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地点を検索して選ぶということは意外と難しいという話

この記事は NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2020 の 13日目の記事です。

こんにちは、taito です。ナビタイムジャパンで地点検索基盤を担当しています。

はじめに

「検索ワードや様々なパラメータから、みなさんが求めている地点を返却し選べるようにすること」が地点検索基盤を担当している私の仕事です。検索対象は、日本全国のスポット、駅、住所、バス停と多岐に渡ります。

広く多くの地点を対象にしていると、普段気にもしないところで検索に対する課題が浮き彫りになります。その知識を共有しますので検索体験 UX 改善に活用いただければ幸いです。

ケース1:似た名称の地点が存在する

日本には似た名称の地点がたくさん存在します。「音が似ている」「漢字の見た目が似ている」などのパターンがあり、引き起こす問題もそれぞれ違います。

音が似ている場合には、タイプミスや変換ミスによって正しく検索できないという問題が、見た目が似ている場合にも文字の入力ミス、検索結果画面から選び間違える、そもそも選ぶことができないなどの問題が発生します。

複数の路線が1地域に集まった、図らずとも似てしまったなどの様々な理由がありますが、そのような場合でもユーザが想像している地点を正しく選択できるようなサービス設計をしていく必要があります。

例としては以下のような地点があります。

溝の口駅、溝口駅、武蔵溝ノ口駅
名古屋、名護屋
白井、臼井
鷺ノ宮(さぎのみや)駅、 鷲宮(わしのみや)駅
(おうめ)駅、 青おうみ)駅、 青あおみ)駅

少し見ただけではわかりにくいですがそれぞれ別の地点であり、選び間違えが発生しやすいという課題があります。またこの課題はユーザが意図していない行動(違う場所に着いてしまった)を誘発してしまう原因となります。

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(鷺(さぎ)で鷲(わし)がヒットしている理由は、入力間違えがとても多いため特殊な対応を入れています)

これらの選び間違えには住所やルビを併記することなどの工夫である程度防止できることが期待できます。

ケース2:同じ名称の地点が存在する

似ているだけではなく、同じ名称の地点が存在する場合もあります。

市役所(駅、バス停)
四日市(全国各地に存在する地名)
浅間神社(あさまじんじゃ、せんげんじんじゃ、全国各地に存在する神社)

市役所もしくは市役所前を含む駅やバス停は大量に存在します。

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(「市役所」と検索した結果)

バスの多くは地域に根づいた交通機関であるため、その地域内で場所が特定できれば問題ありません。つまり、A市 にも B市 にも「市役所」というバス停があっても、利用する際には基本的には特定の市にいる状態のため問題なく区別ができるため、「市役所」というバス停が作られます。

また、バス特有の理由のほかに、地域の名称の成り立ちが似ていることから同じ名称の地名(四日市、丸の内、銀座)が生まれたり、歴史的な事情によって同じ名称の神社仏閣(浅間神社、国分寺)が各地に建立されたりすることがあります。


更に頭を悩ませることに、ユーザの想像している地点とは同名の別地点が存在する場合も多くあります。

椿山荘(ホテル椿山荘東京、同名の集合住宅)
祐天寺(お寺)、祐天寺(駅)、祐天寺(バス停)、祐天寺駅(バス停)
三田(みた、駅、東京)、三田(さんだ、駅、兵庫)

上記の例は以下のような課題や問題を引き起こします。

椿山荘と入力する多くのユーザは、「ホテル椿山荘東京」を期待するが、同名の集合住宅も多数存在するため正しい地点を選ぶことが難しくなる
祐天寺というお寺の周りに駅やバス停が作られたことにより、同じ名称だが別のカテゴリの地点が密集してしまい、選び間違えを引き起こす
三田と入力したユーザが関東在住の場合は東京の三田(みた)を期待することが多いが、関西在住の方は兵庫の三田(さんだ)を期待することが多い

このように、日本全国に存在する大量の地点、地域の成り立ち、そこに住む人達の習慣によって引き起こされる問題はとても複雑です。これらを全て解決する銀の弾丸は存在しませんが一つずつ丁寧に対応することはできます。

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検索対象に有名度という値を紐付けることで検索結果を直感的な順序にする

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検索技術勉強会 から)

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同名の駅とバス停の取り間違えてしまうという問題には、バスのアイコンでは電車と瞬時に区別がつかず、選び間違えを防止できていなかったためバス停のアイコンに変更

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名称に都道府県を付与したり住所を併記したりする

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より良い検索サービスのために

「検索」という視点で世界を見てみると、様々な課題が存在しているということについて書いてきました。この課題に対処するためには検索対象に対してのドメイン知識がとても重要になります。
(弊社は住所も検索対象のため、知見を貯めています。

しかし、どのような課題が今の検索システムで発生しているのかを把握するにはドメイン知識だけでは足りず、UX 改善の基本が必要となります。具体的には、普段からどのようなワードで検索されているのかをモニタリングし評価ができる環境を準備することです。

環境が用意できれば、選択結果のモニタリングで誤選択が多いという問題を検知し、知識や技術を駆使して問題を解決し、変更後に問題が軽減されていることの確認までスムーズに行うことができます。

つまり、より良い検索のためには「検索対象へのドメイン知識」「UX 改善の知識」どちらも欠かすことができない要素だと言えるでしょう。

おわりに

現代では当たり前になってきた「地点を検索して選ぶ」というシステムを日本全国規模で行うと、様々な問題が出てくることを書いてきました。そのようなサービスの要件に向き合う際に上記の知識を活用していただければと思います。