが詰まったナンパ術といえる。この一件に比べると、俺がこの度遭遇した“ヤバいおじさん(以下、ヤバおじ)”はいくらかまとも……かもしれない。が、構造としては「アートジジ」と同様の悪質性があった。 俺はそんなヤバおじに声をかけてみた。

          美術館で“ヤバいおじさん”に遭遇したときのこと

          国立西洋美術館「キュビスム展 美の革命」へ行ってきたとのこと

          ずいぶん前からやっていて、ずいぶん前から行こうと思っていたが、結局は会期ぎりぎりになってしまった。 終了直前、最後の日曜日。これはえらく混んでいるだろうな……と思いつつ、山手線で上野駅まで向かう。公園口を出てすぐ。国立西洋美術館。 きたこれ。 思いのほかチケット販売窓口の行列は短い。 が、館内はといえば「まあ、そりゃ混みますわな」という具合でなかなかの人混みであった。みんな事前にチケットを仕入れているから、チケット窓口に行列ができてないだけなんだろうな、うん。 会場

          国立西洋美術館「キュビスム展 美の革命」へ行ってきたとのこと

          日本で一番美味い魚はどこで食べられるか

          日本で一番美味い魚はどこで食べられるか。能登である。そう俺は断言する。 いや、北海道の海の幸の豊かさに比べたら……。五島もこれまた天国ですがな……。瀬戸内の光物も見逃せないでしょう……。わかる。わかるが、日本一美味い魚は能登の魚である。 特に青物、なかでもブリを推す。 この、煌めきを見られたい。 そこまで熟成は重ねられてはおらず、歯触りはサクッとしている。にもかかわらず、旨みは濃厚で、脳にズドンとくる脂の味わい。魚嫌いと聞いていたその場にいた3歳の子どもも試しに一口食

          日本で一番美味い魚はどこで食べられるか

          『調査されるという迷惑 フィールドに出る前に読んでおく本』を読む

          地域に滞在し、地元の人々と交流しながら、その地の魅力を外からの視点で再発見して発信する。 そんな建付けのPR広告企画で、1週間ほど某県の過疎地域を取材したことがある。 閉鎖的な人ばかりだったら……何も魅力的なものがなかったら……。事前に抱いていたそうした懸念は杞憂に終わり、1週間の取材は無事に終わった。手前味噌だが、公開された記事の反響も悪くなく(一般的なニュースサイトのタイアップ記事広告最低保証PVの100倍程度のPVくらい)、以降も同じ建付けで取材をしてほしいという依

          『調査されるという迷惑 フィールドに出る前に読んでおく本』を読む