見出し画像

お前がピッチに立ってみろ。

いろいろあって、今もいろいろあるが、オリンピック真っ盛りである。

我が家の父ちゃんは50代後半いわゆる『ザ』がつくオジサン世代であり、ゴルフや競馬が好きな本当に絵にかいたようなオジサンだ。
そしてオジサンというのは、何故かスポーツ観戦が好きで、しかもやたらとヤジを飛ばす。

スポーツ観戦のヤジといえば甲子園である。
そこまで言うならマウンドに立ってみろ。きっと実際にプロの試合で突然マウンドに立ったらその瞬間にビビッてオシッコをちびってるに違いない。テレビを見て球場でヤジを飛ばすオジサンのことを昔からそう思っていた。

まさか結婚相手がそうだとは。

そしてオリンピックになるとこれが朝から晩までになる。
体操や陸上のような瞬間的に決着がつく競技はまだ良いが、酷いのはやっぱり野球やサッカーのような見慣れていて試合時間の長い競技。
応援したいのもやまやまだが、近くで朝から晩までヤジというネガティブワードを絶え間なく聞こえてると正直うんざりしてくる。本当に申し訳ないが、そろそろ終わってくれないかな、と早くも開催2日目あたりから遠い目になっている。

はっきり、いう。マジ勘弁してほしい。

そんなに怒るくらいなら、見ないほうがストレスにならないのに。
と思うことがある。
でも、よく見るとヤジった後はイライラを引きずってる気配はなくむしろスッキリした顔になっている。
女性がイライラして怒るのと明らかに何かが違う。女性は私もだけれど怒ることは余計にストレスがたまる。

スポーツ観戦のヤジというのは、オジサンにとっては数少ないストレス発散の場らしい。

あとは脳の作りというか考え方の違いもあるようで、
自分の年齢的に10~20代のスポーツ選手というのはほぼ私世代にとっては息子娘世代になるので高校野球はもちろん、オリンピックでもプロ野球ですら
ヤジられるのを聞いていると「自分の子がこんなにボロクソに言われたらたまらないなあ」という気持ちになってくるが、
我が家の父ちゃんにとってはあくまでスポーツ選手というのはテレビの中という全く違う世界の住人であり、感覚では人間ですらないのかもしれない。ゲーム操作が上手くいかなくて怒っている、に近いのかも。
全く余談だが、いわゆる2時間ドラマで誰かがあっけなく殺されてもドラマの終わりには主人公たちはまるで誰も死んでないかのように和やかに笑い合っている。自分の家族が殺された後に万事解決とこんなに楽しそうにしていられたらたまらないと思うが、父ちゃんにその感覚はないらしい。

今回のオリンピックでオリンピックの負の部分というのが今までとは桁違いに色々見えてきたけれど、
オリンピック自体、もしかしたら観戦する側は、【オジサンのオジサンによるオジサンのための4年に1度のストレス発散の大型イベント】なのかもしれない。

会場で観戦、であれば年齢に関係なくきっとチケットも売れるだろう。けれど無観客となった現実を前にスポーツ観戦の世代間格差はいつになく広まったように思う。
一家に一台しかないテレビを取り合って喧嘩していた世代のオジサンはテレビ観戦が好きだけれど、思うように操作ができないテレビよりも今の若い人たちは自分達が欲しい情報をテレビ以外のツールを使ってみている。

オリンピック自体がよくもわるくも【マス】な大会。
テレビで見ているからこそ、興味なかった競技まで流れているから
ふと見ていて興味がわいてきた、ということもある。
女子サッカーが以前よりメジャーになったのも、
今回のオリンピックのようにスケボーが突然表舞台に立つのも
テレビというマスメディアの力があったからだと思う。
マイナー競技はこれからどうすればメジャーになれるだろう。
テレビというマスメディアは50年後、100年後どうなるんだろう。
そのときにオリンピックはどうなっているんだろう。



ごくありふれた日常を少しでも面白く、クスっと笑えるお話を書いていきます。頂いたサポートはご縁のある横浜の子育て支援団体に寄付させていただきます。