高速バスカバー率100%を達成しました
こんにちは、YaaSです。ナビタイムジャパンのMaaS事業部に所属していて、渉外業務や社内技術部門との各種案件の調整を担当しています。
はじめに
ナビタイムジャパンでは、バス会社カバー率100%(2018年)、コミュニティバスカバー率100%(2021年)、フェリーカバー率100%(2022年)と日本国内の時刻表のある公共交通を余すことなくサービスに組み込んできました。そして2023年8月17日、高速バスカバー率100%を達成しました。
今回は高速バス100%を達成した裏話や、実は経路によく出る高速バス路線などをご紹介したいと思います。
(なお、今回ご紹介する路線や時刻は2023年7月時点のものです)
そもそも高速バスって…?
高速バスという名称は法的な定義はないので、一般的なイメージから下記に該当するものを100%対応していくことになりました。
(1)運行する区間の大半が高速道路を(高速自動車国道のほか、都市高速やアクアラインなどの自動車専用の有料道路、地域高規格道路も含めて)通行する
(2)座席指定制または定員制(立席不可)である
バス会社カバー率100%と何が違うの?
高速バスも路線バスの一部ではあるので、バス会社から直接情報の提供をいただくこともありますが、それ以外はバス会社が「公開しているホームページの情報を参照してほしい」と言われることの方が多いです。(路線バスの時刻表データと運用が異なるという話を伺ったこともあります。1つの高速バス路線を2社以上で運行することが多いので、路線バスとは管理が異なるんだろうなぁ、と個人的に推察しています)
そこで、高速バスの情報を取りまとめている各社や高速バスの予約サイトと連携しながら高速バスの時刻表を収集しています。
新高速バスの話
高速バスを100%カバーするために一番苦労したのが、以前は通称「ツアーバス」と呼ばれ、2013年8月の制度改正によって従来の高速バスと同じルールで運行することになった「新高速バス」になります。
ツアーバスから転換するために必要なことをざっくりと挙げると、以下のようなものがありました。(このほかにも運行上の管理に関するルールなど変更する必要もありました)
バス停が必要:ツアーバスでは旅行商品の一つという形態のため、バス停は必須ではなかった。
人数が少なくても時間通りに運行:最小催行人数に達しない場合は中止することも可能だったし、バスに乗り遅れる人がいた場合はある程度は出発時刻に融通を効かせることもできた。
運賃の届出:以前はツアー料金なので、特に監督省庁に届けなくても需要に応じた価格設定が容易であった。なお、制度改正により、従来の高速バスも届け出があれば柔軟に価格変更を認められるようになった。
本屋さんで販売されている、全国のJRを網羅している時刻表を見てみると、巻末付近に私鉄や空路、観光地などの主な路線バスや航路について掲載されているページがあり、その中に高速バスも掲載されています。
しかし、ツアーバスから転換した新高速バスの路線は、現在も掲載されにくい傾向が続いています。
高速バスは新高速バスとあわせて路線数が一気に増えたものの、路線の一覧が公式には存在せず、本当に100%対応しているのか?という問いはずっと抱えてきました。
未導入の路線を探して
ツアーバスから高速バスになるための要件のうち「バス停」に注目しました。以前のツアーバス時代は、東京では都庁近辺など、従来の路線バスの停留所以外の場所を集合地点としていることが多くありました。
新高速バス移行後は、バスタ新宿などのバスターミナルに順次集約されました。つまり、高速バスが発着するバスターミナルごとに運行路線が判明すれば、路線の過不足がわかります。
また、高速バスは主に都市間の移動手段であり、ほとんどが座席の予約が必要な路線です。主な高速バス予約サイトを参照したり、さらに抜け漏れがないかもチェックしました。
チェックで洗い出された路線から、運行会社に許諾をとり、いよいよ2023年8月にすべてがそろった、ということになります。
経路検索結果に出やすい高速バスとは?
どんな区間を検索すると高速バスが出てくるのかを見てみましょう。
2023年7月のとある日に、経路検索の結果で出てきた回数を路線ごとに集計した結果のベスト5は以下の通りでした。
第1位:東名ハイウェイバス(東京-静岡-浜松-名古屋)[JRバス関東/JR東海バス/JRバステック]
第2位:グラン昼特急(東京-京都・大阪)[JRバス関東/西日本JRバス]
第3位:ひのくに号(福岡-熊本)[西鉄バス/産交バス]
第4位:名神ハイウェイバス大阪線(名古屋-大阪)[JR東海バス/西日本JRバス/名阪近鉄バス]
第5位:新宿-御殿場-箱根[小田急ハイウェイバス]
『乗換NAVITIME』では、アプリダウンロード時の経路検索条件を「おすすめルート」で設定しています。到着時刻の早い手段以外にも、運賃や乗換回数などを考慮して様々な経路の選択肢を提供しています。
東京~名古屋は特によく検索される区間でして、概ね東海道新幹線ののぞみ号をご利用になるかと思います。
そんな経路の最後、第3経路や第4経路あたりで高速バスも出てきます。東名ハイウェイバスは早朝から夕方ごろまで概ね1時間あたり1~2本運行しています。名古屋を17時過ぎに出発するまでは東京に当日中に到着しますので、経路としてご案内しています。時間はかかりますが、新幹線利用時の約半額で移動できますから、目的地に当日中に着ければいいから、なるべく旅費を節約したい、というときには便利です。
深夜の時間帯も高速バスが活躍します。新幹線は午前0時~6時の間は運行しないため、例えば東京駅6:00発ののぞみ号に乗っても、名古屋駅は7:34着、新大阪駅は8:22着になります。場合によってはこの時間より前に到着したいとなったときに高速バスがいます。東京駅の新幹線の終電は、名古屋駅までが22:03発、新大阪駅までが21:24発ですから、それぞれこの時刻の後に出発しても、翌朝の新幹線より前に着くことが可能です。
青森→鹿児島をバスのみで検索してみた
『NAVITIME』ではバスのみルート検索も可能です。青森駅から鹿児島中央駅を検索するとどうなるか見てみましょう。
結果は4本のバスを仙台→新宿→福岡で乗り継ぎ、33時間19分で行けるようです。それぞれの便を担当する会社は十鉄バス、JRバス東北、そして新宿から先はおよそ1,500km先の鹿児島中央まで西鉄バス。グループ会社も含めたバスの保有台数や年間の走行距離が日本一ともいわれる西鉄バスですが、運行範囲も広いですね。
さいごに
私は2020年以降、趣味を業務に最大限活用するべく、補佐として高速バスの時刻表の運用業務も一部行っています。
きっかけは当時の社会情勢から高速バスは全便あるいは一部運休を実施している路線があり、最新の運行情報をサービスに反映することでしたが、むしろ全国の高速バスを見直すチャンスとなりました。(私自身も高速バスの知見がさらに深まりました)
バス会社・各市区町村のコミュニティバスやフェリーの網羅率100%によって、日本国内のカバーは十分でして、高速バスでしか行けない場所というのはごくわずかです。それでも高速バスにこだわったのは、利便性があることを経路検索を通じて価値を提供したいからです。
もし遠出する際に経路検索を行っていただいた時には、第3・4経路まで覗いていただけるとありがたいです。あるいは東京~大阪などでは夜の時間帯で検索してみてください。そんなところに高速バスはいます。