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北陸新幹線が延伸したら、まさかの○○駅の検索数が激変した!?

こんにちは、らむです。
ナビタイムジャパンの交通データ事業にて、移動ビッグデータの比較・分析が可能なプロダクト開発を行っています。
2024年3月18日に北陸新幹線延伸に関するデータ分析のプレスリリースを配信しました。

今回はプレスリリースの分析内容をもとに開業日(2024年3月16日)以降に検索動向について説明します。


延伸前に行った分析

2024年3月16日(土)に「北陸新幹線」の金沢駅~敦賀駅間が延伸開業しました。
プレスリリースでは、北陸新幹線延伸によってどのような経路上の変化や影響があったのかについて次の傾向があることが示されてます。

  1. 延伸開業前後で東京駅から福井駅の経路探索結果における経路の出やすさを比較
    →延伸後は北回り(北陸新幹線経由)の検索結果が増加

  2. 調査対象*から公共交通の目的地として検索された駅を集計
    →延伸後は「北陸新幹線」の停車駅である敦賀、福井、芦原温泉の検索数が増加

  3. 調査対象*から公共交通で福井県を目的地として検索した際の出発地として検索された駅を集計
    →延伸後は「北陸新幹線」の停車駅である富山、長野や特急列車の始発駅である大阪、名古屋からの検索数が増加

*開業前1か月間と前年の同期間に未来の移動日として開業後2週間と前年の同期間を指定した経路検索を対象としています。

延伸前の分析では北陸新幹線延伸の影響が色濃く出ました。実際延伸されたあとの検索動向について見ていきます。

延伸後の検索動向

延伸後の検索動向についてプレスリリースと同様の集計を期間を変えて行いました。

  1. 調査対象*から公共交通の目的地として検索された駅を集計

  2. 調査対象*から公共交通で福井県を目的地として検索した際の出発地として検索された駅を集計

*調査対象:4月上旬2週間を2023年(2023年4月3日~2023年4月16日)と2024年(2024年4月1日~2023年4月14日)の2つの期間を比較

公共交通の目的地として検索された駅の集計

公共交通機関を用いたルート検索で目的地として検索された駅を集計したところ以下の結果となりました。

北陸新幹線と桜の名所に人気集中

全体的には2023年と2024年で桜の開花時期がずれた影響により、上位には石清水八幡宮や吉野、幸手などの桜の名所に近い駅が多くランクインしています。
その中でも北陸新幹線の延伸区間の停車駅である敦賀や福井の検索数の増加率は高く、延伸された後も延伸区間の停車駅に対する注目が高いといえそうです。

公共交通で福井県を目的地とした出発地として検索された福井県外の駅の集計

福井県を目的地として検索した際の出発地として検索された駅について検索数の多いものだけをピックアップして増加率を見てみました。

北陸新幹線の停車駅や福井県方面の特急停車駅に人気集中

プレスリリースの集計と同様に北陸新幹線の停車駅や福井県に向けた北陸方面を発着する特急「サンダーバード(大阪・京都~敦賀)」「しらさぎ(名古屋・米原~敦賀)」の停車駅が増加傾向にあることが分かりました。
一方で、もともと検索数が多かった品川駅を出発地とした検索が減少していることが分かります。

検索が減ったあの駅の謎に迫る

ここから、書き手は らむ から YaaS に交代します。
わたしはMaaS事業部に所属し、渉外業務や社内技術部門との各種案件の調整を担当しています。
先ほどお見せした集計の表。どうしても品川駅だけが気になります。福井県外からの検索は増加傾向なのに、なぜ品川駅からの検索が減ったのか---。

設定する発駅が移動した??

延伸前に品川駅を出発地とした人は「延伸後の出発地をどこに変更したのか」について見るために、2023年に品川駅を出発地とした検索した人に対象をしぼって集計しました。

東京駅に変更した検索は約8倍に

延伸後も品川駅を出発地とした検索はわずか2%。品川駅を出発地としていたユーザは、延伸後に東京駅を出発地とすることが多いということが分かりました。

北陸新幹線の延伸開業によって「早く着くルートが変わることを期待していた」のではないか、と仮説を立ててみました。その北陸新幹線の起点は東京駅。つまり、今まで品川駅から新幹線に乗る傾向にある人が、北陸新幹線の経路を期待して東京駅に移したのではないか、ということです。

北陸新幹線経由の経路の出やすさを調べてみた

延伸前の東京駅→福井駅は主に3つのルートがありました。

  1. 南回り:東海道新幹線に乗車し米原駅まで向かい、特急しらさぎ号に乗り換え

  2. 北回り:北陸新幹線に乗車し金沢駅まで向かい、(北陸新幹線延伸前は金沢駅まで運行していた)特急サンダーバード/しらさぎ号に乗り換え

  3. 空路:羽田空港から小松空港行に搭乗し、空港連絡バスで福井駅へ

このうち、『NAVITIME』の経路検索で最も第1経路に出やすいのは1の南回り(東海道新幹線経由)でした。
延伸によって北陸新幹線で東京駅から福井駅まで乗り換えなしで行ける。これは早く着くだろうと想像すると思います。
では、結果を見ていきましょう。

僅差で北回り(北陸新幹線経由)優勢 ©ゼンリン

初電から終電まで任意の一日で表示される経路をすべて地図上に表示しました。太さは「第1経路の出やすさ」です。僅差ですが、北回り(北陸新幹線経由)が優勢でした。出発駅を品川駅から東京駅に切り替えた人は想定通りだったとも言えます。

第1経路に出る回数を延伸前後で比較したところ、

圧倒的な北回りの伸び
  • 延伸前:南回り(東海道新幹線経由)[18回]/北回り(北陸新幹線経由)[3回]/空路[4回]

  • 延伸後:南回り(東海道新幹線経由)[11回]/北回り(北陸新幹線経由)[16回]/空路[3回]

北回り(北陸新幹線経由)は一気に約5倍出現するようになりました。

第1経路の代表例を見てみよう

南回り(東海道新幹線経由)も回数を減らしつつもまだまだ有効なルートの一つになっています。
どんな時に南回りが第1経路に出るのか調べてみました(以下の時刻は2024年5月時点でのダイヤです)。

出発時間が変わると第1経路も変わる ©ゼンリン

10:30ごろに出発時刻を設定すると南回り(東海道新幹線経由)が第1経路になります。3回乗り換えることになりますが、それぞれの列車間の接続が調整されていて、直通に匹敵するような所要時間で福井駅に向かうことが可能です。

北回り(北陸新幹線経由)は、停車駅が少ない「かがやき」が運行するタイミングならば圧倒的に有利です。ただし、日中は長野~敦賀間で停車駅が多い「はくたか」のみの運行となるため、所要時間が長めになる傾向です。

東京駅から次の新幹線停車駅の品川駅と上野駅それぞれから福井駅に向かう場合の経路も調べてみました。

品川→福井は南回り優勢 ©ゼンリン

品川駅は南回り(東海道新幹線経由)がやや有利(もっと言うと羽田空港からの空路も比較的出やすくなる)、

上野→福井は北回りが圧倒 ©ゼンリン

上野駅は北回り(北陸新幹線経由)が圧倒的に有利となりました。

1駅隣の駅だけで第1経路の出やすさが変わるので、南北いずれのルートも優位性があることを実感します。

まとめ

北陸新幹線の延伸は、福井県内までの検索数が増加するだけでなく、出発地側の設定駅が変化することもわかりました。

実際に今年のゴールデンウィーク期間中には、北陸新幹線で上越妙高~糸魚川間を跨いだ乗客数が増加した(前年度比で114%)とJR西日本から発表がありました。福井県が発表した開業後の状況(3月16日~31日)によると、芦原温泉駅、福井駅、敦賀駅の訪問者を前年度と比較し、関東圏からは約168%になったとのこと。いかに北陸新幹線の延伸によって福井県への関心を持った人がいたかの裏付けとなります。

新幹線の延伸によって、敦賀駅は新幹線と関西方面の特急列車の乗換駅となり、乗換の方法などが話題となりました。それでも、以前から関西圏・中京圏と北陸地方を移動する人に極力不便にならないようにダイヤが調整されていて、東京駅や品川駅から従来の東海道新幹線を利用したルートでも北陸新幹線を利用したルートと同等の時間で向かうことも可能です。

言い換えれば、東京から北回り(北陸新幹線経由)の利便性が向上し、南回り(東海道新幹線経由)も含めると、早く着く経路のバリエーションが増えて福井県へのアクセスがしやすくなりました。なので、単純な往復のほかに「行きは北陸新幹線、帰りは東海道新幹線」といった、ちょっとアレンジした移動も楽しめるようになったのではないでしょうか。

何かのご縁でこの記事をご覧になった方は、ぜひ福井県までの経路検索をしてみていただけると嬉しいです。

北陸新幹線のグリーン車より車窓を眺める